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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第53話 黒幕の登場?

 

「オリヴィア。怪我をしたと聞いたのだが、思ったより元気そうじゃないか」


 銀髪に青い目の貴公子と言われている兄が皮肉な笑みを浮かべて私の目の前にいます。


 ええ、怪我はしていませんから。


「お兄様の前で、無様な姿をお見せするわけにもまいりません」


 私は外面のいい聖女仕様の笑みを浮かべます。


「爵位を継いだと連絡がいっているはずだが?」

「それは失礼しました。リオネーゼ伯爵」


 そう言って私は、礼の姿をとります。兄には下手(したて)に出ているのが一番穏便にことがすみます。


「ふん! お前の名が地に落ちるとリオネーゼ伯爵家の名を汚すことになるからな、お前の為にとある方に治療をお願いしたのだ」

「はぁ?」


 別に私のことなど、どうでもいいと思っていることは知っていますよ。しかし、私がヘマをすれば、リオネーゼ伯爵家の名が傷つくことは本当のことですので、その一点において兄が動いたというのであれば、納得できます。


『ふん。ここでそう来るのか』


 私の足元でアークは何故か納得しています。


『オリヴィア。警戒は怠るなよ』


 そのように言われても、私は何もできませんわよ。


「お前の怪我を聖王様が治してくださるというのだ」

「え?」


 誰?

 最近その名前を聞いた記憶があるような?せーおー? せいおう? 聖王!


 聖王って言われても会ったことないのです。エリザベートなら知っていると思うけど。

 しかし聖王様が治癒の魔法を使えるとは聞いたことはありません。


「オリヴィア。いや、『浄華の聖女』様。お前のような妹をもって俺は幸せものだよ」


 そう言って部屋を出ていく兄の代わりに、別の人が……人たちが入ってきました。

 歳は二十代半ばでしょうか。見た目は好青年ですが、神父様の胡散臭さが垣間見えます。


「お久しぶりですね。『浄華の聖女』様」


 ふぇ? お久しぶり!

 誰? 全く覚えがないのだけど?


『アーク! アレが誰か知ってる?』


 残念ながら、家族との面会ということで、いつもつけられている護衛がおらず、聖女お気に入りの魔獣という設定のアークしか、この場にはいないのです。


『聖王だろう。俺ですら知っているぞ』


 そうですか。空のような青い髪に燃えるよな緋色の瞳の青年が聖王。私はもっとおじいちゃんと思っていました。


「お久しぶりでございます。聖王様」


 全く覚えがありませんが、適当に話を合わせるしかありません。


「この度は大変なことが起こりましたね。これは教会に仇なす行為。許されることではありません」


 笑顔を貼り付けた聖王が、私に近づいてきました。なんだか、気味が悪いです。


「本当に許されることでは……」


 キラリと右端に何かが映りました。そして首根っこをアークに咥えられて、後ろに引っ張られます。そして床に尻もちをついてしまいました。


「いたっ!」


 私が居た床から壁にかけて一直線にほとばしる炎。

 え? これをべルルーシュが受けたのですか?

 普通は死ぬでしょう。


「おやおや? また失敗ですか」


 とても残念そうな声を発する人物に視線を向けます。まさか、聖王が聖女を排除しようとしているのですか?


「本当に聖女という者は、目障りこの上ないです」


 そしていつの間にか部屋の中は銀色の鎧の者たちに占領されていました。聖騎士です。


 その聖騎士たちが、私に向って剣を抜いてきました。


『おい、俺を人の姿に戻せ』


 アークの言葉を無視して、私は立ち上がります。


「あの? どうして聖王様が?」

「どうしてですか? 教会は聖女のものではないということですよ」


 ……全然意味がわかりません。聖女がこのように民に奇蹟の力を与えているので、教会は潤沢な資金を得ているはずです。


「それに神の力は無辜(むこ)の民にではなく、貴族に使うべきです。何度も忠告をしているにも関わらず、あなたが聞く耳を持たなかったのは残念ですね」


 忠告? された記憶がありませんが?


「あの? いつ忠告されましたか? それに別に災害が起きているわけではないのに、無辜の民など人々に失礼です」

『おい、こういうヤツは正論を言うと逆ギレするからやめろ』


 アークの忠告は遅く、聖王は額に青筋を立てて、フルフルと震えています。


「あなたはいつもそうですよね。正義感を振りまいて、自分は人々の為にいるのだという偽善。虫唾(むしず)が走ります」


 だから何処で会ったのですか! それ私に扮した別人とか言わないですよね!

 ……あ、ありえます。


 貴族主催のパーティーに呼ばれることがあるのですが、私の痴態を晒すことを厭う神父様に、招待状を奪い取られることがあります。


 もしかして、私の代わりがべルルーシュとか言いませんよね! あの口の悪さで正義感を振りまけば、それは癪に障るかもしれません。


「神の力は青き血を持つ者たちに使うべきなのです。偽善を振りまく聖女はさっさと目の前から消え去りなさい!」


 私を囲うように掲げている剣が、私に向って振り下ろされてきたのでした。




べルルーシュ

『あら? 聖王様。身の心も私は神に仕えています。清める力が必要であれば、私はどのような方にも奇蹟の力を使いましょう。聖王様も私に浄華されますか?』


意訳:その汚い心を私の力で浄華して、綺麗にする必要があるのは聖王様ではないのですか? ニヤリ


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