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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第88話 グランピングへ


 迎えたグランピング当日。


 今日は雲一つない晴天で、気温は35度を超える猛暑日。

 特急電車の中は冷房が効いていて、都会の景色を次々と追い越していった。


「あ、スカイツリー見えた! 相変わらずでっかいな~!」


「ちょっと上原! あたしの席の方入ってくんな!」


 揉める上原と赤羽さん。

 赤羽さんが窓側に座っていて、上原が窓の方へ身を乗り出しており、赤羽さんにひっぱたかれている。


 相変わらずこの二人は仲がいい。


「ほんとだね。こう見ると、都会の景色も結構きれいかも」


「ずっと住んでるとあんまし思わないもんな」


 二人とは対照的に、その正面に座る秋斗と波留は落ち着いた様子で窓の外を眺めていた。


 そんな騒々しい四人とは通路を挟んで隣のボックス席に座る俺と猫谷さん、山田に真田さん。


「あはははっ、陽太は相変わらず学ばないね」


「いいんじゃない? アレがあの二人にとってのコミュニケーションでしょ」


「あははは……」


 冷静に上原と赤羽さんを見ている山田と真田さん。


 この二人は、やはり大人びている。

 まるで赤羽さんと上原の保護者みたいだ。


「ほー……」


 隣の席の猫谷さんが、窓の外を眺めながら声を漏らす。

 どうやら猫谷さんも、景色に興味津々らしい。


「猫谷さんは遠出とかしないのか?」


「私にとっての遠出は、近所のコンビニだから」


「じゃあ都外は留学だな……」


 とは言いつつ、休日は意外にも外出することを俺は知っている。

 猫谷さんは気分屋なのだ。


 窓の外に目を向けながら、さっき売店で買ったじゃがりんこを食べる猫谷さん。

 

(なんか小動物みたいだな)


 田舎にいた頃、森で見たうさぎを思い出す。


「ん? どうしたの? もしかして、じゃがりんこ欲しい?」


「いや、なんでもない」


「なんでもないのに、私の顔じっと見る?」


「じっと見るだろ。彼女なんだし」


「っ⁉ ……そういうのは、時と場所を考えて」


「?」


 そういうのって、どういうのだろう。

 首を傾げていると、正面からの視線に気が付く。


「「…………」」


 山田と真田さんが俺たちのことをじっと見ていた。

 そんなに見られる理由がわからず、猫谷さんと困惑する。


「えっと……二人も欲しい?」


 じゃがりんこを差し出す。


「……まぁ、欲しいかも。違う意味で」


「あははっ、確かにね」


 猫谷さんからじゃがりんこをもらう二人。

 でも、違う意味でほしいと言っていた。


「「???」」


 頭の上にはてなマークをいっぱい浮かべながら、俺も猫谷さんにじゃがりんこをもらい、四人で食べる。


 よくわからないけど、特急電車の中で食べるお菓子ってこんなに美味しいのか。

 すごいな、じゃがりんこ。










 特急電車を降りた後、バスに乗り換え。


 揺られること二十分。

 到着したのは、都会の景色とはまるで違う、自然溢れたグランピング施設。


「「「「「「「「おぉ……!!!!!!!!」」」」」」」」


 俺たちが泊まるのはドーム型の施設で、外にバーベキューができるスペースがあったり、個室風呂もあったりと豪華な仕様。

 

 ちょうど男子四人、女子四人で分かれており、俺たち高校生にはもったいないくらいだった。


「美琴様、ありがとうございます……!」


「これもすべて美琴様が施設持ち親戚持ちだったおかげ……」


「アーメン……」


「拝められるの引くから」


 感謝度合いが高すぎて引いている真田さん。

 でも、神格化してしまうのも無理はないくらいすごい施設だ。


 あと、俺たちのテンションも上がっていたことだし。


「じゃ、またあとでね~」


 波留たち女子組が、自分たちのドームへと移動していく。


 今いるのは、男子の泊まるドーム。

 高校生なので当然、男女に分かれている。


「んじゃ、早速準備するか!」


「そうだな」










 波の音が心地いいくらいに響いている。


 吹いてくる風は湿っていて、潮の匂いがした。

 照りつける太陽の日差しも夏仕様で、思わず目を細める。


「海だーーーーー!!!」


 はしゃいだ様子で砂浜を駆ける上原。

 

「アイツ元気だな」


「夏に負けてないね」


「夏に負けてほしくないな」


 なんてことを話しながら、パラソルを担いでいる俺と山田と秋斗。

 

 女子チームはもう少し時間がかかるとのことで、先に準備を整えようということになっていた。

 上原がもう海ではしゃいでいる間、三人で協力してパラソルを立て、シートを敷く。


「それにしても……」


「ん?」


 秋斗と山田にじっと見られる。


「な、なぁ幸也」


「そ、そうだね秋斗」


「どうしたんだよ」


 そんなにじっと見られる理由がわからない。

 首を傾げていると、戻ってきた上原が俺の体を見て言った。


「ってか旭、そんなに筋肉あったんだな!」


「それだよそれ。お前、部活とかやってないのになんでそんなムキムキなんだ?」


「部活やってる俺の方が細いって……自信無くすなぁ」


 なんだ、そういうことか。

 確かに、昔から自然と筋肉が付くタイプだったんだよな。


 筋肉質っていうのもあるだろうけど、たぶん……。



「田舎で生活してると、自然にこうなるんだよ」



「「「なるかッ!!!」」」


「……え?」


 ものすごいスピードでツッコまれた。

 

「な、なると思うんだけ……」


「「「なるかッ!!!!!!」」」


 今度は有無を言わさぬ勢い。

 どうやら俺の言ってることは間違ってるらしい。


 いや、絶対そうだと思うんだけどな……。



「あ、海だ~!」

「美琴、日焼け止め持ってきてる?」

「持ってきてるよ」

「ほんとに⁉ じゃあかし……」

「鞄に」

「ぬか喜びさせるなぁっ!!!」

「私の使う?」

「瑞穂……!」



 遠くから弾んだ声が聞こえてくる。

 

 そして、現れたのは……。



「お待たせ~!」



 ――夏は、この瞬間のためだけに暑くなっている。


 有名な学者たちは口を揃えて言った。たぶん。


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