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#18「輝きあれ、再生の光を【1】」

「復誕祭も祝わずに汚れ仕事とはご苦労なこった。なァ、ベリアス」

 魔族の青年ラゼク=ヴォルスは教会の刺客を見据えたまま、傍らのベリアスに笑いかけた。

「復誕祭の意図を思えば間違っているとは言い難いが……、俺一人で充分だ」

 ベリアスはにべもなく答えながら、勇者を迎え討つべく剣を抜いた。

 クラヴィスの身体能力は人間離れしていた。《聖戦呪令》を受けた者は、絶対服従と引き替えに超越的な力を得る。クラヴィスはルミナスブレイドの切っ先を石の床に叩きつけた。聖なる魔力がほとばしり、ベリアスに従う亡者の群れを光輝く鎖で縛った。それを見届ける前にクラヴィスは床を蹴り、前に跳ぶ。次の瞬間、彼は標的との距離を詰め、聖なる刃でベリアスに斬りつけていた。ベリアスの右腕がぼとりと落ちる。その切り口からは赤黒い血がどろりと流れるだけで、生きている人間に現れるはずの生体反応は見られない。握り締められたままの剣も、腕と共に床を転がる。

「異端者が! 神の裁きを受けよ!」

 クラヴィスは勝利を確信し、ベリアスにとどめを刺そうとした。しかしベリアスは顔色一つ変えず、クラヴィスの猛攻をかわしながら黒い剣を新たに召還した。剣の纏う闇の魔力がクラヴィスの動きを鈍らせる。ベリアスは左手で剣を取り、クラヴィスに斬りつけた。闇の刃がクラヴィスの甲冑を切り裂き、胴を割いた。

 クラヴィスが吐血する。しかし彼が膝をつくことはなかった。《聖戦呪令》がクラヴィスの信仰心に応え、彼に無尽蔵の力を与えていた。いや、呪いと共鳴した彼の肉体を《聖戦呪令》が乗っ取ったというべきか。ベリアスの闇の刃で何度その身を切り刻まれようと、クラヴィスは決して攻撃をやめようとはしなかった。通常の人間ならとっくに死んでいるだろう。その剣術はなまくらを極め、もはや何の脅威にもならない。

「死ぬことすら許されないのか。哀れなものだな」

 ベリアスは何の感慨も込めず、侮蔑も憐憫もなくそう言うと、闇の楔を召還した。一つ、また一つ、宙に現れた黒い楔がクラヴィスに次々と突き刺さり、満身創痍の勇者を異形の祭壇に磔にする。ルミナスブレイドが床に落ちた。ベリアスはそちらには目もくれず、祭壇に向かって歩く。周囲の空間が大きく歪み、近づく者を拒もうとするが、彼に宿った《深淵の欠片》が歪なる力を打ち消した。

「俺がすべて焼き尽くしてやろう」

 ベリアスは磔の勇者に手をかざす。深淵の炎がクラヴィスを包み、たちまちのうちに灰に変えた。床に横たわるルミナスブレイドが音もなくかき消える。ベリアスは祭壇に近づき、仮面に手を伸ばそうとした。

「……悪いな、ベリアス。ここでおさらばだ」

 背後でラゼクの声がした。次の瞬間、ベリアスの胸は槍で貫かれていた。ラゼクが裏切り、魔力で形成した槍をベリアスに向けて放ったのだ。それを理解する前に、新たな刃の切っ先がベリアスの胸から生える。ラゼクが間近で囁いた。

「あばよ、勇者ベリアス」

 ラゼクは剣を捻り、ベリアスから引き抜いた。

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