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浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜皇子への愛は全くないですわ〜  作者: 白雲八鈴


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第11話 心ここにあらず

 私は先に旅行の準備を先にすることにし、ケモミミ皇子に口づけをすることを避けたのでした。


 そして午後のお茶の時間。シスターたちに夕食まで声をかけないように言って、退出してもらいます。


『聖女は神に祈りとか捧げないのか?』


 私の行動を見て疑問に思ったアークからの言葉です。


 確かに教会に戻ってきてから、特に何もしていません。

 シスターたちは忙しく動いているものの、私は部屋の中で鎮座し、本を読んだり刺繍をしたり、特にこれと言って聖女らしいことはしていません。


「昔は、表にある教会で礼拝を行っていたそうなのだけど、それを狙って聖女に接触しようとする貴族がいたらしく、居住区から出ないなら、好きに過ごしていいとなったのよ」


 だからそこで、神に祈ろうが、本を読もうが、自由ということなのです。


『それは(てい)よく聖女を閉じ込めたと言えないか?』


 はぁ、聖女となってしまえば、それほど選択肢は多くありません。

 特に平民出身の聖女となると、選択などできないと言っていいです。


「別に出てはいけないということではないの。ただ外に行くなら護衛を連れて行くことが条件なだけ。それって貴族の普通でしょ?」


 そう、外出するために事前に許可が必要なだけです。

 令嬢方が集まるお茶会に行くこともありますし、両親に会いたいと言えば、年に数回ぐらいは領地を行き来することができました。


 許可。外出するには許可がいるのです。

 唯一許可が必要がない外出は、汚水の浄化のお勤めです。


 だから許可が必要がない外出のときについでと言わんばかりに、甘いものが食べたいとか、お茶を飲みに行きたいと言うのです。

 これぐらいのワガママは許されてもいいと思うのです。


 汚水の浄化を頑張ったご褒美として、寄り道ぐらい認められてもいいはずです。

 しかし、あの堅物のブライアンは駄目の一点張り。

 もう少し柔軟な考えを持って欲しいものですわ。




 -その一方、少し離れたところにある近衛騎士の詰め所では…-


「次の聖華会の場所と日程が決まったようですよ」


 そう言いながら、とある部屋に入ってくる男性。騎士の隊服をまとい、一通の封筒を手にしている。


 ただ、呼び掛けたにも関わらず、誰も返事はしない。

 その室内に誰もいないわけではない。少年と言っていい者は、入っていた騎士に頭を下げるも、執務机での作業を進めている。

 ということは、用があった者はその少年ではないということだ。


 もう一人、この部屋にはいる。

 ただその人物は部屋に入ってきた者がいるとは気づいていないのか、執務机に向ってペンを持ったまま銅像のように動いていなかった。


 寝ている疑惑が浮かんだが、机の上に置かれた書類を凝視しているため、起きてはいるようだ。いや、目を開けたまま寝ているというのであれば、なんと器用なことだというべきところか。


「団長聞いています? 団長?」


 目を開いたまま固まっている者に声をかける騎士。

 団長ということは、彼らをまとめるべき者のはずだが、心ここにあらずというようにも捉えられる。


「副団長。団長は朝からお戻りになってからこのような感じで……」

「はぁ……今、何時だと思っているのですか?」

「お昼はとっくに過ぎていますね」

「君も団長の侍従なら、頭から水でもぶっかけて正気に戻すぐらいして欲しいものですね」

「嫌ですよ。仮にも王族に粗相などして、首でも飛ばされた日にはたまったものではありませんから」

「仮にもとは、君も大概酷いですがね」


 二人の話からすると、団長という者は朝に戻ってきてからこのような感じであり、昼が過ぎても銅像のように固まったままらしい。


 これだと目を開けて寝ていると言っていいのではないのか。


 しかし、王族に連なるものが騎士たちをまとめる立場というのは、どういうことなのだろうか。


「忌み子の双子だからと、ほとんど表に出て来なかったので、貴族たちからも認識されていないですよね」

「君はいつかその口で粗相を起こしそうですね」

「よく言われますね」


 侍従はシレッと言う。神経が図太いというより、鋼でできているのだろう。本人を目の前にして普通は言うことではない。


「はぁ、それで今日は確か、一週間前のお茶会での失態を謝罪すると言っていませんでした?」

「それ、昨日の話です。それで、浄華の聖女様に謝罪不要と言われて謝罪すらさせてもらえなかったらしいです」

「うっ……」

「はぁ……で、今日は?」

「護衛の任務についた者の話ですと、あの可憐で優しい浄華の聖女様を激怒させていたらしいですね」

「うううううううう……」

「団長が帰りに寄り道を提案したものの、必要ないと断られたとか」


 ガンっという音が響き、机の天板に頭を打ち付けている団長。どうやら目を開けたまま寝ていたわけではなかったようだ。


「はぁ……だから以前から言っていたではないですか、基本的に聖女様方に自由はないのですから、少しの寄り道ぐらい許してもいいのではと」

「浄華の聖女様のわがままなんて可愛らしいものではないですか。あの傲慢な祝福の聖女様に比べて」

「君はいつか本当に、口の所為で首と胴が離れていそうですね」


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