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咲うニューロンの真景  作者: 螺ー油
2/2

第1昇 見学行く? それとも待つ?

「あ、ごめん、消しゴム椅子の下にいったかも……」


「りょーかい、居眠りか?」


「そんなとこ」


「それともエロいこと考えてたか?」


「居眠りだってば!」


 ここは公立橋美瑤中学校、すやすや未遂の俺の名は隻深這絶、ついでにボケてんのは余墨明琉。

 まだ入学ホヤホヤだと思ってたクラス連中も1ヶ月が経ち、それぞれの派閥が固まりつつあった。

 今は5限目、世界史の時間だ。


「はい、これ」


「ありがと」


 ノールックで机に消しゴムが置かれた。横顔は板書を捉え、静かにシャー芯をノートに走らせている。

 塩顔イケメンとでもいうのだろうか、目元は切れ長、肌は色白で、どこか野性味のある顔立ちから密かに女子達の好意の的になっている。


「なに? そんなに見つめて…………あ、ごめんなさい」


「いや、好意持たれた前提で話進めんな。てか勝手に振るな」


「申し訳ないけど本命は2人までって決めてるからさ。ドンマイ」


「ドンマイうぜぇ。だからお前なんか好きじゃねーよ! え? 今、2人って言った?! ゲスじゃねーか」


「おめーの籍ねえから」


「重い方の漢字でアレンジすんな、あと狙ってねえから」


 コイツ、見た目のせいで近寄りがたくはあるが、かなりボケる。

 本人も自らの風貌にコンプレックスを抱えて、親しみやすいキャラを演じているのかもしれない。

 証拠に今まともに話せるクラスメイトは俺1人だ。


「そういえば、沈没くん。あ、セッキー、あの見学の件どうする?」


「ちょい待て、今縁起でもない呼び間違えしたよな?」


「だって名字の『隻』は船数える時の単位だよね? そこに『深』が合体するとなると、ザッブーン!! みたいな意味合いでイコールよ」


「オノマトペでなんでもかんでもコミカルに言えると思うなよ」


 俺の呼び方は、現在の関係値を築くまでに『セッキー』で固まりつつあるから、それで良しとして。

 見学とは、昨日、LHRの時間に担任から説明を受けたもので、内容はワクチン製造。

 クラスごとに、見学投票を行い、すでにいき場所は決まっている。

 1組はパン、2組はゲームセンター、3組は乳製品、そして我ら4組はワクチン製造だ。

 別にどこかの業種を馬鹿にしたりするつもりはないが、うちの組だけ緊張感エグくない?!

 ただ、見学に行きたくない生徒のための救済措置もあり、教室待機も可能(方程式と不等式、現代仮名遣い直しプリントが各5枚、漏れなくついてくる!!)

 まあもう、こうなったら消去法で…………。


「いくよ」


「だよなー課題めんどいし」


 それに行く理由もあるといえばある。

 春の顔を覗かせる風の出所に顔を向けると、窓辺の1番後ろの席、ラビットスタイルのミディアムヘアを靡かせる女子が1人。

 彼女の名は、秘埜溟沙。

 ピンクブラウンの髪が揺れる様は、登校時に見る色鮮やかな桜みたいだった。

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