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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第37話 人でなし

「痛い! 痛い! 痛い!」

「オリヴィアの頭はどうして習ったことを、すぐに忘れてしまうのでしょうね」


 神父様からこめかみをグリグリ攻撃されている私。そんなことをしても、頭の中にははいりません。


「ハイエント聖王国には、聖王という存在がいるのを忘れる者が聖女に選ばれるなど、どういう基準で選ばれるのでしょうね?」


 それは、私が一番疑問に抱いています。

 何故、私が聖女なのでしょう?


「私は王族として、教会と国との間を取り持っているにすぎません。聖女様方のお務めの采配という形でです」


 確かに言われたような気がします。


「ふーん。権力の二分化ということは、国王側に教会に力があることが気に入らない奴らがいるということか」

「それはどこも同じでしょう」


 えっと、それって何故私が攫われることになるのです?

 関係なくないですか?


 そして神父様から解放された私は、俺様皇子を盾にするように反対側に移動します。


「全然わかっていない風だが、オリヴィアにその辺りの危機管理能力が必要ではないのか?」


 反対側に逃げたというのに、俺様皇子に頭をグリグリと撫でられる私。

 いや、私を撫でてもモフモフじゃないです。


「聖女様方には、一通り説明するようになっています。国が一枚岩ではないのは、いつの時代も変わりませんから。その辺りは先任の者が説明したはずです」

「権力の象徴というべき聖女を排除して、教会の権力の低下を図ろうとしているのか」


 アークが言うように、お布施というお金を民から巻き上げているのは教会です。

 ウハウハなぐらいお金を持っていることは知っていますよ。


「……以前話がでた『聖水の聖女』だったか? そいつも、オリヴィアのように真っ当に役目をこなしていたか?」

「そうですね。聖女の人気は教会の力に繋がります。その聖女をそそのかせば……」


 何故に二人して、私をみてくるのですか?


「ということで、浄華の聖女様のお務めには必ず、我々のどちらかが随行することになっています。しかし、今回のように御禁制の物を用いられ、対処ができなかったことは不徳のするところですね」


 私には、その御禁制の物の睡魔の香は効かなかったです。だから、今回のことは私が事前に浄華を怠ったのが悪かったのです。


「そう言えば、一昨日に朝に出るって言っていたけど、ゆっくりしているけどいいの?」


 今は朝食をいただいて、食後のお茶を飲んでいるところなのですが、いつもならさっさと出発しているところなのです。


「ええ、昨晩連絡が入りましてね」


 神父様が何かを言おうとしたところで、部屋の扉が近衛騎士の人によって開けられました。

 あら? 老公でしたら、朝食前にお会いしましたわよ。


「オリヴィア!」


 扉から、なんとアン様が入ってきたではないですか。

 いつもはきっちりと白髪混じりの紅色の髪を結われていますのに、今日は乱れています。


 杖をついて歩くアン様は、私を視界にとどめたかと思うと、早足で歩いてきました。


「ああ! 無事でよかった! 襲われたと報告を受けたときは大丈夫と言われたのですが、その後に攫われるなど……怖かったでしょう。恐ろしかったでしょう。だから、外には出ない方がいいと言ったのです」


 震えながらアン様は、私を抱きしめてきました。


 もしかして、外が嫌いなアン様が私のことを心配して、来てくださったのですか?


「アン様。私は大丈夫です」

「攫われて大丈夫なはずはないでしょう! 護衛はいったい何をしていたのですか! それでも近衛騎士なのですか!」


 アン様は、壁際に控えている近衛騎士たちに向かって怒っています。


「アン様。今回のことは私も悪かったのです。でも、本当に大したことはなかったのですよ」

「我慢しているのではないの? 私だけは何があってもオリヴィアの味方よ?」

「本当に大丈夫でしたよ。棺の中に入れられて運ばれていただけでしたし」

「ひ……棺!」

「それにアークが助けてくれましたし」

「アーク? ……黒髪に陸離(りくり)の魔眼……ま……まさか帝国の……」


 なんだか聞いたことがない言葉が聞こえてきました。リクリの魔眼とはどういう意味でしょう?


「アーク。リクリの魔眼ってなに?」


 取り敢えず、本人に聞いてみることにしました。


「あ? 有名な話だと思ったが知らなかったのか?」

「え? 有名なの?」


 私が首を傾げていると、アン様から両肩を掴まれて揺さぶられてしまいました。


「本当に、あの帝国の第一皇子なの? ウベルト国を陥落させたという? ジェハールの森を焼き払ったという? メラドーラの塔を木っ端微塵にしたという?」


 あ……それは知っています。


「はい。その俺様皇子です」

「おい。言っておくが、それは皇帝の意だ」

「戦死したはずなのに? 死人が蘇ったの?」


 そういう反応になるのですか。

 そうなると、私の婚約者っていうのは無理があるんじゃない? 人々の認識は死人らしいし。


「神父様。死んだことになっているアークと婚約ってやっぱり無理があるんじゃない?」

「そんなものは今回の聖華会を利用すればいいことです」

「こ……こんやく……お……オリヴィアが、そのような人でなしと婚約だなんて……」


 力なく倒れていくアン様。

 ちょっと誰か支えてくれない? 私だけではアン様を支えられないよ。


 しかし、人でなしとは……。うん、モフモフアークにはぴったりだよね。


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