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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第69話 秋斗の本心


 秋斗がぎこちない笑みを浮かべながら言う。


「こ、告白された⁉」


「ばっかお前、声デカいって!」


「あ。わ、悪い」


 驚きのあまり声が出てしまった。


 秋斗がさっきの先輩に告白されていたなんて。

 何かあるとは思ってたけど、完全に予想外だ。


「どういう経緯で告白されたんだ? あの人と話してるところ、学校で見たことないけど」


「体育祭のときに写真撮って、その後DMが来るようになったんだよ。写真を送って……っていう、まぁよくあるやつなんだけど」


「よくある?」


「なんでポカンとしてんだよ……。旭も来ただろ? 体育祭の後」


「……あ、そういえば」


 撮った写真をアプリを通じて送ってもらったことを思い出す。

 あのとき数十件と通知が来て、全部返すのが大変だったんだよな。


 その後はあまりに疲れすぎて、アプリを開くのをやめたけど。

 

「ちょくちょく学校でも話してたけどな。話したというか、話しかけられたの方が近いけど」


「なるほど」


「んで、三日前に告白されたってわけ」


「三日前⁉ それはなかなかタイムリーな……」


 ん? でも告白されたってことは、つまり……。


「秋斗、あの人と付き合ってるのか?」


「いや、付き合ってない」


「……え、え?」


「なんで急に馬鹿になってんだよ。それ、鈍感とか田舎者とか関係ないからな?」


 それを言われると、返す言葉がない。 

 

「断ったんだよ。付き合えないって」


「そ、そうか……」


 そりゃ、告白されたら必ず付き合うってわけじゃないよな。

 完全に頭から告白を断る、というのが抜け落ちていた。


 確かに、秋斗の言う通り馬鹿なのかもしれない。

 認めたくない、というプライドすらないほどに。


「でも、どうして断ったんだ? 秋斗、彼女とかいないだろ?」


「彼女いなくても断ることはあるだろ」


「そりゃそうだけど……あの先輩、前に秋斗が見せてくれた、最近お気に入りの女優にちょっと似てたよな?」


「っ! そ、それは……まぁ、確かにそうだし、ウチじゃ有名な美人の先輩だけど」


 思い返せば、確かにあの先輩は綺麗で整っていた。

 都会だとレベルが高すぎて麻痺してくるが、あんな美人そうそういない。


 容姿がすべてじゃないが、見た目が好みというのは付き合う付き合わないにおいて大きな要素だと思う。


「恋愛とかわかんねーし? 俺にはまだ早いっつーか?」


「それは違うだろ」


「そこはやけに鋭く指摘してくるんだな?」


「確信をもって違うってわかるからな」


 秋斗の顔を見ていれば、なんとなくわかる。

 他にあの先輩と付き合わなかった理由があることは。


「どうして断ったんだ?」


「やけに聞いてくるな。そんなに気になるのか? 俺があの先輩の告白を断った理由」


「自分でも不思議なくらい気になるよ」


 秋斗がはぐらかすということは、あまり言いたくないことなのかもしれない。

 そもそも、断ったこと自体言いづらそうにしていたわけだし。


 ただ、俺はそこに秋斗の、俺が知らない何かがあるような気がした。 

 つまり、告白を断ったのは先輩の問題じゃなくて、秋斗自身の問題だ、と。


 これはただの勘だ。

 でも、こういう勘はやけに当たる。


「言いたくないことは無理に聞かない。――だけど」


 秋斗をまっすぐ見つめる。



「秋斗のこと、もっと知りたいと思うから。仲のいい、友達として」



「っ!」


 俺の言葉に目を見開く秋斗。

 やがてふっと笑い、


「そういうの、男にも言うんだな」


「?」


 首を傾げていると、秋斗が天井を見上げ、深く息を吐く。

 

 そして力を抜いて、やけに物寂しそうに、胸が締め付けられているみたいに呟いた。




「一歩が踏み出せないほどに、頭をちらつくモンがあるんだよ」




 手に持っていた缶に口をつけ、一気に飲み干す。

 ゴミ箱に投げ入れ、カランと音が鳴った。


「そろそろ行くか」


 秋斗はそう言って歩き始めた。


 しっくり来ていない。

 それにもっとわからなくなった。


 けれど、あの言葉は紛れもない秋斗の本心から飛び出したもので。


(頭をつらつくもの、か)


 引っ掛かりを覚えながらも、秋斗の後を追った。










 その後、順調に勝ち進んだ俺たちは決勝に進出し。


 球技大会の大トリとして、体育館一面を使って今、男子バスケの決勝が行われようとしていた。

 観客はもちろんパンパンに詰まっていて、体育祭のときに似たプレッシャーを感じる。


(やっぱり一生慣れる気がしない……)


 胃が痛くなりそうだ。


「旭ー! 絶対勝てよー!」


「秋斗、いいところ見せてよー!」


「久我! かませーーーー!!!」


「桐生くん、頑張れー」


 二階席から山田と上原、赤羽さんに真田さんの声援が聞こえてくる。

 さらにその近くには、


「Aクラ頑張れ~~~~!!!」


「頑張れー!」


 猫谷さんと波留が声を上げる。


 みんな、見に来てくれているんだ。


「いよいよ負けられないな」


「あぁ、そうだな」


 秋斗と決意を新たに、コートに入る。

 

「相変わらず人気者で羨ましいなぁ」


「転校生も、猫谷と付き合って調子いいみたいだしな?w」


「よかったなぁ、幸せそうでw」


 対戦相手の三年生が挑発的な笑みを浮かべながらやってくる。


 さすがの俺でも、悪意を持たれていることはわかる。

 この人たちとは初対面のはずだけど。


「ただまぁ……見てて普通にイタいなとは思うけどよ?w」


 一人の言葉に、周りの二人がケラケラと笑う。


(嫌な感じだな……)



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