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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第66話 みんなの前で無自覚砲


 秋斗が相手からボールを奪い、そのままドリブルで進んでいく。


 一人抜き去り、相手陣形が乱れ。

 空いたスペースに位置取り、秋斗にアイコンタクトを送る。


 まるで俺がどこにいるのかわかっているかのように、秋斗はノールックで俺にパスを送ってきた。

 

 ボールをしっかりと受け取り、相手が寄せてくる前にシュートを放つ。

 そしてボールは綺麗な放物線を描き、リングにおさまった。


「「「「「キャーーーーーーーー!!!」」」」」


 湧き上がる歓声。

 この試合で何度目だろうか。

 


「上手すぎるだろ久我の奴!」

「さすが元全国主将だな……」

「桐生も普通にヤバくね?」

「もう十本連続で決めてるぞ」

「連続っていうか、打ったシュート全部入ってるっていうか……」

「バケモノすぎるだろあの二人」

「桐生くんかっこよすぎ……!」

「バスケもできるなんてすごいよね!」

「バスケ部だったのかな?」

「絶対そうでしょ! 経験者じゃないとありえないって!」



 歓声が鳴り止んでも、体育館のざわめきは止む気配がない。

 

「こんなんチートだろ……」


「勝てるわけねぇって」


「あの二人が別格すぎる……終わった」


 戦意を消失してしまった様子の相手チーム。

 特に攻めてくることもなく、時間を消費し。


 あっという間に第一試合が終わった。

 結果は俺たちのクラスが二十点差以上をつけての勝利。


「やったな、旭」


「あぁ、お疲れ」


 満足げに笑う秋斗。

 コートで一番動いていたのに、息一つ切れていない。


 今はバイト三昧の日々だと言っていたが、体はまだまだ現役なのかもしれない。


「二人ともお疲れ~!」


「お疲れさま」


「大勝利だったね! 二人とも大活躍でさー!」


 波留が興奮気味に言う。


「だろ? 意外にまだ動けるもんだな」


「中学の頃を思い出したなー。アキくん、しょっちゅう家の前でバスケの練習とかしてて、私まで付き合わされたりしてさ」


「なんだよその言い方。結構波留だってノリノリで練習してただろ?」


「なるほど、これが俗に言う“過去の美化”ってやつですか。ふぅん?」


「美化してねーから。ったく、素直じゃない奴だな」


「それはこっちのセリフなんですけどー」


 やっぱり、波留と秋斗は仲がいい。

 ちょっとした会話でさえ、二人が長い時間をかけて作り上げた雰囲気を感じる。


 お互いに肩の力が抜けて、ごく自然体で話している感じもするし。

 なんだか理想的な関係のようにすら思えた。


「桐生くん、お疲れさま」


「ありがとう、猫谷さん」


「ほんとにすごかった。桐生くん、簡単にシュート決めちゃうし、久我くんとものすごく連携出来てたし、なんか、こう……ほんとに、すごかった……!」


 猫谷さんの目がキラキラと輝いている。

 ここまで興奮した猫谷さんは初めて見るかもしれない。


「すごくカッコよかったよ、桐生くん」


「っ!」


 そこまでストレートにカッコよかったなんて言われると、思わず照れてしまう。

 ただ、それ以上に嬉しさが勝っていて。


「あぁ、ありがとう」


「ふふっ、うんっ」


 二人して微笑み合う。

 

「でも、頑張れたのは猫谷さんのおかげだよ」


「私?」


 猫谷さんがきょとんと首を傾げる。



「猫谷さんが見てくれて、応援してくれたから頑張れたんだ。だから猫谷さんのおかげだよ」



「っ!」


 ここまで人の目があって、あまり自信のないバスケというスポーツで。

 頑張ろうと思えて、そのうえ頑張れたのは猫谷さんあってのことだ。


 日々の生活が、猫谷さんがいてくれるだけでこんなにも楽しいのに、頑張りたいときに頑張ることもできる。


 なんて猫谷さんはありがたい存在なんだ。

 

「ありがとう、猫谷さん」


「「「「「ッ!!!!!!」」」」」


 

「な、なぁ聞いたかよ今の」

「発言がイケメン過ぎるだろ……」

「さりげなく言えちゃうところ凄すぎ」

「やっぱり桐生ってとんでもないな」

「猫谷さんを落とした理由が分かった気がする」

「私もキュンってきちゃった」

「負け戦になるから、それくらいに留めとけよ」

「誰が負け戦だ」



 なんだろう。

 またさらに注目度が上がった気がする。


 気のせいか?


「……どういたしまして」


 猫谷さんも俯いて、なんだか恥ずかしそうにしているし。

 

 そんな変なこと言ってないよな? 俺。


「……あのさ」


「なんだよ秋斗」


「目の前でイチャイチャするのやめてくれない?」


「そういうのは二人だけのときにしようね?」


「……え?」


 イチャイチャって、今お礼言っただけだぞ?


 ……え?

 ど、どういうことだ?










 昇降口に張り出された球技大会の対戦表を確認する。


「波留たちの試合は10分後か」


「今のうちに場所取っておくか」


「そうだな。取り合いになるだろうし」


「取り合い?」


「そりゃ、猫谷さんが出るからに決まってるだろ? お前の彼女、うちの高校じゃアイドル的人気なんだし」


「な、なるほど」


「なんだよなるほどって」


 失念していたが、確かに猫谷さん目当てで見に来る人は多そうだ。

 それに……。


「それに、波留もいるしな」


「ま、そうだな」


 あの二人は目立ちすぎるほどに容姿が整っているし、秋斗の言う通り想像以上に場所の取り合いになりそうだ。


 そうと決まれば、急いで体育館に向かおう。

 その途中、ちょうど階段を降りてきた二人組と目が合った。


「あ、桐生」


「秋斗じゃん! どこ行くわけさ~!」


「強いて言うなら上原のいないところ、ってか?」


「なるほどな……じゃねぇ! どういうことだよそれは!」


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