第7話 闇
何時まで経っても現れない白馬に乗った王子様…。そんな世界に飽きた。何も変わらない退屈なこの世界に飽きた。そう思っていた主人公雷葉 聖〔らいは ひじり〕に突如として起きた変化。それは、彼女が願った新たなる人生の幕開けだった。
異世界より帰還しシャルを解放した僕、聖は執事の孔明さんからの連絡を受け南の人里離れた場所へと向かい執事の孔明さんの協力のもと謎の生命体を撃破したのだが...
このことをきっかけにある人物の逆鱗に触れてしまう事となった。
それは、例の事件から二日後の事だった。
平穏な日々が続いていたこのディオサプラ王国に再び暗雲が立ち込め始めていた。
きっかけは、ネオフェイ家に届いた一通の手紙から始まった。
聖は、シャルの秘書としての職務をこなして昼休憩の時間に入り裏庭のベンチで午後の職務に向けての英気を養っていた時だった。
「聖様。ココにおられましたか…。先程、ある一通の手紙が届いたのですが...宛名や住所が記入されていなくて誰から届いたのかわからないのでお時間がありましたお調べになって欲しいのですが…。」
「承知致しました。孔明さん。後程調べますので執務室の僕のデスクの上に置いて貰ってもいいですか?」
「では、宜しくお願いします。聖さま。」
こうして、誰から届いたのかわからない出どころ不明の手紙の調査をすることになったのだが…。
まさか...あんな結果になるとはこの時の聖は知る由もなかった。
昼休憩も終わり午後からの職務を始める前に孔明さんが持ってきてくれた例の手紙を見てみることに…。
「なんだこれは?怪文章?悪戯?」
聖は思わず声に出してしまった。
そして、手紙の内容はこうだ。
御機嫌よう
ディオサプラ王国ネオフェイ家の皆様
貴方たちネオフェイ家の命運は我が手中にある。
下手な真似をすれば、例え王であろうと命の保証はないと思え。
こんな内容が書かれていたのだ。
聖は、すぐにシャルと孔明さんを執務室に呼び事の経緯を話すことに…。
二人は、物凄い勢いで執務室へとやって来た。
「聖。なんか変な手紙が届いたんだって?私にも見せて」
そう言って届いた手紙を読むシャル。
すると、シャルは真剣な顔で文章を読み始めて僕にこう言った。
「聖。コレ多分。アイツだわ。ほら、タキシードに身を包んだ仮面をつけた人物よ。私を監禁していたアイツよ。」
そう言っているところに孔明さんが執務室へとやって来た。
「お嬢様方の声が廊下まで響いておりましたぞ。それより...お嬢様を監禁なさった不届き者がこの手紙を書いた人物だとお分かりになったのでしょうか?」
孔明さんが開口一番にシャルに問うが…。
シャルは少し悩んだのち話を始めた。
「そうね。これは、孔明あなたには話してなかったわね。実は、私が捕まって監禁されたときに薬で眠らされて意識が遠のく少し前にアイツが言ったんだよね。‘‘この、ディオサプラ王国を滅ぼす‘‘って。多分、アイツならやりかねないでしょうね。仮面で顔が隠れていたから…表情は読み取れなかったし何考えているか分からないような奴だったから。。。」
シャルが、眠らせれ意識が遠のく寸前で聞こえたこの、ディオサプラ王国を滅ぼす。と言う言葉…。
どういった理由で奴がそう発言したかという意図は掴めはしなったが...
シャルを監禁していたとなると余程の理由があったと予想は着いた。
だが、仮面を身に着けていた以上素顔と表情はわからないとのことであった為誰が奴の正体なのかはこの時点では推測できないでいた。
そんな時、孔明さんにある連絡が届く。
それは、奴が人里離れたあの場所に現れたとの報告が入ったのだ。
連絡を受けた孔明さんは、聖に一言‘‘奴が現れましたので、例の場所へと言ってみましょう。‘‘と言い聖と孔明さんの二人で例の場所へと向かう事になった。
勿論、シャルは従者さんたちが見守るという事となり僕は安心して向かうことができた。
―人里離れた場所ー
聖と孔明さんは急ぎで報告にあった場所に着いたのだが...
着いた当初は誰の気配も感じなく一足遅かったかと思った矢先小さな気配がしたかと思うと孔明さんが吹き飛ばされてしまい聖は驚きを隠せないでいると突然声が聞こえてきた。
「待っていた。お前たちが来るのをな。小生の名は…アスフォデル・アルスラーン。以後お見知りおきを…。そして、早速だがお前たちには消えてもらおうか」
奴は名をアスフォデルと名乗ったのだが、いきなり聖と孔明さんに消えてもらおうかと言い放つ。
それに対して反論する孔明さん。
「消えてもらう?そういう訳にはいかないな。生憎こちらも消されるために此処までノコノコとやって来たわけじゃない。ディオサプラ王国を滅ぼすと言った発言をしているのだからこのままただでは返すわけにはいかない。お前の口から理由を聞くまではな!!!」
そう言うと孔明さんは自身の能力を解放する。
だが、やつは至って冷静でこちらの様子をうかがって聖に対してこう言い放った。
「小娘よ。お前は本気で親愛なる人を護れるのか?」
奴はそう言いきると聖の目の前に高速移動した。
その瞬間、聖の身体に衝撃が走ったかと思うと気が付けば、背中を背後にある岩にぶつけていた。
本当に一瞬の出来事に驚いていると孔明さんが聖の傍に駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?聖さま。お怪我は?」
「大丈夫よ。この程度…。」
だが孔明さんは、聖の心配をして声を掛けてくれていたのだが…。
瞳の中は完全に怒りで満ちていたのだ。
その時、聖は思ってしまった。
孔明さんを怒らせてはいけないという事を…普段怒りの感情を見せない孔明さんがここまで感情的になるとは想像すらもつかなかった。
だからこそ、聖の恐怖心が痛いと思った気持ちを打ち消してしまっていたのだ。
それくらいに孔明さんの怒りのボルテージが高いのだとわかった。
そして、孔明さんは奴と聖の間に入って聖を護るような形で会話を進めていった。
「これ以上...私の顔なじみに手を出すようなら、容赦はしない。これ以上傷を付けさせる様な事をするのであるならば私、孔明が全身全霊でお相手いたす。」
そう言い放つと、孔明さんの纏う気配に怒りの感情が混じり始めたのを感じた。
果たしてこの一触即発の緊張状態から新たな道筋はうまれるのであろうか…。
聖〔ひじり〕は、シャルスタ王女の秘書を務めるのと同時に彼女の警護もすることになるのだが、聖とシャルスタ王女に降りかかる数々の試練を乗り越えて行けるのであろうか…。