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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第81話 勉強中に


 その後、図書室に向かった俺たちだが、テスト前ということもあって人がいっぱいで空いておらず。


 仕方なく場所を変更し、食堂にやってきていた。

 昼休み以外はフリースペースとして解放されており、今もちらほら勉強している生徒がいる。


「んー……」


「なるほどな……」


 正面に座る秋斗と波留が教科書と格闘中。

 もう勉強し始めてかれこれ三十分。まだ集中力は切れそうにない。


「ねぇ、桐生くん」


 隣に座っている猫谷さんが教科書と体を俺の方に寄せてくる。


「この問題わからないんだけど、教えてもらえない?」


「いいよ。これはだな……」


 ノートに式を書いていくと、猫谷さんが興味深そうに「うんうん」と頷く。

 思わずその真剣な横顔に見入ってしまった。


「桐生くん?」


「あ、悪い。つい見惚れてた」


「へ⁉」


 驚き、猫谷さんの頬がほんのり赤く染まる。


「つ、ついにしてはあまりにも大胆過ぎない?」


「嘘をついてもしょうがなくないか?」


「それはそうなんだけど、そうじゃないの!」


「……哲学?」


「違うよ! ほんと、桐生くんには別のお勉強が必要だと思う」


「それ、母さんにもめちゃくちゃ言われるんだよな……やっぱり、田舎者感が抜けてないんだろうな。脳を都会にアップデートしないと」


「田舎者は絶対に関係ないと思う」


「え?」


 俺の全部の問題って、田舎者なのが原因じゃないのか?

 都会にまだ適合できてないから、色んな間違いをしてるんだとばかり思っていたのに。


「もう、桐生くんは……」


 呆れたようにため息をつく。

 でもどこか、本当に呆れてはいない気がした。


 そんな猫谷さんを見て、頬が緩む。


「「…………」」


 そこでようやく、二人からの視線に気が付いた。


「どうした?」


「第一声がどうした? とは、全く予想もしてなかったな」


「私の中の旭くんは、真っ先にどうした? って何もわかってない顔で聞いてきたよ?」


「波留の旭の方がIOSが最新版だな」


「よくわからないけどありがとう」


「え?」


 全部聞き取れたのに、全くわからなかった。

 どうやら猫谷さんも二人からの視線の意味がわかっていないらしく、きょとんと首を傾げている。


 そんな俺たちを見て、秋斗と波留はまたしても意味ありげに視線を送ってきた。


「やっぱり、この二人ってなんだかんだでバカップルだよな」


「無差別攻撃だよね……」


「「?」」


 ほんとわからない。いっちょんわからん。










 それから、俺たちは再び勉強に戻った。


 テスト期間の学校はやけに静かで、カリカリとシャーペンを走らせる音だけが響き渡る。


「なんだこれ……」


 眉間にしわを寄せる秋斗。


「私が教えてあげようかぁ?」


「なんだその獲物が来たって顔は」


「アキくんにマウントを獲れるいい機会だと思って。ほら、私にお願いできる?」


「こういうのは自分で解決するから勉強になるんだよ。だから、マウントはやらん」


「……さっきまで旭くんにすっごい聞いてたくせに」


「それはノーカン」


「ノーカンが多すぎるよ! まったく、アキくんはすぐ調子のいいことばっかり言って……」


「それを言うなら波留だって……」


 言いかけて、俺たちの視線に気が付いてやめる。

 

 俺と猫谷さんは手を止めて、幼馴染らしく息の合った会話を繰り広げる二人をじっと見ていた。

 そして、同時に思った。



「やっぱり仲いいな、二人って」

「やっぱり仲いいね、二人って」



「「っ!!!」」


 ビクッと体を震わし、はじかれるように距離を取る二人。

 さっきまで肩が触れるくらいに近かったのに。


「と、とにかく自分で解くから。波留は自分の勉強に集中しろ」


「う、うん。わかった」


 何故か二人の間にぎこちない雰囲気が流れている。

 むず痒いような、落ち着かないような。


「「?」」


 再び首を傾げる俺と猫谷さん。


(なんで急にぎこちなくなったんだ? まるでお互いに意識してるみたいな……)


 全くわからない。

 でもまぁ、いくら人気者で有名人な二人でも、たまには変な行動をしてしまうということなんだろう。


 なんて自分の中で納得させて、勉強に戻ろうと思ったそのとき。



「あれ? 旭じゃん!」



 声と同時に、複数の足音が俺たちの前で止まる。

 顔を上げると、そこには山田に上原、赤羽さんに真田さんが立っていた。


「どうしてここにいるんだ?」


「教室で勉強してたんだけど、集中切れちゃったから場所変えよって話になったの。でも図書室はいっぱいだし、それで食堂来てみたら見つけたってわけ」


「ほんと偶然。波留たちもここで勉強してたの?」


 真田さんが訊ねる。


「そうそう。同じ図書室からの漂流民として」


「旭に勉強教えてもらってるんだよ。ほら、旭って学年一位だし」


「あはは……」


 そこまで持ち上げられると照れるな、なんて思っていると、


「旭に……勉強を教えてもらってる⁉」


 声を上げる上原。

 他の三人の目も、飢えているみたいに俺を見ていた。


「ね、ねぇ桐生。もしよかったら俺たちも参加していい? 旭会に」


「え? 旭会?」


「お願い桐生! 勉強教えて!!」


「俺たちも旭会に参加させてくれよぉ~!」

 

 えっと……まず旭会って、初耳なんですが……。

 

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