第1話 Go to The AnotherWorld
何時まで経っても現れない白馬に乗った王子様…。
そんな世界に飽きた。
何も変わらない退屈なこの世界に飽きた。
そう思っていた主人公雷葉 聖〔らいは ひじり〕に突如として起きた変化。
それは、彼女が願った新たなる人生の幕開けだった。
もうこの世界には飽きたよ。
そう思った僕が居た。
何処か遠くにまだ誰も見たことのない世界があるのだろうか?
そんな不意に出た疑問が、僕を奮い立たせる。
あ、そうだ。‘‘異世界‘‘にでも行ってみたい。
だけど、異世界ってどんなところなんだろうか?
魑魅魍魎が蔓延る混沌とした世界なんだろうか?
それとも天国や極楽浄土の様な楽園的場所なんだろうか?
はたまた、‘‘無‘‘が限りなく続いていて何もなく只々つまらない世界なんだろうか?
そんな思考を駆け巡らせていた今日この頃。
僕は決意した。
明日...いや今にでも行ってみたい異世界に…。
そんなことを考えながら眠りについた。
僕は、とてもリアルな夢を見たんだ。
それは、どこかもわからない世界に居て冒険する夢であった。
じりりりり...いつもの目覚まし時計の音に起こされた僕は、眠い目を擦りながら起き上がり外を見た。
「えっ?」
驚きのあまりもう一度カーテンを閉めて...
深呼吸をしてから再び、カーテンを開ける僕。
「此処は何処?」
そんな言葉が漏れる。
僕は、雷葉 聖。
今生きている世界に飽きてしまい異世界に行ってみたなと日頃から思っていた高校二年生。
そして...僕というのは一人称。
でも・・・そんな僕は、こう見えても女子高生。
普段は、勉強する為だけに学校へ通い…
家に帰っても課題というモノに追われていた。
だけど、そんな退屈な世界に飽きを感じて違う世界で生きて行ってみたい。
そう思っていた矢先...
ついに僕は来てしまった。
“”異世界“”という場所に…。
驚きはしたが少しずつ‘‘嬉しい‘‘という感情が湧き上がってきた。
現実世界では、いつも恋人探しをしていたり良い青春を送っていけたらなとずっと考えるだけで...
行動には一切移さないという奥手ぶりを見せていた。
だけど、念願の異世界に来たのだから話は変わる。
この世界だったら...もしかして…。
彼氏ができるかもしれない。
そして何より青春を味わえるかもしれないと…。
謎の期待感に胸を膨らませていた。
まぁ...実際のバストサイズもそこまででもないんだけどね…。
なんて冗談を考えられるほど余裕がないことが分かっていた。
それは...それは・・・
この世界の言語はどこの国の言葉?
そして生活を送るうえで必要になってくる通貨は?
そんな不安感が急に僕の心を襲う。
だが...不意にあるものが視界に入った。
それは、ある一枚の紙であった…。
しかも、その紙にはこう書かれていた。
【急募!!ネオフェイ家の姫の秘書。応募資格 経歴不問。※魔力や能力を扱える方は優遇。面接会場ネオフェイ城内】
この内容を見たときふと思った。
この世界の言語は・・・日本語だ。
たったそれだけで謎の安心感に包まれた。
「良かった。言語が日本語で…。」
ボソッとそんな言葉が出たが...不意に思った。
この秘書募集…。
経歴不問って書かれているけど僕でも大丈夫なんだろうか?
そんなことを考えながら、家を後にして聖は面接会場であるネオフェイ家の城へ歩みを進めた。
目的地の城までは、そこまで遠くはない距離だが…。
だが...見るものが全て新鮮に感じた。
風景は、日本とヨーロッパを混ぜたかの様な風景で遠くに見せる城は洋風の城だという事が見て取れた。
そして、すれ違う人々は、スマホではなく空間に触れて地図やアプリ等を開いているという事に気が付いた。
個人個人で固有のデバイスがあるのだとわかってから、僕は自身のステータス等を確認した。
【雷葉 聖 性別女の子 職業 学生 】
「まだこれしか確認できないんだ。けどまぁいいか。」
なんて独り言を言っていると、気が付けば面接会場であるネオフェイ家の城についていた。
見ると沢山の人が並んでいるのが見えた。
恐らく皆が応募の紙を見たんだと察していると城の中から慌てて出てくる人が居た。
それを見た何人かの人は城に背を向けてどこかへと去っていくのが見えた。
そうして一人また一人と人が入っては出でいくのを繰り返してついに...
