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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第87話 誤魔化せ!!!


 席を移動する。


 その理由はもちろん、人数が増えたからであり。


(なんだこれ……無茶苦茶気まずい)


 秋斗と波留が所在なさそうに視線をあちこちへ飛ばす。

 

 そりゃそうだ。

 八人で仲がいいのに、他六人で集まっていたら居心地なんて悪いに決まってる。


 しかし、もちろん二人をハブろうとしたとか、そういうわけじゃない。

 むしろその逆。

 二人のことを思っての会議が開かれていたのだ。


 でも、そのことを二人に言うわけにはいかない。

 秋斗と波留をくっつけるためにこっそり集まっていたなんて。


「な、なんでみんながここにいるんだ?」


 遂に秋斗が口を開く。


「えっと……」


 上原が秋斗に視線を送られ、あたふたしてから斜め前の真田さんを見る。


「うーん……」


 同様の反応をしてから、視線は隣の山田へ。


「あははは……」


 苦笑いを浮かべ、今度は斜め前の赤羽さん。


「あー……」


 頬をかきながら、苦し紛れに猫谷さんへパス。


「そ、その……」


 上目づかいで俺のことを見る猫谷さん。


「えっとだな……」


 俺に回されたところで、上手く切り抜けられるわけがない。

 

 申し訳ないが、次の人に視線を渡して……。

 って、あれ? 俺がアンカー?


 全員が俺を見ていて、赤羽さんたちは申し訳なさそうな顔をしていた。

 

(……ってことはつまり、俺が何とかしろってことか)


 秋斗と波留を除いた六人で、どうしてファミレスに集まっていたのか。

 もちろん本当のことは言えないので、どうにかして誤魔化さなきゃいけないが……。


「な、何か言いづらいことでもあるの?」


 波留が少し怯えた様子で訊ねてくる。

 

「いや、違うんだ」


 時間をかければかけるほど、二人を不安がらせてしまう。

 そう思った俺は、ほぼ反射的に答えていた。



「ただ、その……た、たまたま全員がファミレスに集まったんだよ。たまたま!」



「「た、たまたま?」」


(((((何やってんだーーー!!!!!)))))


 二人のキョトンとした顔と、驚いたような赤羽さんたち。

 

(田舎者の俺にできるわけがないッ!)


 申し訳ないと思いつつ、自己防衛した。

 むしろ沈黙にならなかっただけマシだと思ってくれ……頼む。


「たまたまファミレスに六人?」


「す、すげぇ偶然だな」


 さすがに疑った様子の二人。

 ここで、一人の男が声を上げる。


「そ、そうなんだよ~!」


(((((う、上原……!!!!!)))))


 全員の視線が上原へと集まり、託される。

 上原の、言葉とは……。



「な、なんつーか……神のお告げ的な? し、シックスセンス? がビビッと来たっていうか、六人がファミレス行かなきゃって思わされたっていうか、雷に打たれたっていうか……!」



(((((急なスピ⁉⁉⁉⁉⁉)))))


 わかっていた。

 上原がこの手の誤魔化しが苦手そうだなということを。


「上原……」


「あははは……」


 頭を抱える赤羽さんと、苦笑いを浮かべる山田。

 

 さすがに何かあると感づいた様子の秋斗と波留に、赤羽さんは机にバン! と手を置いた。


「と、というか、なんで二人一緒にいるの?」


 攻勢に出る一手。


(((((ナイス赤羽……!!!!!)))))


 たぶん、全員が同じことを思ったと思う。

 さすがはこの会議の主催者だ。


「私が買い物行きたいなって思ったから、アキくんに付き合ってもらってたんだ。アキくん、バイト無いって言ってたし」


「そうそう、付き合わされてたんだよ。炎天下の中、散々歩かされて」


「言い方! アキくんもまぁまぁ楽しそうにしてたでしょ?」


「レディースのアパレルショップ回って楽しい男がいるか?」


「アキくん」


「俺は変態か」


 軽快に言葉を投げ合う二人。

 赤羽さんがニヤリと笑う。


「へぇ、わざわざ二人で買い物するなんて、ほんとに仲よくない?」


 ここでもまた攻勢に出る。

 

 これはさすがと言わざるを得ない。

 普段から上原をシバいていることからも、ガツガツイケる人だとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。


「ま、幼馴染だからな」


「ほんとにそれだけ?」


「なんだよそれだけって」


「幼馴染にしても、仲いいなって話だよ」


 山田も加勢する。


「そうか?」


「私もそう思うなぁ。昔から知ってるってだけじゃ出せない雰囲気が、二人にはあると思うけどね」


「俺もそう思う!!!」


 真田さんに上原も加勢し、一気に流れはこっちのものに。

 

 会議ですでに一致団結していたからか、連携も完璧だった。

 みんながみんな、二人をくっつけようという意志を持っている。


「きゅ、急にどうしたの? 瑞穂ちゃんもそう思わない?」


「私も、とっても二人っていいと思う」


「瑞穂ちゃん⁉」


「その、えっと……いいと思う」


 よく頑張った、猫谷さん。


 言葉が足りないことを、誰も責めるなよ。

 これが猫谷さんの頑張りだ。異論反論抗議口答えは一切認めない。


「な、なぁ旭。どうなってんだこいつら」


「俺も同意見だ」


「旭まで⁉」


 驚く秋斗。

 悪いがここは、赤羽さん側につかせてもらう。


 


「やっぱり二人は、お似合いだ」




「「っ⁉⁉⁉」」


 顔がほんのり赤くなる二人。

 

「む、昔からこうだし、幼馴染だと普通だよな?」


「そ、そうだよ! みんな変に考えすぎだよ!」


「そうは思わないけどね~?」


「も、もう蘭子っ!」


 頬を膨らませ、ストローでジュースを飲む波留。

 赤羽さんは二人の様子に満足げで、確かな成果を実感しているようだった。


 その後、六人で集まっていたことは何とか誤魔化しきることに成功した。

 

 帰っているとき、あの変な誤魔化しを猫谷さんにからかわれたことはアレだったが……まぁ、結果よければすべてよしってことにしておこう。



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