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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第55話 二人で登校する


 翌朝。


 目が覚め、今日も和洋ごっちゃ混ぜすぎる朝ご飯を食べ、準備を済ませる。


「いってきます」


「いってらー」


 いつも通りの時間に家を出て、エレベーターで一階に降り。

 エントランスを潜り、少し強い日差しに目を細める。


「あ」


 エントランス脇から聞こえてきた声。

 あまりにもデジャヴ……というか、つい昨日も同じようなことがあった。


「猫谷さん?」


「おはよう、桐生くん」


 猫谷さんがすぐに俺の隣に並んでくる。


 こんなの、何度あったっていい。

 むしろ毎日がいいまである。


「どうして今日もここに?」


「……わかるでしょ?」


 上目づかいで訊ねてくる猫谷さん。


 これは絶対に間違えられないな……ゴクリ。

 朝、それも昨日あっての今日なので、確実に正解しなければいけないだろう。


 今日も猫谷さんがエントランスで俺を待ってくれていた理由。

 考えろ、考えろ……。


「田舎者の俺が道に迷わないか心配だったから?」


「違うよ!」


「なっ……」


 ち、違うのか?


「ほんと、桐生くんって……ふふっ」


 怒らせたと思ったら、今度は笑い始めた。

 

 やがて首を傾げ、微笑みながら言った。



「桐生くんと一緒に登校、したかったの」



「っ!」


 なんだ、そういうことだったのか。

 昨日と同じで、俺のことを待ってくれてたのか。


 こんなに嬉しいことってあるのか?

 それも若干憂鬱な朝からなんて。


「ありがとう、猫谷さん。待っててくれて」


「ううん。そろそろいこっか」


 猫谷さんの言葉を合図に、二人並んで歩き始める。

 不思議と足取りは軽い。


「猫谷さん、もしよかったらこれから一緒に登校しない? もちろん、無理のない範囲でいいんだけど」


「っ! い、いいの?」


「どこにダメな理由があるんだ」


「ふふっ。そっか」


 クスクスと笑う猫谷さん。


「朝の楽しみが一つ増えたなぁ」


「俺もだよ」


 二人目を合わせ、笑い合う。


 前まで威圧してきた都会の景色が、今は全面的に味方してくれている気がする。

 ありがとう、都会の景色。これからもよろしく。










 学校に向かう道中。


 学校が近づくほどに生徒の数は増していき、それに比例して集まる視線の数がどんどん多くなっていった。



「ねぇ、あれ桐生くんと猫谷さんじゃない?」

「二人で登校してる! なんで⁉」

「朝から超カッコいいんだけど!」

「今日も猫谷さん、可愛いなぁ……」

「二人で歩いてるってことは、そういうことなんじゃね?」

「え、マジで⁉」

「二人でいるときのオーラ半端ないんですけど……」



 ざわつく周囲。

 しかし、猫谷さんは全く気にする様子もなく。


「こないだ桐生くんが作ってくれたパンケーキ、私も作ってみたんだけど、全然上手くいかなかった」


「簡単なように見えて、ちょっと難しいところもあるからな」


「桐生くんはできるのに、私はできないなんて……うぅ」


 しょんぼりする猫谷さん。


「今度教えようか?」


「ほんとに⁉」


「いいよ」


「ふふっ、やった」


 猫谷さんが笑みをこぼす。


 そんな猫谷さんに目を奪われ、俺も周囲の目が気にならなかった。

 きっとみんな、猫谷さんが可愛すぎて見てるだけだろうし。


 さすが猫谷さんだ。

 もはや誇らしいまである。



「見ろよあの堂々たる姿!」

「間違いない。あれは絶対に付き合ってる!」

「やべぇって! まじやべぇって!」

「今日、間違いなく号外が出るな」

「忙しいぞ新聞部……」

「涼川高校の一大カップル誕生だな!」

「お似合いすぎんだろ……」

「とんでもないことになったな……」



 生徒たちが立ち止まり、俺たちのことを見る中。

 俺と猫谷さんは特に気にせず、二人歩いていく。


「ふふっ」


「ん? どうした?」


「いーや? なんでもない」


「そうか」


 やけに機嫌のいい猫谷さん。

 いつもよりはしゃいでる気がする。


 そんな子が今は俺の恋人だなんて、本当に信じられない。

 けれど、夢なんかじゃない。


 となりに猫谷さんがいる限り、間違いなく現実なのだ。










 その後も、生徒たちからの視線を半端じゃないほどに集めながら学校に向かい。


 あっという間に教室に到着。


「お!」


「きたきた」


 真っ先に目が合ったのは、秋斗と波留。

 その様子だと、どうやら俺のことを待っていたらしい。


「じゃ」


「うん」


 短く言葉を交わして、猫谷さんと別れる。

 猫谷さんとは席が離れているのだ。


「おはよ、旭」


「旭くんおはよー!」


「おはよう、二人とも」


 鞄をドサッと机の上に置き、早速二人に言おうと口を開く。


「あのさ、実は――」



「やったな」



 秋斗が俺の肩に手を置く。


「え?」


「おめでとう旭くん!」


「……え? なんで知ってるんだ?」


「知ってるも何も、見たらわかるだろ。付き合い始めたんだろ? 猫谷さんと」


「あぁ、二人のおかげだ」


「「っ!」」


 驚いたように目を見開く二人。


「ったく、初めに出てくる言葉が俺たちに対する感謝とか、出来すぎてんぞ?」


「不覚にもドキッとしちゃったよ!」


「残念だったな波留。旭はもう彼女持ちだ」


「そういう意味で言ってないよー!」


「あははは……」


 よくわからないが、とにかく。

 二人から祝福してもらえたことが何より嬉しい。


「二人がカップルになったからには、とんでもないことになるな……これからの涼川高校は」


「まさに今がすごいかもねぇ……」


「?」


 とんでもないことになるって……え?


 な、なにがだ?


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