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side ローザス

 ついに、この時が来たのね。



 王城のダンスホールでは学園の卒業ダンスパーティーが開かれている。


 今日、ここで私、ローザス・アインベルトは婚約者で第一王子であるリエト・ユーグラシアより婚約を破棄される。

 おそらくヒロインであるミモザが捏造したいじめの証拠によって。



 でも、大丈夫。今日のために今までちゃんと生きてきたんだから。

 私は大きく深呼吸をしてダンスホールを進んでいく。



 前世ではしがないOLをしていたけど、多分過労死してしまったんだと思う。

 気がつけば前世で暇つぶしにプレイしていた乙女ゲームの世界にに転生していたのでびっくりだ。

 ヒロインががどのルートを選んでも、断罪の上、悪くて死刑、良くて身分剥奪の上国外追放エンドの悪役令嬢に転生していたのだから気づいた時は絶望した。



 本来ならば婚約者であるリエトがエスコートをするはずなんだけど、ピンク髪のヒロインにうつつを抜かしてるバカ王子はエスコートをシナリオ通りすっぽかした。


 そのシナリオではエスコートを引き受けてくれる相手もいなくて、バカ王子に未練のある私は1人で会場に入るストーリーなんだけど、バカ王子の代わりに今隣りでエスコートするのは1つ年下の弟のアベルだ。


 本来のシナリオではアベルもまた、自由奔放なヒロインに魅了され、小さい頃からいじめられた姉のローザスのことは毛嫌いしているんだけど、小さい頃から可愛がってきた弟は今では私のことが大好きな立派なシスコンである。

 てか銀の髪に赤い目をしたぷよぷよほっぺのかわいい幼子をいじめる理由がわからない。

 いまでもやや童顔でかわいいけど、4歳のころのアベルはマジ天使だった。


 逆に私の婚約者であるバカ王子が豹変するきっかけとなったヒロインのことは毛嫌いしていて、すでにシナリオからはずれている。

 きっと、このあとの断罪劇でもきっとアベルは私を守ってくれるはず。




 ちょっと遠くを見ると一つ飛び抜けた黒髪長身のイケメンがいる。

 私の幼馴染であり、子爵家出身で騎士のシュタインである。


 シュタインは父である公爵が事業の失敗で傾いた子爵家にお金を貸す代わりに私の遊び相手兼護衛として公爵家に預けられた。

 まあ、借金のカタである。

 後継を預かれば子爵家は必死になってお金を返すだろうし、小さい頃から見目の良く文武両道で知られたシュタインであればどうとでも使って借金の元は取れると考えたのだろう。

 我が父ながらあくどいことをする。


 シナリオではローザスはシュタインを小さい頃から奴隷のように扱い、彼を使ってイジメや嫌がらせを指示していた。もちろん私はそんなことはしていない。

 シナリオではそれまでのうらみつらみがあったシュタインはバカ王子の断罪に加わるが、私は良い関係を築いてきたので大丈夫だろう。

 シュタインがこちらを見たので小さく手を振ると、目元を緩めて返してきた。うん、大丈夫だ。きっと。



 大丈夫、今日の断罪劇を乗り切って処刑エンドを回避して幸せに生きるんだ。

 そのために今まで悪役令嬢らしからぬ清く正しい生き方をして来たんだから。



 急にまわりがざわついたかと思ったらモーゼの海割りみたいに人が左右に逃げた。

 正面には金髪碧眼の見た目だけは良いバカ王子と、目に痛いピンクの髪の少女がバカ王子の左側に半身を隠すように心細げな佇まいで立っていた。


 私のエスコートをしていたアベルの手が一瞬強く握られる。

 アベルの顔を見て、顔はにこやかだけど多分これ怒ってるなあ、と思いながらピンク髪を再度見る。


 うつむき気味ながらも勝ち誇ったような表情でこちらを見ていて、おい、その表情ヒロイン失格やろと思わなくもない。


 ピンク髪と目があったと思ったら急に彼女の表情がストンと抜けて目を見開き、顔面蒼白になっていく。



 思いがけない表情の変化に、あれ?と思ったら、よく通る低い声が響いた。




「私、リエト・ユーグラシアは公爵令嬢ローザス・アインベルトとの婚約を…



 さあ、断罪回避のゴングが鳴った。

 この10年の集大成を見せるときよ!

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