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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第60話 東京の中心で大注目


 十分ほど電車に揺られ。


 降り立ったのは、テレビでも紹介されるほどに有名な東京の中心地。

 若者の文化拡散の地としても有名で、トレンドを作っている大きな街だ。


「す、すごい人だな……」


 休日ということもあり、見渡す限り人、人、人。

 猫谷さんと二人、大きな流れに従って歩く。


「それにビルも全部高い。広告もそこら中にあるし……一体何色あるんだ? カラフル過ぎる。この世の色が全部あると言っても過言じゃないかもしれないな……」


 田舎にいたときは基本、入ってくる色が青、緑、茶色の三色くらいだったのに。

 さすが、日本の文化の中心なだけある。


「うおぉ、すごいな……」


「ふふっ」


「? 面白い人でもいたのか?」


「それで言うなら、私の隣にいるよ?」


「え、隣?」


 猫谷さんの隣には、俺と通行人しかいない。

 

「面白い、のか?」


「うん、とってもね」


 猫谷さんの面白いを理解できなかったのは残念だが、猫谷さんが楽しそうにしているならオールオッケーだ。

 

「ね、桐生くん」


「どうした?」


 訊ねるより先に、猫谷さんが俺の手を握ってくる。

 もちろん恋人繋ぎで、さらに距離が縮まった。


「手、繋いでもいい?」


「もう繋いでる気がするんだけど」


「ダメだったら離す」


「渋々?」


「うん、渋々」


「あはは、いいよ」


「ふふっ、ありがとう」


 上機嫌な猫谷さん。

 

 付き合い始めて一か月ほど経ってわかったことだが、どうやら猫谷さんは手を繋ぐことが好きらしい。

 

 もっと詳しく言えば、スキンシップ全般を頻繁に取ってくる。

 もちろん俺は大歓迎で、ウィンウィンなのだが。


「♪」


 頬が緩みっぱなしな猫谷さんと並んで歩く。

 


「な、なぁ見ろよあの二人」

「芸能人?」

「容姿のレベルが違いすぎるだろ」

「あの二人だけ明度違くない?」

「美男美女カップルすぎるだろ」

「やっば、めっちゃ可愛いんだけど!」

「彼氏の方もレベル高すぎ」

「いいなぁー」



 周囲に人がいすぎて、俺と猫谷さんは変な注目を集めていた。

 

 でも、それも納得ができる。

 だって普通に歩いてるだけでも美人すぎて注目される猫谷さんが、今はなんだか幸せそうにしているのだから。


 美少女オーラはより一層増していた。


(ほんと、猫谷さんと付き合えるなんて夢みたいだな)


 俺みたいな田舎者でも、都会に来たらこんなにも可愛い彼女ができた。

 やはり都会に夢はあったんだ……!(ラピ〇タ風)


 歩いているだけで楽しくなっていると、道脇に立っていたスーツの女性と目が合う。


「っ! 超特玉ッ!!!」


 な、なんだろう。

 ものすごく既視感があるんだが。


「あのぉ、すみません! ちょっといいですか?」


 やっぱり声をかけてきた。

 このパターンは上京したばかりの時に何度も経験し、最近でも二、三回出くわしている。


「わたくし、こういう者でして……」


 名刺を猫谷さんと俺の二人に渡してくる。

 そこにはよく知らない芸能事務所(そもそも知ってる事務所などない)の名前が書かれていて、これも当然さんざん見てきていた。


 何なら家に何枚もある。


「お二人にぜひ、うちの事務所に所属していただき! モデルや俳優などになってみませんか⁉ というお誘いでして……! お二人ならきっと、間違いなく! 芸能界のスターになれて……!」


「すみません、英語教材に壺、寿命が延びる健康水は間に合ってるので」


「……へ?」


「……え?」


 きょとんとする猫谷さんの手を引き、歩いていく。


「ちょっ……! 待ってください! 詐欺じゃないですよ⁉ ほんとですって!」


 詐欺師はみんなそう言うんだよな。

 田舎者だからって舐めてもらっちゃ困る。


「行こう、猫谷さん」


「う、うん」


「ちょっと! 待ってくださいよぉ! 吉〇亮の生まれ変わり、橋〇環奈の生まれ変わりなんですってぇ!」


 どっちもまだ生きてるって。


 詐欺師の女性から逃れ、ほっと一息つく。

 

「危なかったな。今回の人は割と潔かったからよかったけど」


「……ねぇ、桐生くん」


「? なんだ?」


「……いや、やっぱりなんでもない」


「え?」


 明らかになんでもない間じゃなかった。

 

「猫谷さん?」


 しかし、猫谷さんはどうやらなんでもないことにしたいらしく。


「ふふっ。桐生くんってやっぱり変なの」


「???」


 何故かクスクス笑っている猫谷さん。


 ちょっと待て。

 絶対なんでもなくないだろ。










 その後、目的の映画館に到着し。


 チケットやポップコーンを買い、座席に座る。

 見る映画はドキドキハラハラのラブコメディで、上映中、猫谷さんはずっと俺の手を握っていた。

 

 しかも、びっくりするシーンでは、


「っ!!!」


 肩を震わし、俺の手を強く握り。

 感動するシーンでも、猫谷さんは俺の手をにぎにぎしてきた。


(なんだこれ、映画よりも猫谷さんが可愛い)


 映画を見た後は昼食を取り、それからはアパレルショップの入った商業施設で夏服を買うことに。


 施設に入ると、そこにはキラキラとした若者たちで溢れていた。


「都会ってすごいな」


「ふふっ、そうだね」


 主に猫谷さん主導でぷらぷらと店を回り。

 三十分が経っても何故か緊張していた俺は、


「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」


 トイレに逃げ込み、一呼吸。


(都会って、いるだけでエネルギー奪われていくな……)


 しかし、猫谷さんにカッコ悪いところは見せられないので、少し息を整えてからトイレを出た。


 柱に寄りかかり、俺のことを待ってくれている猫谷さん。

 明らかに異質なオーラを放っていて、目を細めてもそこにいるのがとんでもない美人だとわかる。


(猫谷さんも、相変わらずすごいな)


 なんて思いながらも、声をかけようとした――そのとき。



「ねぇ君、俺たちと一緒に遊ぼうよ」



 いかにもチャラチャラした男四人に囲まれる猫谷さん。


 ――ナンパだ。


(なんかこれも、既視感あるな……)


 

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