第3話 ついに始まる冒険と自分との戦い。
何時まで経っても現れない白馬に乗った王子様…。そんな世界に飽きた。何も変わらない退屈なこの世界に飽きた。そう思っていた主人公雷葉 聖〔らいは ひじり〕に突如として起きた変化。それは、彼女が願った新たなる人生の幕開けだった。
僕、聖に秘められし謎の力が目を出し始めた。
執事さんとの戦い?で突如として目覚めた?
目覚めたというよりかは、窮地に陥ったことによって偶然発動しただけなのかはまだわからない。
そんな出来事から二日後...
僕はシャルに自室に来るようにと命じられた。
どんな用なんだろうかと考えながらも僕はシャルの部屋へと向かったが…
そこで思いもよらないことを話されるとはこの時の僕は知る由もなかった。
‘‘コンコン‘‘とシャルの部屋の扉をノックすると、中から「はーい。」と返事が返って来てから‘‘ガチャリ‘‘と部屋の扉が開くとそこには...
地雷系のファッションに身を包んだシャルが立っていた。
僕は、一瞬ぽかんとなったが…
すぐに頭を切り替えてシャルに自室に呼び出した理由を尋ねる。
「シャル?僕を呼び出した用は何かな?」
だが、シャルは僕の反応に少し不服なのか少し不機嫌そうに
「理由は教えるけど...それより先に感想を聞かせてよ。」
僕は少し思考停止してしまうが…。
シャルが僕の目の前で手を振ったりしたことでようやくふと我に返ることができてすぐに返答をした。
「あ、ごめんね。シャル。とても似合ってるよその服。」
その言葉を聞くや否や目を輝かせながら、話始めるシャル。
「ありがとう♡聖。理由は聖に少し冒険をしてもらいたいなと思ったからよ。例の力を自由自在に使える様になって欲しいから…。」
まさかの答えだった。
冒険してほしいというシャルの言葉に驚きを隠せなかった。
「ぼ、冒険?でも、どうやってやるの?」
その時の聖は素で返してしまったが、シャルはそんな反応にも丁寧に答えた。
「そうね。転送装置を使ってファンシーな世界を冒険してきてもらいたいかな?あ、勿論仮想世界みたいなやつだから…。経験を積むだけで大丈夫。そっちの世界で得たモノは全て知識みたいな感じで吸収できるから...聖には、今以上に強くなって欲しいの」
だが、僕は転送装置と聞いてどういうものなのかをシャルに尋ねると、嬉しそうに、にこっと笑って
「転送装置ね。この城の地下にあるわ。ついてきて。」
そう言って僕の手を握ると僕とシャルは、ネオフェイ家の城の地下へと向かうのであった。
―ネオフェイ家 城の地下空間―
どれだけの階段を駆け下りたか…。
少し息が切れきれの聖とシャル。
深呼吸をして息を整えてから...
シャルが言う転送装置の前まで来た。
「これよ。その転送装置という代物はね。まぁ実際に使ったものはいないのだけれど、私のお爺様が子供の頃からあるモノみたい。」
シャルはそう説明しているが...
‘‘転送装置‘‘その響きに心を打たれてしまう聖。誰もが...いや、一部の人間はだけは喉から手が出るほど欲しいモノに違いない。
どんな世界にすらもワープができてしまう優れものだからこそ僕みたいに現実世界に飽きてしまった人からすると...
夢の様な装置。
それだけ欲望が渦巻きそうな装置が目の前にあるのだから、心に湧くこのなんとも言えない高ぶりと言っていいのかわからない。
だが、好奇心が僕を突き動かした。
「シャル。僕今は、何も能力や魔法が使えないけど...この装置を使って着いた世界で様々なことを経験すれば使える様になるはずだと思って…。僕は、行ってくるよ。使った先に何が待っているかはわからないけれどそれが、僕を強くしてくれると信じてね。」
僕のその言葉を聞いたシャルは、少し泣きそうになりながらも
「気をつけてね聖。」
そう言って僕を送り出してくれた。
転送装置の上に乗りシャルに向かって手を振り...スッと目を閉じた。
―??? ???―
次に僕が目を開けると何処かわからない草原のど真ん中に立っていた。
周りには、建物はおろか人の存在すらも感じられない程に静かでむしろその雰囲気が余計に不気味に感じた。
すると、聖が身に着けている金のロザリオから僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
「聞こえてる?聖?私よ。シャル。今貴女が居るそこは、転送先の仮想空間よ。とりあえず少し歩き待ってみて。そうしたら何か変化が起きるかもしれないから…。後貴女は私の姿を念じればどうにか通話は可能になるからそれだけは覚えていてよ。」と言って連絡?が途絶えてしまう。
だが、僕は不安感を感じることはなかった。
それは...シャルがすぐそばに居るような感覚があったからこその安心感からくるものだ。
そのことを心に思いながら僕は、歩みを進めた。
少し時間が経ってから理解した。ここには、人間は僕を除いて一人もいない。
いるのは...魔物だけだ。
でも、僕は負ける訳にはいかない。
シャルを護る為そして...僕自身の弱さに勝つためにもここで引き下がるわけにはいかないと心に誓った。
それから少し周りを探索しようと歩き出すと突然矢のようなものが飛んできたが
「危ない…。」
心の中で呟き矢のようなものをよけて周りに目をやると、謎の生物に囲まれてしまっていた。
謎の生物たちは、まるで獲物を狩るような目つきで僕の事を凝視してくるが僕は、冷静になり物事を考えることができていた。
「こいつ等を倒さねば、先には進めない。試すしかないわね。僕自身の力を…。」
そう心の中で呟いてから臨戦態勢に入る。
意識を戦いに集中させて、己の力を信じることでどんな困難だって乗り越えられるんだ。
そう誓いながら敵陣に特攻するが...
あまりにも、敵数の多さに圧倒されてしまい一体一体相手にするので精一杯だった。
「一体どれだけの数いるわけ?はぁはぁ…。キリがないわ。」
そう呟いた時だった。
一体の謎の生物の奇襲を受けてしまうが・・・
「あれ?今攻撃受けた?気のせいかな?」
謎に攻撃を受けても掠り傷はおろかダメージを一切受けてないという事に気が付く。
僕は、嬉しくなった。
今の僕に攻撃をしてダメージを与えられるモノは、今のところ執事さんしか居ない。
それがどれだけ嬉しかったか...
気が付けば、聖は謎の生物に対して無双していた。
それはもうダメージを一切喰らわないという事は我武者羅に敵陣に突っ込んでも問題ない。
自身の新たな力を発見できるかもしれないという探求心が聖をとにかく突き動かした。
その結果...聖は、自身に秘められた力の正体に後一歩と言うところまではいけたのだが…。
その先の一筋の光を捉えられなく戦いに終止符が打たれてしまった。
だが、その結果に少し満足していた僕であったが...
この結果が後に聖を更に成長させてくれるとは、この時の聖は思わなかった。
そして、無事に戦いを終えた聖であったが、聖の居る世界にある変化が起きていたのだが...
そのことに気が付くのは少し後の事であった…。
聖〔ひじり〕は、シャルスタ王女の秘書を務めるのと同時に彼女の警護もすることになるのだが、聖とシャルスタ王女に降りかかる数々の試練を乗り越えて行けるのであろうか…。