第12話 魔法って凄い!
「だからなぜ、こんな簡単なことができないんだ」
ケモミミと尻尾が生えたアーク皇子に怒られている私。
何があっても対処できるようにと、長椅子とテーブルを端に避けて、絨毯の上に座っています。
その絨毯を叩きつけるようにバシバシと振り下ろされている黒い尻尾。
「魔力がないのかも?」
そして、私は光魔法の基本の光を発するということができなくて、怒られている。
「そんなわけないだろうが! あふれるほど魔力を持っているヤツがいう言葉じゃない。もう一度だ」
そしてアークの手にはアーク直筆の呪文が書かれています。
光をともすだけの魔法は生活魔法に分類され、魔力が少ない人にも扱える魔法です。
いわゆる誰でも使える魔法と言えます。
「陰暗に炯然たる一光をもたらすファレンガの光よ。我に闇を照らす明かりを《ルエール》」
……シーン……。
何も起きませんわ。
「お前。魔力制御していないだろう」
「はい?」
なんですか? 魔力制御って?
「はぁ〜。魔法を使うのを諦めるか、コツコツと魔力制御をしろ。そのどちらかだ」
「あの? 意味がわからないです。これって初歩の魔法なのよね?」
するとケモミミ皇子が舌打ちをしてきました。
だってそうではないですか。誰でも使えるのに、どうして魔力制御が必要なのでしょう?
「いいか」
そう言ってケモミミ皇子は空中に水を出現させました。丸い球状の水です。そして壁際に行って、花が生けられている花瓶を持上げています。
そして中身を全部床に落とすケモミミ皇子。
「あ〜!」
せっかくシスターたちが、花を選んで花瓶に生けてくれたものなのに!
その花瓶を床に置くケモミミ皇子。
「オリヴィアがやっていることは、こういうことだ」
そう言って、花瓶の上から球体の水を落とす。
あ、そんな風にして落としてしまうと……案の定、水の落下の力で花瓶が倒れて衝撃で割れ、水が床に飛び散ります。
せめて、水差しで入れないと溢れてしまいます。
「わかったか? 魔力制御できないと魔法として変換できないと」
「床が水浸しに!」
これではまるで私が花瓶を倒して割って、床を水浸しにしてしまったみたいになっているではないですか!
これ誰が掃除するのですか? 私ですか? 流石に絨毯の水浸しをどうすることもできません。
……そうです。アークがやったのであれば、アークの所為にすればいいのです。それでシスターたちに片付けをお願いしましょう。
「おい。聞いているのか?」
「聞いていないです」
「お前が、魔法を使いたいと言ったのだろう」
「流石、横暴と噂高いアークジオラルド皇子です。この状況に何も思わないのですか?」
「は? 床ぐらい使用人が片付けるだろう」
「シスターたちは使用人ではありません」
ここは聖女を悪意から守る場所と言えます。王城の一角にあり、普通の貴族が行き来できない場所に建っているのです。
その教会の中にいるシスターが普通の人のわけがありません。
希少な聖魔法が使える人たちになるのです。
聖女ほど強力な力を使えるわけではありませんが、聖魔法を扱えるのです。その身に危険を感じた人が、保護を求めにやってくるのです。
「アーク。ここにいるのなら、こういうことは止めてほしいです。でなければ、他の人に解呪してもらってください」
「はぁ〜こんなもの簡単に元に戻せる。原点回帰」
すると、割れた花瓶が元に戻って、水が意志をもっているかのように、花瓶の中に戻っていき、花も花瓶に戻っていく。そしてアークが出した水はなかったかのように消え去っていた。
「凄い!」
私は思わずその場所まで行って、濡れたはずの絨毯を触ってみる。濡れていない。
「この魔法、凄い!」
「いや、聖女の力の方が凄いだろう。あと、今のままだとオリヴィアは一生使えないがな」
「う……魔力制御って、どうやるのか教えてください」
何故にこんなことになっているわけ?
私は魔力制御を教えて欲しいと言ったのです。
どうしてこんな状況になっているのですかぁぁぁぁ!
「おい、集中しろ」
「無理です」
「無理じゃないだろう」
何故にアークの膝の上に座らされているのですか! それも両手を取られて、この状況てなんなのですか!
「お前が、一人で魔力制御できないからだろうが!」
はい。できませんでした。できなかったのです。
全く持ってアークの言っている意味が理解できなかったのです。
魔力を動かすってなんですか? 血液のように流すって、どうすればいいのですか?
私ができなさすぎて、苛ついたアークに抱えられて、この状況になったのでした。
「くっ……これがモフモフなら天国なのに」
「それ死んでいるだろう。いいから集中しろ」
「うきゃぁぁぁぁ! 変な感覚が!」
「黙って集中しろと言っているだろうが!」
黙るようには言われていないです。
アークの魔力が流れ込んできた私は、盛大に悲鳴を上げてしまったのでした。
やばいです。短編のはずが、終わらないです。
更新が途絶えたら他の作品を書いているので無理だったのだと思ってください。




