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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第24話 恐怖で支配される楽園

 ここには楽園がありました。モフモフの楽園です。


 あれから、アークに長椅子に大人しく座るように促され、うなだれながら座っていると、アークが猫の首根っこを咥えて私の横に置いてくれたではありませんか!


 大きな黒い豹が、白い猫を咥えている姿にキュンキュンします。

 そして、今度はわんこ君。次はうさぴょん。そんな風に私の元にモフモフたちを運んでくれるアーク。


 その姿がなんとも言えないほど、きゃわい過ぎます!


「アーク。きゃわゆい! これこそ、モフモフの海や〜!」


 長椅子の上にはプルプルと震えているモフモフたちに満たされました。そして私の足元に寝そべる黒い大きなモフモフ。


 私はこのまま楽園に居続けたい。聖華会など行かずにモフモフの海に溺れたい。


「はぁ、エリザベートのストレスより、モフモフたちと暮らしたい」

「駄目ですよ」


 その声にモフモフたちが勢いよく走り去ってしまいました。

 私は声をかけた元凶を睨みつけます。


「神父様……早いです。まだ夕食の時間じゃないです。それから神父様の所為で私の楽園が崩壊したじゃないですか!」

「何を言っているのです。もう夕刻ですよ。それから楽園は恐怖で支配するものではありません」


 なんですって! 窓の外を見ると風景が赤く染まっていました。確かに夕刻です。


「まさか、時間遅延の魔法が使われた!」

「誰がそんな魔法を使うのです。老公がおいでになりますから、背筋を伸ばしなさい」


 しかし、神父様は何か勘違いしていると思うのです。何処が恐怖で支配しているというの?

 黒くて大きなアークがプルプル震えたモフモフたちを連れてきてくれたのに。いつもなら長椅子の上に乗るのに、私の足元に居た。何処が恐怖の支配だと?


 しかし私が聞く前に、神父様は私の背後に回り込みました。部屋の入口の方から多くの人の気配がしてきます。


 アスタベーラ老公がおいでになったのでしょう。私は背筋を伸ばします。そして聖女らしい笑みを浮かべました。



「浄華の聖女様。久しぶりに妻と言葉を交わすことができた。本当に感謝しかあらぬ」


 そう言って深々と頭を下げる老公。その姿に周りがざわめき出したのです。

 そうです。頭を簡単に下げていい方ではありません。


「その礼がいつも動物たちと過ごす時間がいいとおっしゃる。妻と相談して次来られたときには浄華の聖女様に気に入ったモノがおればもらってくれぬかと言うつもりでおったのだが……」


 そう言って老公は私の足元を見ています。


 ここにいるモフモフパラダイスが、私のものに! なんて素敵なのでしょう!


黒魔豹(ラフェシエン)種とは、これ程のモノに勝るものは流石におりませぬな」


 あ……いいえ。これの中身はケモミミ皇子なので、本物のモフモフがいいです!

 とは声を出すことはできませんので、私は笑顔を浮かべるのみです。


「それで代わりと言ってはなんであるが、この者を紹介させてくれぬか?」


 紹介ですか?

 そしてアスタベーラ老公の背後に並んでいる人たちから、一人の人物が前に出てきました。


 誰でしょう?

 ここの使用人の方々ではありませんわね。

 金髪に新緑のような瞳を持つ青年です。貴族らしい綺羅びやかな衣服をまとい、これまた貴族らしい笑顔を浮かべた方です。


 あ……これ苦手なタイプです。


 嘘の言葉を言う貴族特有の笑顔。


「婚約者が今おらぬと聞いたのでな。孫にあたる者になる。レイモンド。挨拶をしなさい」

「はい。お初にお目にかかります。浄華の聖女様。レイモンド・アスタベーラと申します。浄華の聖女様のご高名は耳にしないときはないほどのご活躍。そのような浄華の聖女様にお目にかかれたことを主に感謝致します。お近づきに今宵の晩餐を共に楽しみませんか?」


 嫌です。

 モフモフ以外と、お近づきになりたくありません。


「申し訳ありません。聖女様方は、基本的に個室で食事をとる決まりとなっておりますので、どのような方のお誘いもお断りしております」

「それでは美味しい食事も楽しめないでしょう。本日ぐらいよろしいのではないですか?」

「規則は守るためにあるのです」

「私は浄華の聖女様と話しているのです。忌み子の王弟は、黙っていて欲しいものです」


 は? 何を本人に言っているの?

 忌み子だからと決めつけたのは周りであって、神父様は聖女様方のために色々動いてくれている。

 話の通じないブライアンだけど、護衛の仕事は真面目にしてくれている。


 そういう言い方は気に入らない。


 しかし私は人前では喋るなと言われている。元婚約者であったロベルト様に、喋らなければ清楚な聖女で通せると言われたほど。

 褒めるなら、きちんと褒めて欲しかったわ。


 これは、アレをするしかありません。


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