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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第65話 大注目の球技大会


 梅雨が明けて、七月に入った。


 気温も一気に上がり、本格的な夏が始まろうとしている。

 そんな中、俺たちはというと。


「暑いな」


「だな……」


 体育館の熱気に少しやられながら、体操着をパタパタと仰ぐ。

 隣のコートではすでに試合が始まっていて、歓声とボールの跳ねる音が反響していた。


 今日は涼川高校で夏、冬の年に二回行われる球技大会の日。

 クラス対抗戦で、俺と秋斗はバスケに出場することになっている。


「五分ハーフとはいえ、相当汗かくぞこれは」


「ま、マジか……」


 体育館はとにかく熱気がこもりやすい。

 外だと風通しがいいからいくらか楽だが、ある程度密閉された空間だと蒸し暑いし、それに……。



「キャー! 頑張れ桐生くんー!」

「久我くんこっち向いてー!」

「桐生くんと久我くんが一度に見れるなんて最高だよね!」

「二人とも超カッコいいんですけど!」

「イケメン過ぎるでしょ……」

「ファン多すぎ!」

「キャーーーー! 頑張ってーーー!!!」



 体育館に響き渡る黄色い声援。

 

 そう。何故か俺たちがこれから試合をするコートの周りに、ありえない人数の女子がいるのだ。


 何なら二階の観覧スペースにもギューギューに人が詰まっており、さらに熱気が増している。


「な、なんだこれは……」


 この注目度に思わず足が震えてくる。

 

 体育祭のときにも感じたが、あのときより場所が狭いのでより近くに感じてしまう。

 人が多い。とにかく多い。


 というか、ほとんど全員俺たちが試合するコート見てないか?

 名前もちょくちょく呼ばれてるし。


 これ、ただの球技大会の一回戦なんだけど?


「すげぇ人だな。全国大会と同じくらいの観客数かもしれない」


「ぜ、全国……」


 ただのイチ高校の一回戦です……。


「久我くん、手振って~!」


「ん? あぁ、ありがとな」


 女子の集団に向かってさりげなく手を振る秋斗。


「「「「「キャーーーーーー!!!!」」」」」


 湧くギャラリー。

 まるで人気アイドルを見ているかのようだ。


 これが都会の有名人。

 これが都会の高校。


 恐るべし……。


「桐生くんー! こっちも手振って~!!!」


「え?」


「ほら旭。手振ってやれよ」


「いやいや、俺はアイドルじゃないし」


「いいから、な?」


「…………」


 そこまで言われたら、なんだか無視するのも申し訳なく思えてくる。


「あ、ありがとう」


 ぎこちなくも手を振る。


「「「「「「キャーーーーーーーー!!!!!」」」」」」


 一気に体育館のボルテージが上がるのを感じる。

 こっちが気圧されるほどの熱量。


「おぉ、さすが旭」


「……なんだこれ」


 ほんと、どういう状況なんだこれは。

 田舎者にはついていけなさすぎる。


「アニキーーー! 頑張ってくださいよぉおおおお!!!」


 聞きなじみのある声が聞こえてくる。

 そこには声を張り上げている坂本と、


「ほら、伊澄も応援しとけって!」


「は、はぁ? 私は別に……」


「ほんとは応援したくてうずうずしてるくせに」


「してないし! バカ坂本! アホ!」


「バカでもアホでもないって!」


 いがみ合う伊澄さんと坂本。

 どうやら二人も見に来てくれているらしい。


 さっきまでかなり体育館の注目度合いに呑まれそうになっていたが、知ってる人を見つけて少し安心する。


「アキくん、頑張ってよー!」


 今度は別の方から、知ってる声が聞こえてくる。

 コート脇の端っこ。


「お~」


「女の子にチヤホヤされてるからって、油断しないでよー!」


「油断するか!」


 息ぴったりのツッコみを入れる秋斗。

 秋斗の返答に、波留は満足そうに微笑むと隣の女の子に声をかける。


 そこには予想通りか、猫谷さんがいて。


「ほら、瑞穂ちゃん。旭くんのこと応援してあげないと!」


「っ! う、うん」


 ほんのり頬を赤く染めた猫谷さんが俺の方を見る。

 目が合い、ビクッと体を震わす猫谷さん。


 波留に促されたからか、妙に恥ずかしそうにしながらも声を張った。



「き、桐生くん。頑張っ、て」



「っ!」


 思わずドキッとする。

 

 そんなこと言われて、テンションが上がらない男なんていない。


「あぁ、もちろんだ」


 快く答えると、一瞬体育館に静寂がやってくる。


 え、なに?

 何かあったのか?

 さっきまであんなにうるさかったのに……。




「「「「「「と、尊い……」」」」」」




「……え?」


 何故か急に周りの目が温かいものに変わった。

 

「あははっ、すげぇ破壊力だな」


「破壊力?」


 なにが破壊力なのかさっぱりわからない。


 けれど、とにかく。

 波留と二人で試合を見に来てくれるなんて、嬉しい限りだ。


 二人が仲よくしているのも、猫谷さんの本音を知ってる俺からすれば自分のことのように嬉しい。


 そしてもちろん、あんな風に可愛く俺のことを応援してくれたことも。


「間もなく一回戦を始めます」


 審判の笛が響く。


 相手選手が続々とコートに入って来て、急に緊張感が増した。

 

「な、なぁ。久我って中学時代バスケで全国行ってんだろ?」


「しかも主将だったって聞いたぞ」


「マジかよ。しかも桐生いるしな」


「さすがにバスケはできないだろ」


「だ、だよな。バスケまで出来たら人間として違いすぎるし」


「さすがに裁判起こそうと思ってる」


「誰にだよ」


「神に」


「アホかお前」


 そうだ、秋斗はバスケで全国を経験している。

 つまり、俺がそこまで気負う必要なんてない。


「頑張ろうぜ、旭」


「あぁ」


 ……でも、やはり力が入ってしまう。


 コート脇で俺のことを見ている猫谷さん。

 猫谷さんは俺の恋人で、好きな人。


(やっぱり、カッコ悪いところは見せたくないよな)


 ただ、俺はバスケをほとんどやった事がない。

 

 なんだか相手チームは全員強そうに見えるし、注目度も相まって腰が引けてくる。

 

(ちゃんとできるだろうか……)


 どうしても心配だが、できる限りのことは頑張ろう。


 よし、ここらへんで久しぶりに、あのスローガンを思い出すとするか。



 身の程をわきまえて、俺は所詮田舎者。

 


 ……いや、やっぱり心配で仕方がない。


 

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