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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第23話 ぐふっ!大きな肉球もいいです!

 いつも通される部屋に案内されて来ました。

 南側の日当たりが良い部屋に、直接光が入らないようにか、緑の葉の影が映り込んでいます。


 その部屋の中央に置かれた天蓋付きの大きなベッド。動物好きの奥様が外にいるペットたちの姿を見れるようにという配置らしいです。


 そのベッドにはやせ細った老夫人が目を閉じて横になっています。

 どう見ても、あまり先は長くないです。


「最近は食が一段と細くなり、ほとんど寝ていることが多くなりましてな。せめて、何か食べることができればと」


 アスタベーラ老公はそうおっしゃいますが、私は浄華の聖女ですので、私ができるのは身体の痛みを浄華するだけです。

 それに治癒の聖女様でも寿命を伸ばすことはできません。


「老公。何度も言っていますが……」

「わかっておる。痛みを取るだけだと。しかし、身体が楽になったと目を覚まして笑ってくれるだけでよい」


 アスタベーラ老公が、神父様の毎回の説明を遮って言います。しかし一応決まりですので説明しておきませんと。


 私は、アスタベーラ老夫人の病状を、治癒の聖女のアン様に意見を聞いてみたのです。

 痛みが続き長期化すると眠る時間が増えてきてそのまま目覚めなくなる病を。

 それは自分の身体を毒だと勘違いして、自分自身の身体を破壊してしまう病『ディアルギロ』。


 この病は、治癒の聖女であるアン様でさえ一筋縄ではいかないと言っていました。


 ですから私は痛みと身体への攻撃を浄化します。そうやって、少しでもアスタベーラ老公の思いに応えてきました。ですが、私は一度もアスタベーラ老夫人の言葉を聞いていません。


 二ヶ月に一度は来ていますが、確実に病は進行していっています。

 きっと病を治せない私を恨んでいることでしょう。


「それでは浄華の聖女様」


 神父様に聖女の名を呼ばれて頷いて、浄華の力を使います。


「主よ。我『浄華の聖女』の捧げし祈りは天上に響き渡る。その恩情をかの者に与えたまえ。九原(きゅうげん)に向かいし(たま)よ。器に留まりアランバル(現実世界)をその(まなこ)に映せ。蝕みし毒は毒にあらず、身体が病める苦痛の浄華を願う『エリクフェルーガ』」


 長期間の眠りはその身体から魂が離れていると考えられているので、目を覚ますように促す呪文をここ最近は入れるようにしています。


 室内に光が満たされ、光が収まれば私の浄華は終わりです。

 心做しか老夫人の頬に赤みが差しているように思えます。


「老公。これにて終了です」

「うむ。顔色が随分良くなった。浄華の聖女様。今回も妻のためにご苦労であった。ゆっくりと過ごされるとよい」


 アスタベーラ老公は老夫人から目を離さずにそうおっしゃり、私達は使用人に案内されながら老夫人の寝室を後にしたのでした。




 モフモフ。モフモフ。モフモフ。モフモフ。モフモフ。モフモフ。


「聞いていますか?」


 神父様うるさいです。私はモフモフを愛でているのです。


 ここはサロンの一室になるのですが、ここには私のために集められたモフモフたちがいるのです。

 そこで私は大人しくテーブルの席につき、モフモフたちを遠目で愛でているのです。

 出されたお茶を一口飲んで、それからガン見です。


「夕食はいつも通り部屋でとってください。明日は庭に案内してもらうように、使用人に言いつけています」


 庭! 庭には大型のモフモフたちが私を待っているのです。


『お前、何故に怯えられているんだ? 絶対に、視線を外さないのが悪いんだろう?』


 私の足元でアークの声が聞こえます。

 何を言っているのですか? 怯えているのではなくて、恥ずかしがり屋さんなのですよ。


「それから人払いはしますが、はしゃがない。追いかけ回さない。床に寝転がらない。いいですか?」


 了解です。最初のときにやらかして、神父様にこめかみグリグリ攻撃をされてから、気を付けていますよ。

 私は大きく何度も頷いて、了承の意を示しました。


「はぁ。ブライアンと近衛騎士五人を室内に待機させていますから、何かあれば彼らに言いなさい」


 え? 近衛騎士団長のブライアンを置いていかれるの? 神父様、連れて行ってくれていいのに。


 そして、もう一度念押しをした神父様はこの屋敷の使用人たちと共に、モフモフパラダイスをでていってくれたのでした。



 私はすっと立ち上がって、すすすっとモフモフたちが固まっているところに向かいます。

 すると、元気よくダッシュをするモフモフたち。走る姿が可愛い。

 追いかけて行きたいですが、はしゃいではいけないと言われているので我慢します。


 そして出遅れてしまったのか、プルプルと振るえている目が大きな、わんこちゃん。

 きゃわゆい。


 私は両手をワキワキさせながら、目をうるうるさせているわんこちゃんに近づいていき……


『それが怯えられている原因だろうが!』

「ぐふっ! 大きな肉球も素敵です」


 私は猫パンチならぬ、黒豹パンチをされて床に倒れたのでした。


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