第47話 ドキッと高鳴る心臓
「オリヴィアは私がいないと駄目だよね?」
「は?」
別に私はロベルト様がいなくても構いませんわ。いつも微妙な褒め方しかしないではないですか。
私にはこのあとモフモフパラダイスが待っているのですから。
「別に私は構いません」
「え?」
「私にはモフモフパラダイスがあるのですから」
するとすぐ近くでクツクツと笑い声が聞こえてきました。
「フラレたな」
笑いながら言うアーク。別に笑うようなことでは無いと思います。
「ロベルト。これこそ、あてが外れたわね」
高笑いするエリザベート。だから、笑うことなのですか?
一つ思ったのですが、エリザベートは別にロベルト様を擁護するとかはないのですね。まるで他人事のようです。
「アークジオラルド殿下。自らオリヴィアの婚約者にとおっしゃいましたが、オリヴィアは普通の令嬢とは違います」
……ロベルト様。いったい何が言いたいのですか?聖女という存在は普通ではないと?それはそうでしょうね。
「獣に異様な執着があるのです。目の端にでも捉えると、後先考えずに突っ走るほどです。アークジオラルド殿下に扱えるとは思えませんね」
……扱えるってなに? 私は、モノってこと?
ちょっとロベルト様に、私のことをどう思っているのか問い詰めたほうがいいのかしら?
「知っている」
私の頭をぽんぽんと叩きながら言うアーク。それはよくご存知でしょう。
モフモフアークのときは、撫で撫でして存分に堪能しているのですから。
「そういうところが可愛いじゃないか」
「ふぉ!」
か……かわいい? モフモフしている私がかわいい?
……一瞬、心臓がドキッと高鳴りましたが、冷静に考えれば、別の意味が含まれていそうなのですけど?
これもアークを問い詰めた方がいいのでしょうか?
「あらあら? ロベルト。相思相愛って感じではありませんこと? 勝ち目はありませんわね」
「しかし!」
「ロベルト。帝国の第一皇子に勝てる要素があるのかしらぁ?」
色々噂があるアークです。ということは、隣国までその名が知れ渡るほどの人物と言えます。殆どが悪い噂ですが。
しかし、ロベルト様と比べると雲泥の差。
はい。この八日の間に周辺を回っていると、魔物に遭遇することがありましたが、近衛騎士団長が出る幕もなく、魔法の一撃で倒してしまったのです。
流石、最凶と異名を持つアークです。
近衛騎士団長には、木偶の坊に改名された方がいいのではと、思わず口からでそうになりました。
「オリヴィア様も、よい婚約者を見つけられて良かったですわね」
「ありがとうございます」
エリザベートが珍しく私を褒めました。これはなにかあるのでしょうか?
さっさと部屋をでたほうがいい予感満載です。
アークを婚約者として紹介したからいいわよね?ちょっとドキッとするハプニングがあったけれど。
「それでは、私はこれでしつれ……」
「ときにオリヴィア様?」
……被せてきました!
「はい」
「もしかして、帝国に行かれる予定なのかしら?」
「いいえ。今のところは……」
「そうですわよね? 本物でも戦死したというアークジオラルド皇子が帝国に戻らないとなると……」
はっ! これ以上ここにいると、エリザベートとアークの舌戦が始まりそうです!
「エリザベート様! 私はまだ仕事が残っていますので、失礼します!」
強引にエリザベートが話しているところに割り込んで、アークの手を掴んで部屋を出ていきます。
わかっています。アークの今の立場は無いに等しいのです。だから聖女の婚約者に立てる立場じゃないと。
「なんだ? あの女とやり合っても良かったぞ?」
「よくない。ハイラヴァート公爵家は王家に繋がるから、問題を起こすとこの国にいられなくなる……よ……でも、アークとしては関係ないか」
「ふん! そういうことが、あの女が横柄な態度をとる理由だろう」
アークはそう言うものの、ハイラヴァート公爵家に睨まれると、左遷されるとかなんとかと近衛騎士たちから聞いたことがあります。
騎士たちからすれば、近衛騎士は憧れの職らしいです。
「あの女は、聖女であることに固執しているようだな」
「え? そんなことは言っていなかったとおもうけど?」
「は? 見ればわかるだろう? 周りの者は聖女である自分を引き立てるための存在でしかない。そんな感じをだ」
ああ、だから婚約者のロベルト様に対して、他人事なのかと感じたのですね。
「そして、オリヴィアの元婚約者だ」
「ファルレアド公爵子息様ですか?」
「あいつは聖女の婚約者という立場が大事なのだろう」
それだと、エリザベートの婚約者で問題ないと思います。
アークの言っている意味がわからず、首を傾げてしまいました。
「わからないのか? あの女は周りの者たちを聖女を引き立てるコマとしか見ていない。そんな立場では、あのファルレアド公爵の息子というヤツは、満足できなかったということだろう」
言われてみれば、聖女として神聖視される私の側に立っているロベルト様というのが、いつもの光景かもしれません。
アークのように同じ馬車で移動することもありませんし、他の細々とした仕事に付き合ってくれるわけではありません。
でも、公爵子息という立場がお忙しいのだろうと、思っていましたが?
「モフモフモフモフ言っているオリヴィアが可愛いと言えるぐらいの度量が無ければ、婚約者など無理だろう?」
「ふぉ!」
可愛いと言いながら私の頭を撫でないでほしいです。それから……
「モフモフは、そこまで口に出していないです」
「オーラが漏れ出ているからな」
……解せない。
いつも読んでいただきましてありがとうございます。
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