僕の番が回ってきた。
少し緊張しながらも城へ入り応接間へ向かう。
‘‘コンコン‘‘とドアをノックしてから
「失礼します。応募の紙を見てきたのですが...」
そう言い切るとネオフェイ家の姫が口を開いた。
「そちらへおかけください。」
僕は言われるがまま席へとかけた。
するとネオフェイ家の姫は驚きの一言を僕に向けて言った。
「おめでとうございます。貴女は合格です。」
いきなりだった。
ネオフェイ家の姫が口を開いたかと思った矢先‘‘貴女は合格です。‘‘というものだから僕は驚きながらも返答した。
「ご、合格...ですか?え?本当ですか?」
慌てていたのが伝わったのかネオフェイ家の姫が少し考えたのちに話しかけてくる。
「本当です。後、わたくしの事覚えてはいませんか?聖?」
そう聞かれた僕は驚いた。
それもそのはず、ネオフェイ家の姫...
シャルスタ王女とは、小さき頃同じ幼稚園に通っていた幼馴染だったと思い出したからである。
幼稚園を卒園してから会わなくなっていた僕とシャルスタ王女...
だが...今こうして幼稚園生以来の再会となったのだが…。
でも、何故この世界いるのかを不思議に思っている僕が居た。
そこで僕は思い切ってシャルスタ王女に事の経緯を尋ねてみた。
「ひとついいですか?シャルスタ王女…。何故貴女は、この世界にいるのですか?僕と同じ世界で暮らしてきた貴女がどのような経緯でこの世界に来たのですか?」
シャルスタ王女は真剣な顔つきになり答え始める。
「そうね。簡単に話すとわたくしはこの世界の住人であったけど...とある事象に巻き込まれてしまい聖の暮らしている世界にたどり着いたわけなの。だから、聖…貴女と一緒に居た頃はわたくしにとって最高な時であって聖から見たら異世界の住人であったの。」
シャルスタ王女は、とある事象に巻き込まれた影響で聖の暮らしていた世界に飛ばされてしまっていた。
そこで小さき頃の聖と出会い聖が幼稚園生の時だけ一緒に過ごしたという経緯だとわかった...
だが...ひとつだけ謎が残った…。
それは、シャルスタ王女が巻きこまれたという事象についてだ。
そのことが気になった…。
僕...基。聖はシャルスタ王女にとある事象について更に聞いてみることに...
「シャルスタ王女…いえ…。シャルが巻きこまれた事象について教えてもらえる?」
久々の再会ではあったが、あの頃の呼び名で問いかけると今まで真剣な表情であったシャルスタ王女はあの頃見せていた優しい笑顔で答え始める。
「久々ね。その呼び方。まぁ聖だけはその呼び方でいいわ...あ、巻きこまれた事象についてでしょ?アレは、今になってもわからないの。突如として、起きたことであったから余計に理解が追い付いていないとでも言うべきかしら?」
まさかの返答に聖はかたまってしまった。
それ以上にこの先どうすればいいかという思考が脳内を巡る。
衣食住はどうすればいい?人の営みはどうすればいい?といった感じに脳内はオーバーヒート状態に陥っていたが…。
シャルは、僕の肩をポンと叩いてこう言った。
「ねえ?聖。もしかして、この先どうすればいいかって考えてたりする?それなら、心配いらないわよ。だってここに住めばいいのだから...そして、またあの頃の様に聖と一緒に居たいし…。」
シャルのその言葉に心に秘めていた何かがパンと弾けてその直後僕は、泣いていた。
悲しいとかの感情じゃない。
喜びに対しての嬉し涙だった。
その様子を見てシャルは僕を抱きしめた
。ホッとした僕は更に涙が溢れて止まらなかった…。
その間にもシャルは、僕を抱きしめながら住み込みで働くメイドたちや執事さんに色々と指示を出していた。
それはもう...具体的で誰が聞いても内容が分かるほどの簡潔さであった。
僕は、一体どれだけの間泣いていたのであろうか?
泣き止んで顔をあげると優しい笑顔のシャルの顔があった。
目があった瞬間シャルは僕にこう問いかけた。
「ほんと、聖ってば泣き虫よね。それだけは、あの頃から変わっていないわね。もうディナーの時間になるから食堂へ行くわよ…聖!」
シャルにそう言われると僕はシャルと手を繋ぎ城の中にある食堂へ向かうのであった。
僕はこの時はっきりと分かった。
僕はシャルの秘書になったけど、シャルを全力で守らなきゃ・・・
そして、異世界で新たに始まる僕の第二の人生を全身全霊で送ろう…。
そう心に誓うのであった...。
聖〔ひじり〕は、シャルスタ王女の秘書を務めるのと同時に彼女の警護もすることになるのだが、聖とシャルスタ王女に降りかかる数々の試練を乗り越えて行けるのであろうか…。