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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第29話 イケてる一年生


 昼休み。


 今日は購買でパンを買った俺と秋斗と波留の三人は、教室で机を合わせ、昼食を取っていた。

 話題はもちろん、俺と猫谷さんの噂である。


「まさかあの後、二人でいるところを見られるなんて……秋斗と波留もいたときだったらこんな噂になることなかったのにな」


「いや、それでも噂にはなってたと思うよ?


「確かに。それくらい学校外での猫谷さんは貴重だからな。それに、旭もいるし」


「あぁ、うん」


 あんパンにかぶりつきながらなんとなくで頷く。

 最後の「旭もいるし」の言葉の意味はよく分からなかったが。


「ってかそんなことより、とんでもないこと聞いちゃったんだけどよ」


「とんでもないこと?」


「今朝お前ら、廊下で公開イチャイチャしたらしいじゃん」


「公開イチャイチャ⁉」


 思わず声が大きくなってしまう。

 危ない。もう少しタイミングが早ければあんパンが爆散してるところだった。


「私も聞いたよ! 昨日はどうとか髪型が似合ってるとか、二人で親密そうに話してたって」


「そういや猫谷さん、今日はいつもと違う髪型だよな」


 秋斗の視線が自分の席で一人、おにぎりを食べている猫谷さんに向けられる。


「もしかして……」


「いやいや、俺は何も関係ないって」


 確かにラーメン屋で猫谷さんの髪型には触れたけど、それで猫谷さんが髪型を変えたとは到底思えない。 

 気分って言ってたしな。


「それと、公開イチャイチャなんてしてないから。普通に話してただけだ」


「…………なるほど」


 な、なるほど?


「旭くんのことだし、絶対無自覚なんだろうね……」


「猫谷さんもそんな気するし、マジで噂通りイチャついてそうだな……」


「え?」


 二人が俺にギリギリ聞こえない声量で話すから、上手く聞き取れない。


「ま、それはそれで逆に面白いからいいか。何の逆かはわかんないけど」


「なんだか私、ワクワクしてきたよ! えへへ」


 なんでこの二人、急にニヤニヤし始めたんだ?

 ますますわからない。


 またしても二人に置いてかれていると、




「――失礼しますッ!!!」




 教室後方のドアから威勢のいい声が響いてくる。

 クラス中の視線が声の方に向いた。



「え、嘘! なんで坂本くんがここにいるの⁉」

「一年生だよね⁉ ってか超イケメン!」

「噂通り顔整いすぎなんですけど!」

「あれが一年の坂本か……確か芸能事務所入ってんだろ?」

「俳優の卵だって聞いたぞ」

「じゃあ芸能人じゃん、もはや」

「そんな奴がうちのクラスに何の用だ?」



 ざわつく教室。


 確かに、周りのクラスメイトたちが言うようにやってきた男子生徒はイケメンだった。

 彫は深くて、髪はセットしているのかツンツンしていて。

 

 ちょっとやんちゃっけがあるというか、とにかく目を引く容姿をしている。


(都会にはこんな高校一年生がいるのか……恐ろしいな)


 都会のレベルの高さはやはり凄まじい。


「何しに来たんだろうな」


「ね~」


 秋斗と波留がサンドイッチを手に取る。

 俺もぼーっとイケメン一年生を見ながら残り少ないあんパンを食べていると、何故か目が合った。


 それも、当のイケメン一年生と。


「っ!」


「……え?」


 たまたまかと思ったけど、そうじゃない。

 ずっと目が合ってる。何なら今も合ってる。


 なんでだ?

 え、俺に用?


「一年の坂本湊さかもとみなとです。――桐生先輩、猫谷先輩!」


「「…………え?」」


 猫谷さんと声が重なる。



「ちょっといいですか?」



 …………え?


 俺この人、ほんとに知らないんだけど。










 人気の少ないグラウンド脇にやってくる。


 木の陰が落ちた場所で、俳優の卵だという一年生の坂本と向かい合っていた。

 俺の隣には猫谷さんがいて、俺と同様困惑した様子だった。


 いや、困惑しているというより怯えているの方が近い。

 だって、そりゃそうだろ。


 見知らぬ有名人っぽい後輩に呼び出されたんだから。


「き、桐生くん何かした?」


「……上京はした、けど」


「絶対それじゃないから」


「そ、そうか。猫谷さんは?」


「……ちょっと寝坊した?」


「絶対それじゃない」


「そ、そっか」


 コソコソと猫谷さんと話していると、坂本が拳をぎゅっと握り、俺たちに対する視線を強めた。


「ッ……!」


「「っ⁉」」


 猫谷さんが咄嗟に俺の背後に体半分だけ隠れる。

 さらに服の袖をキュッと握ってきた。


 どうやら坂本が怖いらしい。 

 ちなみに俺も怖い。


 何かした覚えがないことも、今坂本を苛立たせた理由も、そもそも坂本が都会の権化みたいに眩しいことも怖い。全部怖い。


「えっと……」


「ッ!!!!」


 坂本が顔を歪める。

 

 また一段階、苛立ちのギアが上がった。

 ますますわからない。


 なんで今苛立ったんだ?

 そもそも、 どうして猫谷さんとセットでここに……。


「……付き合ってるんですか」


「……え?」


 思わず聞き返す。

 坂本は俺に視線を定めると、力強く言い放った。



「二人は付き合ってるんですか⁉ どうして……俺はこんなに、猫谷先輩のことが好きなのにぃ!!!!!」



「「…………へ?」」


 腑抜けた声が漏れてしまう。


「なるほどな……ふふっ、面白そうなことになってきた」


「そうだね! やっぱりついてきて正解だったよ」


 ……それと、しれっとこの場にいる秋斗と波留。

 

 なんで二人がここにいるんだよ、ほんとに。



 都会のカオス、深まる……。



 

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