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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第61話 この人は恋人です


「ねぇ聞いてる? 俺たちと遊ぼうよ」


「ってかマジ可愛いね! モデルとかやってんの?」


「超ドタイプなんだけど。やっべぇ、ガチで可愛い……」


「いや……」


 困惑した様子の猫谷さん。

 

 体がカッと熱くなる。

 それと同時に、なんで猫谷さんを一人にしたんだと、自責の念にも駆られた。


「あの、一緒に来てる人いるので」


「マジ⁉ だったらその子も一緒に遊んじゃおうよ!」


「絶対その子も可愛いわ。うん、間違いねぇ!」


 可愛いわけないだろ。

 都会にあたふたしてるただの田舎者だ。


「つか甘いモンでも食べる? 俺、いいカフェ知っててさー!」


「……!」


 猫谷さんと目が合う。

 そのときにはもう、男たちの背後に俺はいて。


「ん? あ、もしかして来た? どうもー! 君も行かね? パフェが美味い近くのカフェに……え」


 男たちが振り返り、俺を見て固まる。


 きっと、今の俺は相当な顔をしていると思う。

 しかし、冷静さは忘れてはいけない。


「行かないですけど」


「「「「ッ⁉」」」」


 猫谷さんの手を引き、男たちの包囲から連れ出す。

 男たちはガクガクと震えながら俺を見ていた。


「な、なんだこのイケメン……」


「オーラが半端じゃねぇんだけど」


「連れって、男だったのかよ……」


「ぜ、絶対敵わねぇ……レベルが違いすぎる……」


 なんでこの人たち、俺を神でも見るみたいに見上げてるんだろうか。

 確かに、俺の方がずっと身長は高いけど。


 とにかく、これで去ってくれるだろう。

 そう思ったのだが。


「お、おいお前。そそその子と、どどどどどういう関係だよ!」


「「「マサヤ⁉」」」


 四人のうちの一人が、足をガクブルさせながら睨んでくる。

 他の三人はあたふたしていて、「やめとけって」とマサヤを引っ張っていた。


 ……なんだろう。

 今の構図は俺が四人をいじめてるみたいに見えないか?

 やけに怯えてるし。


 逆に俺が怯えたい。

 都会のいかにもイケてる若者四人と相対しているのだから。

 でも、猫谷さんが隣にいるのでビビるわけにはいかない。


「こ、答えろよ!」


 マサヤ? が念を押してくる。


 聞かれたのなら、答えるしかない。

 それに、言うことがナンパ撃退に最も効くだろうから。


 俺の服の袖をきゅっと掴む猫谷さんをちらりと見て、息を短く吐いた。



「この子は俺の彼女だ」



「「「「ッ!!!!!」」」」


 食らう四人。


「見たらわかんだろバカマサヤ!」


「引くに引けなくてビビりながら聞くのやめろ! ダセェから!」


「どう見たってお前の二百倍はカッコいいんだからよ!」


「う、うっせぇなぁ……うぅ……」


 なんかマサヤが泣いてる。

 泣くようなこと俺、言ったか?


「ほんとすみませんでした。これにて失礼いたしますッ!」


「あ、あぁ」


「「「「すみませんでしたぁあああああああああ!!!」」」」


 あっという間に俺たちの前から消えていく四人。

 

 今のは全部ひっくるめて、何だったんだろうか。

 でもひとまず、猫谷さんをナンパから守れてよかった。


「大丈夫か?」


「……マサヤって人、大丈夫かな」


「まずは猫谷さん自身の心配をしような」


 でも、今の一言で猫谷さんが大丈夫なのは把握できた。


「ありがとね、桐生くん」


「当然のことをしただけだよ。俺は猫谷さんの彼氏なわけだし」


「っ! ……うん、そうだね」


 猫谷さんが言いながら俯く。


「猫谷さん?」


 やっぱり大丈夫じゃなかったんだろうか。

 見知らぬ男四人に囲まれたらそりゃ怖いし、やっぱり猫谷さんを一人にした俺の責任じゃ……。





 ――ぽすっ。





「え?」


 猫谷さんが突然、俺の腕に抱き着いてくる。

 密着し、生々しいほどに柔らかな体の感触が腕に伝わってきた。


「猫谷さん⁉」


「ふふっ」


 やけに上機嫌で、嬉しそうな猫谷さん。

 大丈夫どころか、おつりがくるほどにテンションが高い。


 でも、その理由がわからない。

 だってさっきまで怖い目に遭ってたんだぞ?


「行こっ、桐生くん」


「あ、あぁ」


 ……いや、理由なんてどうだっていい。

 俺のすぐとなりで、猫谷さんが幸せそうにしているのなら。


(守りたい、この女の子を……!)


 そう心の中で強く思ったのだが……。










 ――三十分後。


「ねぇ、君! 今ひま?」


「あたしたちとあそぼーよ!」


「いや、一緒に来てる人がいて……」


「だったらその人も一緒に遊んだらよくない⁉」


「ってか、この人の友達なら絶対イケメンでしょ!」


「やば! 超テンション上がってきたんだけど!」


「えっと……」


 まさかまさかのデジャヴ。


 疲れたので猫谷さんが服を見ている間、少しベンチで休憩していたら、いかにもキャピキャピした女子四人組に声をかけられてしまった。


 あれよあれよという間に囲まれてしまう。

 

(なんで今度は俺なんだ……)


 普通こういうのって、ナンパはあれど逆ナンはないだろ。


「ねぇ、いいっしょ?」


「ウチらいい感じのカフェ知ってるしさ~」


 誘い文句もほぼ一緒。

 なにこれ。都会はどこかのサイトに男女共用のナンパテンプレートでも載ってるのか?


 困惑していると、「あの」と声が聞こえてくる。


「あ、来た? もしかして君が、この人の友達のイケメ……え」


 女子四人が振り返る。

 そこには冷たい目をした猫谷さんが立っていた。


 ふと昔を思い出す。

 猫谷さんに避けられていた、あの日々を。



「すみません、私の彼氏なので」



 猫谷さんがそう言って、俺の手を引く。

 そのまま俺の腕に抱き着くと、頬をぷくっと膨らませた。


 まるで女子四人に対し、これは自分の物だと主張するみたいに。


「か、可愛すぎる……」


「オーラが違いすぎるんですけど」


「美男美女カップルじゃん……」


「美少女ってまさにこの子のことだわ……」


 聖なる光を浴びるかのように猫谷さんを見た四人は、あっという間に消えていった。

 

「大丈夫だった?」


「あぁ、大丈夫だ。ありがとな」


「うん、どういたしまして」


 俺を見上げながら微笑む猫谷さん。


 さっきは守ると誓っておきながら、俺が守られてしまった。 

 でも、そんな情けない俺を今は許せる。


 だって猫谷さんが可愛いから。

 それ以外の感情は邪魔だとすら思う。

 

「いい服は見つかった?」


「うん、実は桐生くんに見てほしくて……」


 二人で猫谷さんがさっきまでいた店に向かう。


 するとちょうど店の前を通りかかった女子と目が合い、「「あ」」と声が重なる。


「伊澄さん」


「……桐生先輩?」


 目を細める伊澄さんの視線が、俺の腕に抱き着く猫谷さんに移る。


「っ!」


 伊澄さんは猫谷さんを見て、驚いたように目を見開いた。


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― 新着の感想 ―
やばい、ちゃんとしないと後ろから刺される。
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