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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第27話 浄華の聖女が視る世界

 ふと目が覚め、今日も朝からお務めかと思考が鈍る。


 この世は穢れに満ちている。世界も人も全てが穢れている。

 だから、私は世界を浄華しなければならない。


 でも、私がいくら浄華しようとも、浄華した先から穢れていく。切りが無いお務め。


 治癒の聖女様もおっしゃっていた。治しても治しても、人々は病んでいくと。

 だから治癒の聖女様は、外の世界に出ることを(いと)うようになった。


 だけど、私は見つけてしまった。

 穢れがない存在に……そう、モフモフたちだ。


 モフモフたちがいるからこそ、世界かまだ穢れきっていないと思える。だから頑張れる。

 だから、私にはモフモフが必要なのだ。


 寝返りを打つとしなやかな毛並みが頬に触れる。そのモフモフ感に思わず抱きつく。私にはモフモフが必要なのだ。


「また、寝ぼけているのか?」

「なぜ、モフモフが堪能できない」


 モフモフを堪能するために、黒豹を飼ったのに、ケモミミ皇子化するなんて、理不尽過ぎる。

 それも先日から抱きつくだけで、ケモミミ皇子化するなんて……。


「私のアークは、どこに行ってしまったのか」

「だから、それは俺だからな。今日は早起きしなくていいと、あの神父が言っていたのだから、もう少し寝ていろ」


 何故か、背中をポンポンされながら言われた。私はそんなお幼子じゃないのに……。




「はっ! 寝坊した!」


 窓から入ってくる太陽の光に、慌てて飛び起きる。


 あれ? ここはどこ?

 自分の部屋ではないことに一瞬思考が止まった。


「あっ……モフモフの屋敷だった」

『そんな屋敷はない』


 私に突っ込みを入れるアークは、ベッドの上で丸まっていた。

 大きなモフモフ可愛い。


 私は抱きつきたい衝動を押さえながら、黒い背中を撫で撫でする。


「アーク。おはよう」

『ああ、おはよう。ドアの外で護衛がウロウロしているぞ』


 確かにいつもより遅い時間なので、心配されているのかもしれないです。

 寝室に押し入られる前に、身なりを整えておかないといけませんね。




「おはようございます。浄華の聖女様」


 寝室の扉を開けたところで、全身金属の鎧に覆われた物体が立っていました。

 そこに立たれると、私が寝室から出られないのですが?


「おはようございます。近衛騎士団長。少し横にズレでいただけます?」


 そう言うと、ガチャンと金属音を鳴らしながら横に移動する鎧。扉のすぐ前にいる理由って何なのですか?


「本日は、午前中に外への散策が予定されております」

「そう」


 お屋敷の外には大きなモフモフたちがいるのです。楽しみです!


 室内を見渡しますと、すでに朝食が用意されていますが、壁際に控えている護衛の人数が少ない気がします。


「何かありましたか? 護衛が少ないようですが?」


 私の部屋には最低五人は護衛がいるのです。しかし、今は三人。今回の聖華会に行く私の護衛のために二十人の近衛騎士がつけられています。


 長期間の護衛になるため、交代で私の護衛に当たってもらっています。ですが、ファルレアド公爵家の護衛がいたときはもっといたのですけどね。


「ジークフリート様が、本日王都に戻られるということで、護衛をそちらに割いております」


 ……神父様は護衛など必要ないぐらい強いのに? 双子であるブライアンならよくわかっているはず……これは何かあるのでしょうか?


「そうですか。夕刻にはこちらに戻られる予定ですか?」

「明日の出立には合流します」


 ということは、明日の朝に戻ってくるということ。昨日の婚約者云々の話を強行的に進めるのかもしれないです。


 そう、王命という権力を使って。


 聖女は国の所有物。自由などありはしないのです。

 だけど、限られた小さな世界での自由は認められています。


 でも、本当の自由を求めた聖女もいました。それ故に、彼女は天罰を受けてしまったのです。『聖水の聖女』のようにはなってはならない。


 だから、私は小さな世界での自由を得る続けるために、『浄華の聖女』であり続けるのです。

 だから、ファルレアド公爵家の庇護を受け、ロベルト様の婚約者であり続けました。

 だから、両親と暮らしたいのを我慢して教会で暮らすことを決めたのです。

 だから、私は穢れた世界で奇蹟の力を使い続けているのです。


「そう、今日はモフモフを()で放題ということね」

「午前中だけですが」

「は? 午後は?」


 午前中だけってどういうこと? いつもなら午後は室内でモフモフを愛で放題だよね?


「アスタベーラ公爵子息様から、観劇のお誘いを伺っています」

「嫌だけど?」


 モフモフとどちらが大切だと思っているわけ? モフモフの方でしょう?

 どうして知りもしない人と観劇だなんて、つまらない物を観に行かないといけないわけ?


「神父様は何と言ったの?」

「先程お誘いがありましたので、ジークフリート様の耳には入っておりません」


 は?

 ということはブライアンの考えで、私の午後の予定を変更したっていうこと?


「まさか、行くと返事をしたわけではないよね?」

「浄華の聖女様にお伺いしますと申しました」


 ブライアンにしては頭が回るじゃない。行くと返事をしなかっただけ偉いわ。


「近衛騎士団長。私にとって、モフモフとの時間と、公爵子息との時間の、どちらが大事かわかっているわよね?」

「はい、アスタベーラ老公の顔を立てるために、アスタベーラ公爵子息様との観劇を……」


 は? モフモフたちと過ごす時間の方が大事に決まっているじゃない!


「アーク。この金属の塊に攻撃していいわよ」

『いや、そいつは別に間違ったことは言っていないだろう』



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