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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第56話 聖王再び

 会場に入って、主催者であるツベラール侯爵に挨拶し、外面のいいアークが適当なことを言って、私との出会いをとかモロモロをでっち上げています。


 私はその横で、ベールの中で遠い目をしながら聞いています。


 呪いを掛けられて命からがら戦場を後にしたアーク。それをどこの誰とも知らずに手を差しだしたのが、浄華の聖女の私だったと。

 そして呪いを解いてくれたことに感謝して、浄華の聖女の私に仕えることにしたと……。


 言っていることにはウソは言っていないでしょう。そう、ウソはないのです。

 大事なことが抜けていますよね!


 その呪いは未だに解けていないということが!


 その話を外面のいいアークが、いろんな招待客にするのです。

 そして、流石慈悲深い浄華の聖女様だと言われるのです。


 これに対して私はどう反応したらいいの?


 慈悲深いどころか、お代を払って購入してますからね! その俺様皇子を!


「あら? 挨拶は終わって? オリヴィア様」


 一通りの挨拶が済んだところで、エリザベートから話しかけられました。

 いいですよね。エリザベートは、明日にはここを出立して王都に戻るのですから。


 私は、希望者が居なくなるまで居残りですよ。


「はい」

「そう言えば、ご存知? 珍しく聖王様がこちらにいらしているのよ」


 その言葉にビクッと肩が震えます。その聖王様の姿が見えないということは、あれから直ぐにアンラフェルを立ったということでしょうか?


「そうなのですか」

「先程、挨拶をさせてもらったのだけど、あの方いつも親の敵のようにわたくしを見てきますのに、今日なんて小鳥を愛でるような視線を向けられたのよ。気持ち悪すぎますわ」


 ……小鳥を愛でる視線という例えが、よくわかりませんが、きっと優しい眼差しという意味なのでしょう。それを気持ち悪いとは……ってここにいるのですか?


 思わず辺りを見渡します。


 いました! 後ろ姿ですが、青い髪の人物が聖王の衣服をまとって錫杖を持っています。


「オリヴィア様もお気をつけになって、あれは何を考えているのか、わかりませんわよ」


 あ、もしかして、エリザベートは遠回しに、聖王が私……べルルーシュだったけれども……を襲った犯人だと教えてくれている?


「わかりましたわ。でも、大丈夫でしょう」

「オリヴィアが、魔の浄華をしたために、その気持ち悪い物体になったんだろう」


 アーク。気持ち悪い物体とかはいいすぎです。


「……オリヴィア様? 浄華のしすぎは聖女として如何なものかしら? あら? やっとロベルトの話が終わったみたいね。また後ほど……」


 知人である貴族に挨拶をしていたのだろうロベルト様の元に向かうエリザベート。

 相変わらず、小言を言っていましたわ。


「やっぱり、あの聖女はオリヴィアに構って欲しいだけだろう」

「そうでしょうか……」


 アークの言葉に疑問を呈そうとして、私は言葉を止めました。その聖王様がお連れの聖騎士を伴ってこちらに向ってきたのです。


「これはこれは、浄華の聖女様。先程は失礼しました」


 全てのものに慈愛を与えるような眼差し……。

 エリザベートの言っていた意味がわかりましたわ。


 気持ち悪い。


「今更、どのようなご要件ですかね。ネアリシオン・バルゼルフ殿」

「なに、お礼を言いにまいったのですよ。帝国の第一皇子殿。本当に今までの私は何も見えていなかったのだと、気付かされてしまいました」


 あ! 気持ち悪い理由がわかりました。先程まで緋色の瞳でしたのに、虹色のように瞳の色が揺らめいて、安定していないのです。


 え? 私の浄華にこのような能力はありませんわよ。


「浄華の聖女」


 何故か私の手をとる聖王。なにですか?

 ものすごく拒否反応が……ロベルト様でも私の手をとることはありませんでしたわ。


「あなたのお陰で私は救われました。これはまさに天の(おぼ)し召し」


 脂汗が額に伝い、ガタガタと震えてきます。これは、アレですわ。


「あなたこそ、私の伴侶にふさ……」

「おい、勝手なことを言うなよ。浄華の聖女の婚約者は俺だ」


 私の手に触れていたものは払われて、私はアークの背後に引っ張られました。


「オリヴィア!」

「オリヴィア!」


 そしてエリザベートの声と何故かアン様の声が近くで聞こえてきます。左右をみますと、ベールで顔を隠した聖女が二人いました。


 アン様! 何故ここに!


「聖女の手をとる不届きものなど、さっさと出ていきなさい!」


 エリザベートが、聖王に向って不届き者と言い放っています。これは流石に言い過ぎです。


「聖王様。あなたのお役目は国の安寧を視ることです。聖女の手をとる者ではありません」


 アン様が凛とした姿で、はっきりと聖王様に言います。


「私は聖王ということを知りながら、聖女が何を言っているのです」


 え? もしかして、ご存知ない?


「ネアリシオン・バルゼルフ。お前自身が言ったように、本当に何も見えていないな。他国にいた俺ですら知っている。『聖女の許可なく触れる者は、天罰が下ると』それは神の力を使う者に勝手に触れれば、そうなるだろうな」


 はい。聖女は神の奇蹟の力を使う者です。幼子が高熱を出して神の力を受け入れたように、その者に触れてただで済むはずがありません。


 聖女でありながら、私の周りにお世話をしてくれる人がいないのも、その辺りが関係してきます。

 しかし、世話人や教育者など聖女にとって必要な人とは、それなりの時間を聖女と共に過ごすことで、神の力に徐々に慣れ、影響を受けなくなります。


 ええ、シスターたちや神父様です。


 ですが、ロベルト様はたまに聖女として務めを果たすときにお会いするぐらいなので、私の手をとることはありませんでした。だから、同じ馬車に乗ることもなかったのです。


 ん? もしかして、モフモフたちが猛ダッシュで逃げていくのは、私を危険視していたからとか……そんなことはありませんわよね?



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