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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第57話 神の力とは

「何を言っているのです。私もまた神から力を与えられた者。天罰など起こりはしません」


 はっ! 確かに!

 聖王も神から奇蹟の力を与えられています。


「まぁ! これほど無知とは嘆かわしいですわ!」


 ビクッ!

 エリザベートの言葉に思わず身体が揺れてしまいました。

 え? 違うのですか?


 これはヤバいです。私が知らないとバレれば、神父様から山のような課題が出されそうです。


「め……女神レエル様の御慈悲によって、我々聖女は聖女として存在できるのです」


 知っていることを口に出して、わかっているアピールをしておかないといけません。


「その通りです。一つの力しか与えられない男神ゼインとは違うのですわ!」


 あ! 思い出しました!


 主神ゼインとその妻レエルの神話です。


 簡単に言うと浮気性のゼインにブチギレた女神レエルの話です。


 その時に教えられたのが、聖王の力を持つ者と聖女は、別のところで暮らさなければならないということでした。

 女神レエルの怒りは凄まじく、ゼイン神の力を持つ者が、レエルの力を持つ者に触れると、嫌悪感に苛まれると……本当のことでした!


 教えられたときは、『え? そんなことあるはずない』と思っていました。


 しかしガタガタと震えて、変な汗が滲むほどの拒否反応。

 嘘だと思ってしまってごめんなさい。アン様。

 凄く嫌そうな顔をして教えてくださった理由が今わかりました。

 きっと先代の聖王と何かあったのでしょう。


「恩恵を受ける神が違っても、民を慈しむために与えられた神の奇蹟の御業に、違いなどありません。帝国の皇子如きが、私の前に立ちはだかるなど無礼千万。さっさとそこを……」

「確かに詳しいことは知らないが、流石にこの状況で誰が否定されているのかはわかるよな?」


 アークの肩に手を置いて、アーク越しにこちらを視る虹色の瞳。


「あの小鳥を愛でるような目。受け入れられませんわ」

「相変わらず聖王に見られると、寒気が酷いわ」


 敵意はなく、慈愛の眼差しと言っていい視線を向けられているのにも関わらず、全てを否定したいです。

 まだ先程会ったときの緋色の瞳の方が良かったのではないのですか?


「何を言っているのです。さぁ浄華の聖女。こちらに来なさい」

「いや! こっちを見ないで!」


 思わず言ってしまいました。


「うっ! 目がぁぁぁぁぁ!」


 そう言って両目を押さえてよろける聖王。


 え? 私は浄華の力は使っていませんわよ。


「聖王には聖女に固執してはならないと教育されているはずですのに、今回もとは嘆かわしいものね」


 その言葉を言ったアン様を見ます。しかし、ベールに覆われてその表情は窺い知ることができません。


「私のときは白い炎で燃えたから、今回の方がマシよ。女神の怒りは凄まじいということ」


 燃えたのですか!


「他の女に手を出す者に天罰をということですわね。女神とは恐ろしく、自分勝手。まぁそんな神の力を使う、わたくしを神に選ばれし人神と、おおいに称えるべきですわ」


 いつもの高笑いするエリザベートに戻りました。ということは、先程の行動は本当に私を心配して、駆け寄って来てくれたということですか?


「エリザベート。ありがとう」

「ふん! 何を言っているのです。わたくしは、あの者が気に入らないと思っただけですわ!」

「でも、女神ももう少し寛大になれなかったのかな? だって聖王は神の力を使う者でしょ?」

「え?」

「え?」

「え? 違うの?」


 ベールをかぶった聖女二人が、困惑の声をあげました。もしかして、違ったのですか?


「オリヴィア。聖王の話をしたときに説明しましたよね?」

「オリヴィア。まさか、知らないと言いませんわよね?」

「てへ? ……あ! 聖王様! そのまま進まれると!」


 私は話題を変えるべく、よろめいている聖王に向って声をあげます。

 そのまま後ろに下がり続けますと……


「あら? クリスティーヌね」

「え? クリスティーヌ?」


 エリザベートからクリスティーヌと名を与えられたもの。それはしなやかな白い躯体を堂々と見せつけ、額に鋭い角を持つ魔獣。一角獣(ユニコーン)です。


 その一角獣の背後に、両目を押さえよろめきながら近づいていく聖王。

 その後に起こることはもちろん……


「うぎゃー!」

「蹴られたわ」

「それは蹴られるよな」

「わたくしのクリスティーヌに近づく愚か者は蹴られて当然ですわ」

「へぶしっ!」


 はい。聖王様はそれは見事に後ろ蹴りをされ、宙を舞い無様に顔面から着地をしたのでした。


 だから、機嫌の悪いモフモフに近づいたら駄目なのです。


 そして、聖王様は強制退場となり、そんなことがなかったかのように、和やかにパーティーが進んでいったのでした。




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