第41話 聖騎士団長が怪しすぎる
「意味がわからないのだけど?」
死んでみるってどういうこと? 嫌なのだけど。
「僕が聖女様の身代わりになって、町の浄華をしている風にするってこと」
え? もっと意味がわからないのだけど。 町の浄華は昼から頑張って終わらせたはず。明日からは鉱山から町にかけて行う予定のはずです。
「一から説明して欲しい。そもそも誰が私のことを……モゴッ」
「しっ!」
べルルーシュに口を手で押さえられて、言葉を遮られた。しかし、直ぐに手が離れていき、どう移動したのかわからないけど、いつの間にかべルルーシュは壁際に控えています。
そして部屋の扉をノックされる音が響きます。そのノックに対応するべく護衛の任についている近衛騎士が扉を開けました。それも隙間と言っていいぐらいしか開けていません。
そこでコソコソ話していますが、私の耳には聞こえませんでした。
その間に、私の視界は白いベールに覆われました。
視線を上げるとブライアンが頭にベールをかけてくれたようです。
これは、ここの教会の人ではないということでしょうか? いつもでしたら私が到着したら、このアンラフェルの教会の神父様が挨拶に来るのですが……。
「浄華の聖女様。いつも通りでお願いいたします」
ブライアンがそう言うということは、私に話すなということね。わかっているわよ。聖女像をぶち壊す言動はしてならないと。
「聖女様。お初にお目にかかります。この度、アンラフェルで行われる聖華会の警備の任についています。聖騎士団の団長を務めているキャスディールと申します」
聖騎士の白銀の鎧を着た銀髪の青年が私に向って胡散臭い笑顔を浮かべています。
しかし、おかしいですわね。私の知る聖騎士団長は渋いオジサマでしたのに。
どちら様と聞きたいぐらいです
「明日は、町の浄化に赴くとお伺いいたしました。我々も護衛として同行させていただきたく、ご挨拶にまいりました」
怪しすぎますわ!
聖騎士はプライドの塊と言ってもいい物体ですのに、私の浄華の巡回に付き合うとかありえません。
やっても教会の敷地内で人の目を引き付けるモニュメントぐらいです。
明日はきっと槍でも降ってくるのかもしれません。
「了承しました。聖女様もよろしくとのことです」
「聖女様もおつかれでしょうから、本日は簡単な挨拶ですが、これにて失礼いたします」
それだけを言って銀色の鎧は部屋からでていきました。
今のは何だったのでしょう?
聖騎士団長が私に挨拶するのは聖華会の初日ですよ。それに私のことは『浄華の聖女』と呼ぶことが決められているはずです。
「近衛騎士団長。アレは何でしょう?」
取り敢えず、私の側で突っ立っているブライアンに聞きます。
「聖騎士団長と名乗っておいででした」
「一緒に聞いていたのだから、私も知っているって、そこは思わないの?で……近衛騎士団長」
私の知っている情報は必要ないのよ。
思わず木偶の坊と口から出てしまうところでした。
「はい。ただ、聖騎士団長が新たに決まったとは報告は受けていません」
「あれは偽者?」
聖騎士団長という名を騙っている偽者ということですか。それは、それで危険人物扱いになります。
「それがそうでもないんだよね」
べルルーシュが、肩をすくめながら近ずいてきました。
「聖騎士団長代行という肩書で彼はこの場にいるから、権限としては聖騎士団長と同じってこと」
え? 普通に代行ですと言えばいいのに?なにか変なプライドでもあるの?
「この国、帝国よりヤバいな」
アークがヤバいと口にしていますが、どの辺りがでしょう。やっぱり、代行なのに聖騎士団長と名乗ってしまうあたり、イタいですよね。
あれ? そういえば、その聖騎士の人が入ってきたとき、アークが隣に居なかったような?
「ベールで顔を隠すのは神聖視の意味があるのかと思えば、そういうことか」
そして、私のベールがアークに取られてしまいました。
ベールって神聖視の意味でしょう?
特に皆から言われる聖女らしい存在という者をです。でも、依頼者には顔見せは大丈夫でしたよね。
「まぁ、そういうこと。それで浄華の聖女様。食べたいものある?それ以外は僕がいただくよ。残すと怪しまれるからね」
夕食の件ですか。確かに残すとわがままな聖女の印象がでてしまいます。
「頑張って食べます」
「量がいつもの倍以上あるけど?」
「うっ」
味が濃そうで、油ギッシュで、甘ったるそうなものが並んでいるテーブルを見て、既に胸がいっぱいです。なのに、まるで大食漢だと言わんばかりにテーブルいっぱいに料理が並んでいるのです。
はっ! これはもしかして護衛の近衛騎士の分まで含まれているとか!
「あの、皆さんの食事は?」
「え? 僕達の食事はいつも通り教会で出されるものと変わらないけど?」
「羨ましい……」
できれば、私はそちらの料理が食べたいです。
「『祝福の聖女様』にご満足いただけた料理という謳い文句だったのだけど、流石にこれはないよね」
べルルーシュ。それ、エリザベートを敵に回す発言だから気をつけたほうがいいと思うよ。
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