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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第48話 作戦会議


 吹き出す二人。


 けほっけほっと咳き込み、口元をおしぼりで拭き始める。


「突然すぎるだろ!」


「……どう話し始めればいいのかわからなかったんだよ」


「それにしても急発進すぎるよ、旭くん……」


「わ、悪い」


 やはり俺は物を知らなすぎる。

 おまけに経験もないし、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「で、旭は猫谷さんが好きだって自覚したってことで合ってるよな?」


「あぁ、合ってる。俺は猫谷さんが好きだ」


「っ! さ、さすが旭くん。真っすぐだね……」


 苦笑いする波留。


「でも、そっか。急すぎてびっくりしたけど、やっと自覚したんだな」


「こないだファミレスに来た時は、自分が嫉妬してるのはありえない、これは都会の病だーって言ってたのにね?」


「あれを聞いたときはさすがに頭抱えたよな。まず何から旭に教えていけばいいのか、見当もつかなかったし」


「知らないでしょ? あの後私とアキくんが割と真剣に話し合ってたこと」


「そうだったのか。ごめん、迷惑かけた」


 頭を下げると、二人が小さく笑みをこぼす。


「謝ることじゃねぇよ。むしろこっちからしたらありがとうだな」


「手間が省けた、みたいな?」


「手間って……」


 言い方が若干気になるが、秋斗と波留はどうにか気づかせようと動いてくれていたらしい。


 そもそも、この二人は初めから俺の気持ちがわかってたってことだよな。

 やっぱりさすがだ。

 思い切って相談してよかったと心の底から思う。


「ありがとう」


「え?」


「なんだよ急に」


「いや、言える時に言った方がいいと思って」


「「っ!」」


 面食らったように目を見開く二人。


「……ったく、そういうのもさらっと言うなよな?」


「ほんとね」


 二人の優しい表情を見ていると、こっちまで頬が緩んでくる。

 

「じゃ、好きになった経緯を聞かせてもらおうか」


「うんうん!」


 二人に促され、俺は話し始めた。

 いかにして俺が、猫谷さんのことが好きだと自覚したのかということを。










「――っていうのがあって、今に至る」


「なるほど、なぁ」


「おぉ……」


 背もたれにゆっくり体を預ける秋斗と波留。

 

 好きになった経緯だが、ある程度省いて説明した。

 というのも、もしかしたら猫谷さんが俺の家のソファで寝ていたことを知られるのが嫌かもしれないと思ったから。

 そもそも同じマンションで、そのうえ三つ隣なことも話していないし。


 主に話したのは猫谷さんを見るとドキドキしたり、胸が苦しくなったり触れたいと思ってしまうこと。

 それはすべて恋のせいであり、恋愛映画を見て気が付いた、というのをざっくり二人に話した。


「……うん」


「……なるほど、ね」


 二人して腕を組み、目を瞑る。



「甘い」

「眩しい」



「……え?」


 何が甘くて、何が眩しいんだ?

 メロンソーダか?


「なんつーか、高校生の恋愛とは思えないほどに純粋だな」


「汚れがないよね……旭くん、最高です」


「あ、ありがとう?」


 なんとなく感謝しておく。


「でもま、だいぶ前から付き合ってないのがおかしいくらいの距離感に旭たちはいたし、やっとかって感じか」


「早く付き合ってー! って感じだったもんね」


「そうなのか?」


「そうだよ! 私たちからの視線、感じなかった?」


「……そういえば、感じたかもしれない」


 思い返せば結構あった気がする。


「で、だ」


 秋斗が机に手をつく。


「旭が猫谷さんを好きだって自覚したのは素晴らしいことだ。でも、恋はここで終わりじゃない」


「そうそう。むしろここからが本番なんだよね」


「な、なるほど」


 二人からの視線に身が引き締まる。

 秋斗と波留はお互いに見合い、少しだけ声のボリュームを下げて話し始めた。


「アキくん、ここからどう話持ってく?」


「旭のことだからな……難しいところだけど、やっぱり正面からいくしかないだろ」


「だよね。でもこないだみたいに都会の病うんぬん言われたら……」


 コソコソと話しているため、あまりうまく聞き取れない。

 ならばこっちから話を切り出そう。

 

 実は今から話そうとしてることが、俺の中ではこの会の本題なのだから。

 水を一口飲み、二人の前に置く。



「で、猫谷さんに告白しようと思ってる」



「「ぶっ!!!!」」


 またしても吹き出す二人。

 しかし、今度は何も飲んでいなかったので被害はゼロ。

 

 だが……また切り出し方間違えたか? 俺。


「だから急すぎるだろ!」


「もっと流れとかないの⁉」


「わ、悪い。ほんとにわからなくて……」


「勉強してこいそれは!」


「ど、どうやって学習すれば……」


「ドラマとか見て!」


「わ、わかった」


 宿題が一つできた。

 今日からドラマを見ることにしよう。世間と都会を学ぶために。


「……でも、まさか旭から言うとは思わなかったよ」


「好きだから何? って感じかと思った」


「好きなら言葉にして伝えるしかないと思って」


「それは間違えないのかよ……いや、もはや間違えてるけど」


「だね……」


 呆れる秋斗と波留。

 こほんと一息つき、俺をまっすぐ見つめる。


「でも、それがいいと思う。もはや告白の成功は約束されたようなものだし」


「旭ならあの猫谷さんと言えど、問題ないだろうな」


「買い被りすぎだよ」


「旭の場合、お世辞が作れないくらいに俺たちの言う通りなんだよな……」


「ここまで買い被りって言葉が似合わない人、初めてかも」


「?」


 よくわからないが、たぶん悪いことは言われてないと思う。


「それで俺、告白とかしたことないから……アドバイスが欲しいんだ。情けない話だけど」


「情けなくなんかねぇよ」


「そうそう。アドバイスちょうだい! って素直に言える人は素敵だと思うよ!」


「そ、そうか」


 なんだか気恥ずかしくなって頬をかく。

 今度は褒めてもらえたんだと確実にわかる。普通に嬉しい。


「告白か……」


「うーん……」


 顎に手を突き、各々の方向を見上げる。

 やがて秋斗が「あ」と声を上げた。


「ちょうどいいイベントがあるじゃん」


「イベント?」


「あー! 校外学習!」


 そういえばこの前ファミレスに来た時、校外学習の話をしてくれていた気がする。

 今日のホームルームでも先生がその話に触れてたっけ。


「ほら、前に言っただろ? 校外学習の全体解散後、気になる異性と二人で抜け出してデートするっていうやつ」


「体育祭の後だし、たくさんカップルができるんだよね!」


「告白するタイミングならそこしかないだろ。まぁ特別感なくてもいいって言うなら、明日の放課後とかでもいいけど」


「なるほど」


 校外学習の後、か。

 猫谷さんと二人で抜け出して、デートをして。

 

 そこで俺から……。


「校外学習が勝負、か」


 自分の中でしっくりと来る。


 この気持ちを伝えるならそのタイミングしかない。

 

「ま、出来る限りフォローしてやるよ」


「頑張ってね、旭くん!」


 改めて正面に座る二人を見る。

 

 話の切り出し方を間違えたりしながらも、真剣に話を聞いてくれた二人。

 ここまでしてもらって、日和るなんて男じゃない。


「あぁ、ありがとう」


 決意が固まる。


 告白しよう。校外学習で――猫谷さんに。



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