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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第17話 私、関係ないと思います

「我が人生に悔いなし……ぐふっ」

『ちっ! 完全に寝ぼけているな』


 肉球が離れていってしまいました。とても残念です。


 そして聞こえてくる扉が開くような軋む音。それも扉がある方向ではありませんわ。


 ニンジャという者は摩訶不思議な術を使うと聞いていますので、扉がないところに扉を作ることが可能ということですか。

 そして闇組織のニンジャを雇うほど私を殺したいと……なんと恐ろしいことなのでしょう。


 床を歩く音が近づいてきているのがわかります。これは私など、足音を消さずともヤれると思われているのでしょう。


「GaOoooooooo――――!」

「ギャァァァ――――!!」


 そこに響くアークの咆哮、その咆哮に続く野太い悲鳴。


 あ……この大音量。絶対にみんなを起こしてしまいますわ。

 しかし、私の所為ではありませんわよ。


「聖女様!」


 そして部屋の扉をバキッと音を鳴らしながら侵入してくる近衛騎士団長。絶対に扉が破壊されていますわ。


「何者だ! 取り押さえろ!」


 部屋の中に煌々と明かりがともされ、侵入者のニンジャが捕獲されている音が聞こえます。

 あっさり捕まりましたわね。もう少し抵抗するかと思いましたのに。


「浄華の聖女様。ご無事ですか!」


 頭から布団をかぶってやり過ごそうとしているのに、わざわざ布団をめくって私の存在を確認する近衛騎士団長。


 アークが、貴方達より先に侵入者に攻撃しているのだから無事よ。


「声が大きいのよ」

「申し訳ございません。今、ジークフリート様に報告していますので、護衛をしやすい場所への移動をお願いできますでしょうか?」

「は? 眠いのだけど?」

「そこで寝てもらって構いません」

「では、ここでいいのではないのですか?」

「他に侵入口があるかもしれないので、寝室ではなく、部屋の長椅子に移動をお願いできますでしょうか?」


 はぁ、近衛騎士団長と言い合っても結局護衛のためだと言って、私の意見など通りません。

 仕方がないので、身を起こしてベッドから降ります。


「あ……」


 何よ。移動しろって言ったのは近衛騎士団長の方でしょう?


「何か羽織るものを……」

「荷物がかさばるから、そんなものは持ってきていないわよ」


 必要最低限の物しか旅行カバンに詰め込んでいません。荷物が多くなると、ブチブチ言ってくる神父様がいますからね。


『おい、これでも被っておけ』


 アークの声が聞こえたかと思うと、布団の上にあったシーツが頭上から降ってきました。

 これはシーツを被って、走り回って怒られた格好ではないですか。まぁ、いいですか。




 そして寝る前にいた部屋の長椅子で、アークを背もたれのようにして横向きに座る私。


 やはりあの咆哮と悲鳴は、この屋敷の人びとを叩き起こしてしまったらしく、使用人の女性が、お茶を持ってきてくれました。


 それも萎縮してしまっているように、チラチラと周りを見ながら、サイドテーブルに置いてくれます。

 ええ、長椅子を囲うように近衛騎士が立っていますから、何事かと思いますわよね。


 私は慣れていますから、これぐらいでは動じませんが。 


「お待たせしましたね」


 そう言って部屋に入ってくる神父様。その背後には近衛騎士団長もいます。


 お茶を飲んでいる私の向かい側に腰を下ろす神父様は、いつもの笑顔ではなく、なにか神妙な表情を浮かべていました。

 珍しいですわね。


「オリヴィアがいた寝室に侵入してきたのは、ディレイク・テルアスでした」

「誰?」


 名前を言われても誰かわからない。強いて言うのであれば、テルアス商会の人なのだろうなというぐらいです。

 しかし、ニンジャではなかったのですか。

 ニンジャであれば、生ニンジャを一度見たかったのですが。


「次の跡継ぎに指名された者です」

「はぁ……」


 何故に私が、そんな人に殺されないといけないのですか?

 もしかして、依頼された女性の病を完全に治せていないことで、殺意を持たれたのでしょうか?


「寝室を調べてみると、催淫効果を発揮する魔道具が設置されていました。オリヴィアの浄華効果で無効化されていましたが」

「催眠効果ですか」


 寝ている相手を殺すのであれば、騒がれずに効率的でしょう。

 あの甘い匂いは、催眠効果がある匂いだったというわけですね。


「本人に確認したところ、その事実を認めました。どうも既成事実を作りたかったと愚かなことを言っていたので、お仕置きをしていますので、安心してください」

「神父様のお仕置き……恐ろしい」


 足を床について折り曲げて、その上に身体を乗せるという恐ろしい拷問。自分の体重で立てなくなるという拷問。その後に引き起こされる、のたうち回るようなジンジンとくる足の謎の症状。


 あ……私が襲われた理由がわかりました。

 実はあの女性と一緒に、故郷に帰省(・・)したかったのに、自分だけ残ることになってしまったことへの不満の現れだったのでしょう。


 だったら、テルアス商会の本拠地をその故郷という地に移せばいいと思います。


「あの? どの辺りに私が関係するのですか? 私、全く関係ないと思います」

『お前、絶対に一つも理解していないだろう』



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