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無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される  作者: 本町かまくら


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第28話 付き合ってません


 廊下を歩く。


 二年生の教室の前なのだが、いつも以上に生徒たちからの視線を感じた。

 何なら教室の窓から身を乗り出して俺を見ている人もいた。


(こうなるのも無理ないか……)


 さっきの女子生徒たちから聞いたのだが、どうやら昨日、猫谷さんとラーメン屋から二人で帰っているところを涼川高校の生徒に見られていたらしい。


 猫谷さんは告白されることはあれど、男子との浮いた話はこれまで一切なかったらしく、急速にこの話が拡散。

 一緒に歩いていたことから俺と猫谷さんが付き合ってる疑惑が浮上し、こうして注目を集めていた。


 もちろん、女子生徒たちには付き合ってないと事実を言った。

 でも、全然信じてない様子だったんだよな……。


 どうしたものかと頭を悩ませていると、正面からちょうど見知った人物が歩いてきた。


「あ、桐生」


「旭だ! おはー!」


「おはよう、桐生くん」


「おはよ」


「おはよう、みんな」


 気さくに話しかけてくれたのは、山田と上原、真田さんに赤羽さんの四人。

 相変わらずの美男美女集団で、いい意味で存在が浮いている。


「ってか旭! 猫谷さんと付き合ってるってマジ⁉」


「あははっ、それは俺も気になってた」


 上原が食い気味に顔を近づけてくる。


「いやいや、付き合ってないよ」


「でも二人で歩いてるとこ見たって人いんでしょ? しかも結構夜遅くに」


「何もないって方が不思議だよ。あの猫谷さんだし」


「えっと……」


 確かに、何もなかったわけじゃない。

 

 俺の言葉に猫谷さんが顔を真っ赤にしたり、俺が猫谷さんの腕を掴んでしまったり、色々……。


「その反応、やっぱり付き合ってるんじゃねーのー? 俺たちには教えてくれてもいいんだぜ?」


「あたしは桐生くんと猫谷さん、けっこーお似合いだと思うけどね」


「この学園一の大型カップルだね。桐生と猫谷さんはさ」


「おめでとう、桐生くん」


「ほんとに付き合ってないんだよ……」


 こんなに祝福してもらったら、否定しづらいけど。

 

「あの日はそもそも、秋斗と波留の三人でラーメン食べに行ってたんだ。そこに偶然猫谷さんが来て、一緒にラーメン食べて帰っただけで、付き合ってるわけじゃない」


 女子生徒に答えたように、四人に説明する。

 

「……ほんとにぃ?」


「ほんとだって」


 俺が言うと、上原は「だはぁー」と脱力した。


「やっぱそうだよなー。なんか、旭のことだしそんな気してたんだけどさ」


「あはははっ、俺は結構納得したけどね? 二人が付き合ってるっていうのはさ」


「そんなわけないだろ? 俺と猫谷さんはただのクラスメイトなんだし」


「ふーん、そっか」


「私もお似合いだと思うよ、二人は」


「あ、ありがとう」


 さっきから四人にはお似合いだって言ってもらえているけど、それもあんまりピンと来ていない。

 

 猫谷さんは誰がどう見たって美人で、それを裏付けるかのように男子から人気を集めてる。

 いや、男女問わずこの学園では注目の的だ。


 そんな子が俺と付き合うなんて……いや、猫谷さんと仲よくしたいとは強く思うけど。



「え! 見て見て!」

「嘘! ここで⁉」

「ヤバい! マジヤバい!」

「え、ヤバい! ヤバーい!」

「ヤバいしか言ってないんだけど!」



 背後から熱気を感じる。

 振り返るとそこには、昨日の夜と同じように髪を一つに束ねた猫谷さんがいた。


「「……あ」」


 猫谷さんと目が合う。

 その瞬間、廊下のテンションが一気に上がった。



「おいおいマジかよ! 朝からとんでもねぇな!」

「しかも今日の猫谷さん、髪型違くね⁉」

「やば! 可愛すぎるだろ!」

「桐生くんと付き合ってるんでしょ⁉」

「彼女のレベル高すぎんだろ……!」

「それを言うなら桐生くんだってすごくない⁉」

「理想の美男美女カップルなんですけど……」



 廊下の全視線が俺と猫谷さんに集まっていると言っても過言じゃない。

 

 しかし、猫谷さんは至っていつも通り歩いてくる。


「おはよう、桐生くん」


「お、おはよう、猫谷さん」


 歩くたびにふわっと揺れる髪。


「今日は髪型違うんだ」


「あ、うん。……そういう気分で」


「そっか」


 猫谷さんがどこかぎこちなく髪を触る。

 一つにまとめた方が楽そうだしな。猫谷さん、結構髪長いし。



「似合ってるな、今日も」



「「「「「「「ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」



 声にならない叫び声が、そこら中から聞こえてくる。

 当の猫谷さんは、少し嬉しそうに頬を緩ませた。


「……ありがとう」


 なんだか猫谷さんと話していると、周囲の声や視線なんてどうでもよくなってくる。

 そもそも猫谷さんが気にしてないからだろうか。


 気にしたってしょうがないし、事実付き合ってないのだからそのうち噂なんて消えていくだろう。


「あ、桐生くん」


 猫谷さんが背伸びをし、俺に近づいて言った。





「昨日はありがとね」





「「「「「「「「ッ⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」」」」」」」」


 猫谷さんは相変わらず律儀な人だな。

 別にお礼することなんてないのに。


「こちらこそ」


「じゃ、先行くから」


「あぁ」


 猫谷さんがスクールバックを肩にかけ直し、ポニーテールを揺らしながら遠ざかっていく。

 

「じゃあ、俺もそろそろ……」


 四人の方に体を向けると、何故か俺を見て固まっていた。

 今気が付いたが、廊下や教室から身を乗り出して俺を見ている生徒たちは皆、石化されたみたいに動かない。


「……え?」


 俺と猫谷さんが話してる間に何があったんだ?

 全く気が付かなかったんだけど……。


「ねぇ、桐生くん」


「あ、赤羽さん?」


「……付き合ってないの、絶対嘘でしょ」


「いや、ほんとだって」


「いやいや」


「いやいやいや」


「いやいやいやいやいや」


「いやいやいやいやいやいやいや……」


 いやいや、ほんとに付き合ってないんだけど?







「…………」


 ――このときの俺は、気が付いていなかった。


 俺に悍ましい視線を向けている男子生徒の存在に……。



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