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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第30話 宣戦布告


 坂本が俺を悔しそうに睨みつけてくる。


「俺、猫谷先輩に一目惚れだったんです! アレは忘れもしない、新学期初日!」


 なんか回想が始まりそうなんだが。


「衝撃的でしたよ……普段、事務所や現場で本物の女優やアイドル、そのほかにもたくさんの綺麗な人を見てきました。……でも、猫谷先輩は別格だった。一目見て、俺はこの人と付き合うために生まれてきたんだって、天命を悟ったんですッ!」


「て、天命……」


 イケメン一年生の熱量が半端じゃない。

 言葉で語らずとも、猫谷さんがどれだけ好きなのかが伝わってくるようだ。


「俺はすぐに猫谷先輩に告白しました。でもフラれました。呆気なく、友達にすらなれず……」


 肩を落とす坂本。

 

「え、告白されてたのか?」


「……そういえば」


「そういえばって……」


「そういえばァ⁉ グハッ!!!」


 坂本が吐血する。

 今の猫谷さんの一言は、危うく致命傷になりかねないものだった。


 もし俺が坂本の立場だったらと思うと……末恐ろしい。


「で、でも……俺はやっぱり猫谷先輩が諦めきれないんです! だってこれは天命だから。神のお告げだから……!!!」


 坂本の頭上にだけ、わずかに太陽の光が差し込む。

 

 天命とか神のお告げとか、ちょっとスピってないか? この子。


「陶器のように滑らかな肌も、シュッとした切れ長な瞳も、艶やかな髪も! すべてが俺のドストライクなんです!」


「ど、どうも?」


「なんで疑問形なんだ」


「どう反応すればいいのか難しくて」


「……確かに」


「ちょっとそこォ! また俺の前でイチャイチャしましたね⁉ 聞きましたよ! 昨日の夜、二人で深夜に歩いていたこと! そして今日も、廊下で見せつけるようにその仲の良さっぷりを包み隠さず披露していたことを!」


 別に披露してないんだが。


「なるほど、確かに披露したってことになるのか」


「言い得て妙だね!」


 だから、秋斗と波留は何しにここに来たんだ。

 絶対関係ないだろ。


「……確かに、桐生先輩はカッコいいです。俺から見ても正直、街頭アンケートを取ったらカッコよさで勝てるかどうかは怪しい」


「いやいや、君の方がカッコいいよ。シティーボーイ? って感じがしていいと思う」


 それに比べて俺はただの田舎者だし。


「っ! そ、それは素直に嬉しいというか……じゃない! 男としての余裕を猫谷先輩の前で見せつけるのはやめてください! これじゃ俺が器の小さい男みたいじゃないですか!」


「そんなつもりなかったんだけど……」


「なんなんですかこの人! 謙虚すぎません⁉」


 坂本が秋斗と波留を見る。

 二人はうんうんと頷くと、


「謙虚じゃなくてわかってないだけだな」


「そうそう。旭くんは慣れるのにちょっと時間がかかるんだよねー」


「え?」


 慣れるのに時間がかかるって、どういうことだよ。


「とにかく、お二人は付き合ってるんですか⁉ っていうか、どっからどう見たって付き合ってますよね⁉ ねぇ⁉⁉」


「っ!」


 坂本が俺と猫谷さんに食い気味に迫り、猫谷さんがビクリと体を震わせる。

 

「き、桐生くん……」


 猫谷さんが俺の背後で、服の袖をキュッと掴んだ。

 

 猫谷さんは苦手なんだろうな、圧がある人が。


「大丈夫だ、たぶんいい人だから」


 坂本はほんとに猫谷さんが好きなだけなんだと思う。

 

「質問の回答だけど、俺は猫谷さんと付き合ってないよ」


「そんなに仲良さそうにして、付き合ってないとか正気ですか⁉ 信じられないんですけど!」


「ほんとに付き合ってないんだけど……ね?」


「うん、付き合ってない」


「ほらそれぇ!!!」


 猫谷さんが俺の肩からひょこっと顔を出すと、坂本が勢いよく指をさす。

 猫谷さんは慌てて、俺の後ろに顔を引っ込めた。


「確かに、一年生の言う通りだな」


「どっからどう見たって、付き合ってる男女の距離感だよね」


「さっきからちょいちょい小言挟むのやめてくれ」


 多分この二人、今の状況を楽しんでるだけだな。 


「ほんとのこと言ってください! 付き合ってるんですよね⁉ 桐生先輩と猫谷先輩は!」


「だから、本当に付き合ってない」


「じゃあなんで深夜に二人で歩いてたんですか⁉」


「それはラーメン屋からの帰り道が同じだったからだ。しかも、二人じゃなくて秋斗と波留の四人で食べてたんだよ、元々」


 俺が秋斗と波留に視線を向けると、坂本も二人に顔を向けた。

 

「えぇ⁉ そ、そうなんですか?」


「まぁ、そうだな」


「事実だね」


「なっ……じゃあほんとに付き合って……で、でも! 廊下でイチャイチャしてたのは何なんですか!」


「別にイチャイチャしてないよ。普通に話してただけだ」


「うん、普通に話してた」


 どうやったらあの猫谷さんとの会話をイチャイチャしたと捉えられるのだろうか。

 普通に話してただけだろ、どう見たって。


「普通に話してた? あんなに息が合った感じで……それに、似合ってるとか言ってたのに……!」


「「……?」」


「なんで無自覚なんだよッ!」


 マンキンでツッコむ坂本。

 初めのスタイリッシュでシティーボーイなイメージからだいぶ変わってしまった。


 坂本が力強く唇を噛みながらも、ふぅと一息つく。


「……そこまで言うなら、わかりました。付き合ってないってことにします」


 ほんとに付き合ってないんだけど。


「ですが! あんなに誰とも仲よくしようとしていなかった猫谷先輩が桐生先輩だけに心を開いているのは心底解せません!」


「げ、解せない?」


 首を傾げていると、坂本が俺に指をさして言い放った。



「どっちが男として優れているのか、白黒はっきりつけましょう!」



「……え?」


 意味が分からない。


 どっちが男として優れているのか、白黒はっきりつける?

 それ、やる意味あるのか?


「ふぅん、面白そうだね、それ」


「ここは第三者の俺たちが公平な審判をしてやろう」


「二人とも⁉」


「いいですよね、猫谷先輩!」


「……い、いいんじゃない?」


「猫谷さんまで⁉」


 たぶん猫谷さん、よくわかってないのに了承したよな。

 いや、絶対そうだ。


「今更逃げるのはなしですよ、桐生先輩! 必ず勝ってみせます……そして、猫谷先輩の横に並ぶのは俺です!!」


 いやいや、なんで勝手に対抗意識燃やされてるんだ?

 

 全く意味が分からない。なんだよ、これ。




 ――こうして、何故か猫谷さんの隣に相応しい男はどっちか、俳優の卵なイケメン新入生と決めることになった。


 都会ってこれが一般的なのか? ド田舎にはそんな文化なかったぞ……。



ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

お知らせです。


新作短編、


隣の席の美少女が「彼氏はいないよ。今は、ね?」と俺を見て言ってくるんだが


を投稿しました。

サクッと読める三部作になってますので、ぜひ覗いてみてください!


(https://ncode.syosetu.com/n3112kq/)

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