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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第26話 団長、妄想癖はヤバいですよ

「煩悩というよりも、モフモフしか詰まっていないだろう」

「モフモフの何が悪いのですか。あ……そう言えばアークに言っておかないと」

「あ? なんだ? 話し合い中はこのままだぞ」

「違う。モフモフたちを私のところに連れて来てくれてありがとう」


 私は少し身体をねじりながら振り返り、アークにお礼を言った。私はこの世に楽園があることを初めて実感できたのだから。


「以前、モフモフたちを世話をしていた人がいたときには、触りたい放題だったのだけど、歳だからってここを辞めてしまったんだよね。それからモフモフたちが私に懐かなくて」

「元から懐いていませんでしたよ」


 神父様。うるさいです。

 大人しく私にモフモフされていたではないですか。


「それから、見えない檻に囲われた状態で、楽園とはいいませんよ」


 神父様が何を言っているのかわからず、首を傾げます。見えない檻とはなんのことでしょう?


「わかりませんか? ただでさえ、黒魔豹(ラフェシエン)は強い魔獣で、小物たちからすれば、捕食される対象です」


 確かにアークは見た目は黒豹でしたが、中身はケモミミ皇子ですよ? 本物の黒豹かどうか、モフモフたちにはわかるものではないのですか?


「その黒魔豹(ラフェシエン)に連れてこられて、逃げようにも床に陣取られて、長椅子の上にはモフモフと言っているお馬鹿がいるのです。それはもう動けないでしょう」

「私、声に出していません」

「声に出していなくても、漏れているのですよ」


 え? 私そのような器用なことはできません。

 あのときの私は、思いっきり地上の楽園を愛でていたのですから。


「私にはモフモフの癒やしが必要なのに、モフモフがいない世界に、なんの意味があるの?」

「時々支離滅裂になるよな。やっぱり、モフモフしか、その頭の中には詰まっていないだろう」

「それは、仕方がないところもありますからね。聖女様方の見ている世界は我々とは違うと言いますから」

「なんだ? それは?」




 一方その頃、早めの夕食をとっている近衛騎士の者たちは……


「団長。さっさと食べてくれません? でないと、給仕している僕が食べれないのです」


 少年と言っていい者が、近衛騎士団長であるブライアンに向かって、声をかけている。

 丁寧な言葉づかいだが、その内容は上官に向かって言うべきことではなかった。


 そのブライアンと言えば、神父ジークフリートそっくりの金髪青目の美人と言っていい素顔を晒して、呆然と目の前に出されている食事を見ている。

 またしても、目を開けたまま寝ているのではないのかというほど、微動だにしていなかった。


「たぶん、団長は歓喜に打ち震えているのですよ」


 そこに別の近衛騎士が侍従の少年に声をかけてきた。


「え? あのとてつもなく団長を嫌っている浄華の聖女様から礼を言われたとか言いませんよね?」

「君、いつかその口が命取りになりますよ」

「あ、それは理解していますので、大丈夫です」


 ハッキリ言って問題発言だ。護衛対象者が近衛騎士たちをまとめる者を嫌っているなど、決して口に出してはならない。

 それも、理解しての発言とは如何なものなのだろうか。


「別にいいではないですか。我々は隔離されているようなものなのですから」


 侍従の少年が言うように、室内には食事をとっている近衛騎士以外では、給仕をしている侍従の少年しかいない。


 屋敷の使用人がいないとは、どういうことなのだろうか。


「隔離ではなく、浄化の聖女様の部屋の隣で待機と言いなさい」

「了解しました。それで、団長は浄華の聖女様に何を言われたのですか? こうなるときは大抵、浄華の聖女様絡みですよね?」


 他に聖女がいるとは言え、現在、活発に活動しているのは『浄華の聖女』だけなので、必然的に護衛としてつくのが、『浄華の聖女』になると言うだけだ。


「三男にあたるアスタベーラ公爵子息が、ここに来ているのですが……」

「ああ、確か先日ツヴェリース伯爵令嬢に、阿婆擦れとか言って婚約破棄を突きつけ、茶番を行ったと噂になっている坊っちゃんですか」


 ここはアスタベーラ老公の屋敷で、孫に当たる本人がいるにも関わらず、この言い方は酷いものである。


「……従兄弟のカルベリア子爵令息と浮気をしていたと言って婚約破棄をしたと言いましょうか」

「それそれ」


 流石に言い直すように促す近衛騎士。しかし侍従は平然とした表情でウンウンと頷いている。


「そのアスタベーラ公爵子息が、ジークフリート様のことを悪く言いましてね。それを不快に思われた聖女様が、神の奇蹟を施行されようとしたのですよ」

「え? それって団長は全く関係ないじゃないですか」


 確かにブライアンは関係はないだろう。

 その場には全身鎧に覆われた姿で立っていたので、双子の片割れがその場にいることに気が付かれていないと思われた。


 だが、アスタベーラ公爵子息は、双子であるジークフリートとブライアンを指す言葉を言ったのだ。『忌み子の王弟』と。


「もしかして、御自分をジークフリート様と勘違いした妄想癖を! うゎっ! 引くわー!」


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― 新着の感想 ―
ブライアンさん・・何かかわいそうに・・ 報われなさそうだけどちょっと応援したくなってきました!
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