第52話 面会を望む者
「浄華の聖女様の姿を見たか?」
「襲われたそうじゃない?」
「おいたわしい」
「あのような怪我をしても奇跡の力を使ってくださるとは……」
「まさに聖女様」
「とういうのが、この三日間の浄華の聖女様の噂だね」
どうでもいい噂を教えてくれるべルルーシュ。
今日は通常の聖華会の最終日。
しかし! 私は聖女の力を求める人がいる以上、ここで浄華を続けるのです。
因みにエリザベートは、一日目で仕事は終え、待機状態です。しかし暇を持て余したエリザベートは、休憩中の私の部屋に突撃してくるのです。
「人々から同情を得ようなど、おこがましいとは思いませんこと?」
はい。このようにです。
「エリザベート。オリヴィアは襲われたんだから、そんなことは言っては駄目だよ。私がついていれば良かったのに」
ロベルト様つきでです。
たぶん、その最新兵器というのは遠距離攻撃なので、避けるのは難しいかと思うのです。特に私だと無理です。
しかし、何故この二人はおかしいと思わないのでしょう。浄化の聖女が襲われたという時間は、私がお二人に挨拶をする前だったというのに。
だいたい護衛まで引き連れて入ってくるから、いくらそれなりに広い部屋でも、人口密度が高いです。
「そもそも、このような質素な食事ではなく、栄養がある食事を取りなさい!」
そして昼食を一緒にとるというものだから、エリザベート用の豪勢な食事と並べられる、私の希望で作られたいつも通りの教会の食事。
ええ、豪勢な食事は見た目だけで胸がいっぱいです。
「聖女とは見た目も大事なのです」
「ベールで顔を隠しているけどね」
「貧素な身体では、聖女の役目など担えないですわよ!」
「デブも困るんだよね」
「っ〜! うるさいですわよ! 叔父様の侍従が、出しゃばるなんて無礼ですわよ!」
「だって、ただでさえ狭いのにユニコーンまで連れてくるなんて、困ったものだと思ってね」
「おだまりなさい!」
はい。エリザベートは何故か、毎回角が生えた白い馬を連れて入ってくるのです。それも、人がたくさんいるからか機嫌が悪そうな馬です。
触ってモフモフしたいですが、機嫌の悪いモフモフに近づくと、痛い目に遭うのは経験上知っているので、大人しく眺めているだけにとどめます。
というか、毎回エリザベートはグチグチと言いに来ているだけなのですが、相当暇なのでしょうね。
町を散策してみればと一度言ったことはありましたが、田舎では行くところなど無いと怒られてしまいました。
『なんだ。前から思っていたが、エリザベートはオリヴィアに構って欲しいだけじゃないのか?』
私の足元からとても勘違いした言葉をいうモフモフがいます。何が構ってほしいのですか。
グチグチと文句を言いたいだけでしょう。
そのとき、突然扉をノックする音が室内に響いてきました。それに対応する扉の近くにいる護衛。
普通なら訪問者はお断りの時間帯です。そんな時間にくる訪問者に室内に緊張が走りました。
ええ、聖女の力は心身に影響を受けてしまうので、休憩はきっちりと取ることになっているのです。
「浄華の聖女様。リオネーゼ伯爵が挨拶をしたいと面会の許可を求めらています」
「え? お兄様が?」
私はそのことに若干戸惑いを覚えます。
爵位は昨年父から兄に受け継がれました。
父からは爵位は兄に譲ったと報告はありましたが、兄からは何も報告はありませんでした。
なぜなら、兄は私のことをよく思ってないところがあるからです。
そう、全ては私が浄華の聖女になってしまったために、両親と共に王都で暮らし始めたからです。
最初は兄も王都で暮らそうという話でしたが、兄は拒絶し、兄のみが領地で暮らし、私と両親が王都で暮らし始めたのです。
今思い返せば、反抗期だったのでしょう。
それからというもの、兄との仲は疎遠になってしまったのです。
その兄が私に面会? 父と母になにかあったのでしょうか?
「そんなもの今は忙しいと断りなさい。聖華会で、わざわざ来るものではないでしょう」
エリザベートの言うこともわかります。聖華会は国をあげての行事なので、そこに私情などいれてはいけません。
そんなところを第三者がみれば、血縁者だから優遇しているのかと思われることでしょう。
しかし、私が大怪我を負ったことが耳に入って、母と父が心配しているので兄が様子を見に来たのかもしれません。
ですが、それにしては行動が早いですわね。
皆が私の意見を待つように視線を向けられています。
「そうですね。わざわざこちらまで来ていただいたのですから、挨拶だけでもしましょう」
べルルーシュが私に行くように示唆したので、これは罠と思っていいかもしれません。
そうですわよね。あの兄が、私に面会など絶対にないと思っていますもの。




