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第5話 馬……それは私の部屋が馬小屋になるので却下です

「私は奴隷が欲しいわけではありませんわよ」


 馬車を降りて見上げた看板に愕然としながら、ブライアンに問いかけます。御者に違う行き先を言ったわけではないでしょうね。


「魔獣は購入に際し、飼い主に逆らわないように強固な隷属契約が必要になってきますので、隷従魔法が使える奴隷商が扱っているのが一般的です」


 そうなのですか。確かに魔獣が人に合わせて過ごしていくのは無理がありますわね。


 それで隷属の契約が必要になってくるのですか。


 納得できたので、私は奴隷商の建物の中に入っていきます。

 貴族が奴隷を購入することもあると聞いたことがありますので、内装は貴族の屋敷と遜色ない豪華な感じです。

 広い玄関ホールに、待ち受けていたかのように立っている恰幅のいい男性。


「お待ちしておりました。浄華の聖女様」


 どうやら事前に連絡がされていたようです。


「私はこのガランド商会のオーナーのヴァイゼルフと申します」


 オーナー自ら、私の対応をしてくれるのですか!

 確かに、王弟の神父様から言われると、一般従業員には任せられないですわね。


「今日はよろしくお願いしますわ」


 聖女はよっぽどのことがない限り名乗ってはいけないと言われています。隷従魔法のように名を使って聖女を縛る者がいるかもしれないからです。

 ですから、私は一般的に『浄華の聖女』で通っているのです。


「では、あちらの部屋にご所望の品を揃えておりますのでまいりましょう」


 示されたのは入口からほど近い扉でした。

 私はうきうきした気分でオーナーの後についていきます。

 もふもふ。どんなもふもふ達が私を待っているのでしょう。


 きゃわいいコロコロした子犬かしら? 丸まって寝ているニャンコちゃんかしら?

 それともそれとも……



 私の心に大雨が降っています。もう洪水になりそうなほどの土砂降りの雨です。


 そろそろ決壊しそうですわ。


 私の頭上を飛び交う鳥たち。ええ、まぁもふもふには違いありません。が! その大きさが私と変わらないではないですか!


 これは乗れるのですか?

 乗れないのに、この大きさなのですか!


 それで何を食べるのですか?

 肉食! 確かにこの身体を維持しようと思えば肉食かもしれません。


 それで? この赤い鳥は火を吹くので要注意? 絶対に怒られるやつですわ。


 こっちの青い鳥は電撃を発するので要注意? 神父様が青筋立てている姿が想像できてしまいました。


 他には?

 ネズミ。それも巨大ネズミ。汚水を浄化しに行くときによく見かけるので却下です。

 うさぎ……まぁいいのでは……どうして頭が割れて口になるのですか! 怖いから却下ですわ。

 馬……それは私の部屋が馬小屋になるので却下です。


 終いには、巨大サソリとか、人を飲み込みそうな大蛇とか、ワニとかでてくるではありませんか。


 もふもふはいませんの?


「いるのは……いるのですが、まだ調教が終わっておらず」

「それでも、かまいませんので見せてください」

「それが……連れて来ることもできず……」


 オーナーは額から流れ落ちる汗を拭いながら答えていますが、連れてこれないのなら私が行けばいいのよね。


「では、そこに案内してください」

「しかし、聖女様に入っていただけるような場所ではなく……」

「案内してください」

「かしこまりました」



 薄暗い場所に案内されてきました。

 そこは積み重なるように鉄格子の檻がいくつも並べられた場所です。


 人が通れる通路はあるものの、物がアチラコチラに置いてあり、まっすぐには歩けない状態でした。


「おや? 獣臭がしない?」


 いつもと違う感じに戸惑うオーナー。


「浄華の聖女様の周りは常に清められているので、匂わないだけです」


 背後から説明をするブライアン。

 ええ、私は浄華の聖女ですからね。清めることしかできません。

 それに汚水の浄化に行くときに、空間の浄化ができないと、息もままならないではないですよね。

 汚水が流れている地下を歩いていくのですよ。その先にある巨大な空間が汚水で満たされているのですよ。

 普通に死ねますわね。


「それは、素晴らしい。このような仕事をしておりますと、どうしても臭いというものに敏感になってしまいましてね」


 奴隷商も大変なお仕事のようですわね。詳しいことはよくわかりませんが、借金の返済ができずに奴隷に身を落としたり、犯罪を犯した者の刑罰として奴隷という制度を用いているようです。


 真面目に働けば、奴隷という身分から解放されるようですが、誰かの所有物のように扱われるのは嫌ですわよね。


「こちらになります」


 そしてオーナーは、一つの檻の前で立ち止まりました。薄い布に覆われている檻なので、中に何がいるのかはわかりません。


 檻から布を取り払われましたが、全くなにがいるのかわかりません。


 もしかして透明化する魔獣とかですか!


「何がいるのかわからないのですか?」

「これは失礼しました。明かりよ(ルエール)


 光の魔法で照らされた檻の中には、黒い大きなもふもふが!

 しかし、黒い毛皮しか見えず何の魔獣かさっぱりわかりません。


「この魔獣は?」

「この辺りでは珍しい黒豹の魔獣なのですが、使役の魔法が効きにくいようで、調教ができておりません」


 この魔獣も人に良いように扱われるのが嫌なのかもしれませんわ。

 はぁ、そうですわよね。魔獣を飼いたいということはそういうことですわよね。


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