商品開発①
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本日二話目の更新です。
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身体が弱く、あまり公式の場に現れなかったフレデリック王太子殿下が、健康を取り戻して婚約者であるソフィアお姉様をデートに連れ回しているらしい――。そんな噂を聞いたのは、イザベラ様のご厚意でエリー様と出会って三ヵ月後のことだった。
この三ヵ月の間、誰よりもエリー様とお会いして、お話しさせてもらっているのは私だと自負できるくらい、彼女とは頻繁に顔を合わせていた。
エリー様は将来を見据えてたくさんの会社や不動産に投資していて、自由にできる個人の資産が潤沢にあるそうで……。おそらく貴族のお嬢様なのに、個人資産も豊富にお持ちだなんて尊敬しかできない。そんなすごいお方に相手をしてもらいながら、未だにファミリーネームを聞き出せずにいる私……どんまい。
とにかく、エリー様は豊富にお待ちのその個人資産を使って私の「美容部員になりたい」という夢を後押ししてくれるそうだ。なんでも、彼女の基準で「お金になりそう」と判断できたようで――。
ありがたいことに、エリー様は私の化粧の腕と知識を高く評価してくれたのだ。
私が前世の記憶を頼りに「こういうものがあると幅が広がる」というような話を雑談混じりにしていたのだけれど、そのアイディアが斬新だったようで「売れる」と判断したそうなのだ。
イザベラ様も私がエリー様とお会いするとき、最初のほうは同席してくれていて、「そういう嗅覚は優れているから、この子が売れると判断したらきっと売れるわよ」と太鼓判を押してくれたので、少し安心した。
エリー様は私が案を出す度に驚きとともに「すごい」「天才」と褒めてくださり、ただ前世にあったものをこちらでも使いたいと思っただけだけの私は、少し罪悪感をおぼえるほどだった。
「やっぱり、まずは化粧下地とファンデーションかなぁ。アイライナーやアイシャドウのバリエーションも増やしていきたいところだけど、優先順位をつけるとしたら、まずはベースが先かな。開発に時間もかかりそうだから、並行してできると一番いいかなと思う」
三ヵ月もみっちり話していると、自然と敬語も抜けてしまった。そうしても違和感を抱かないほど二人の距離は縮まり、気安い友人のような仲なっていた。
「ふうん。じゃあ並行してできるようにしてみるけど……化粧下地ってどういうものなの?」
「そうねぇ。そのあとに塗るファンデーションが均一につくようにお肌の表面をコーティングしてくれるってイメージかなぁ?」
「コーティング」
「うん。一人ひとり肌のコンディションは異なるでしょう? たとえば、エリー様みたいにもともとお肌のキメが整っている人は、下地がなくても綺麗にファンデーションがつくとは思うけど、つきともちがよくなる効果がプラスされるわ」
「ふーん」
「だから……本来なら下地で補正する必要がないくらい美肌に整えるのが先決なんだけどね」
「基礎化粧品ってやつね。化粧水とか乳液とかの。そっちはまだ研究が進んでいなくて……ごめん」
――エリー様が叱られた子供のようにしゅんとしている……! 尊い……!
エリー様は私が提案することをなんでも叶えてくれる魔法使いみたいな方だけれど、こういう一面を見ると年相応に見えて安心する。
「いいえ。謝ることなんてないわ。本当に、私が無茶ばかり言ってることは理解してるし、感謝しかしてないから! いずれ必ず開発者の方に直接お礼を言わせてね?」
「うん……。とりあえず伝えておくね」
今度は照れているらしいエリー様のかわいらしい表情を目に焼き付けながら「ありがとう。よろしくね」と伝える。
読んでいただきありがとうございます!
少し長くなったので二話に分けます。
が、キリが悪いので、続きは本日中に更新します。
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