ドレスを返却しよう!
今日は短めです…。
3日目①
「結局、お前は昨日片付けしかしてないわけか?」
「はい、そうですね…。」
「危機感ないだろ。あと今日含めて3日しかないぞ。」
「だって、今日ドレス返しに行くっていうし、必死にまとめてたんだもん…。」
「だもんじゃねえ。」
「いひゃいーーーー」
アベルたんがほっぺたを引っ張ってくる。
地味に痛い。
話しているうちにドアの外からノックが聞こえる。
「どうぞー」
「…アベル様は何をしているのですか?」
「あっ、すみません。」
シュタインさまに剣呑な目で見つめられる。
やばい、嫉妬させたかも。
「別に、アベルたんと私にシュタインさまが心配するようなことはありませんよ。」
「…そうですか。」
シュタインさまは気が抜けたように返事をして、アベルたんは呆れたように半眼でこっちを見てくる。反応が解せぬ…。
「そんなことよりそろそろ荷物をつめこみましょう。約束の時間に遅れます。
シュタイン殿も積み込みを手伝っていただけるのですよね。」
「ええ、城までの護衛も併せていたします。」
「よろしくお願いします。」
大きめの木箱で5つ分のドレスや服飾品がある。
「じゃあ、身体強化魔法をかけますね。」
普通なら2人で1つを持つような箱を1人で持ち上げることができる。
これなら2往復で充分!
「ミモザ嬢の様子を見ていて感じていましたが、本当にすごい魔法ですね。
こんなに軽く持ち上げることができるなんて…!」
「腰に負担が掛からなくて重宝しています。」
3人でさくさくと公爵家の馬車に運び込む。
今日は荷物の運搬のために2台出してもらっている。
学園から城まで目と鼻の先だが、荷物の運搬と公爵家からの正式な申し込みのあった謁見とのことでわざわざ馬車で城の正門から入らなければならないらしい。
城の馬車付場に着くと、事前に連絡していたからか、10人ほどの使用人らしき人が来て荷物を運び出していく。
私たち3人は一際立派な衣裳を着た男性に着いていくよう言われる。
歩いて行くと高さ3メートルはある白いドアの前につく。
ドアの横に並んだ2人のドアマンが両開きのドアを同時に開く。
「アインベルト公爵家御令息、アベル・アインベルト様、御一行、お進み下さい。」
声がかけられ、アベルたんを先頭に右後ろに私、左後ろにシュタインさまというフォーメーションで赤い絨毯を進む。
体育館ほどの広さの広間の向かいに一段高くなってカーテンがかけられたスペースがあり、そこにある椅子に掛けた人物が見える。
第一王子、リエト・ユーグラシアだ。
こちらが謁見場所にたどり着く前に第一王子が逆にこちらに駆け寄ってくる。
「ミモザ!息災であったか?
会えない間、ずっと心配していたのだ。
公爵家で無礼な扱いをされてはいないだろうな?」
本当は臣下から挨拶を受けてから喋るのがルールなんだけど、あっさりと無視してきやがる。
王子の発言を無視する訳にはいかないので答えるけどな。
「リエト殿下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。
アインベルト公爵家ではローザスさまを始め皆様によくしていただきました。
心配されるようなことなどなにもございません。」
「ミモザ、そのような他人行儀な口調はやめてくれ。
いつものようにただのリエトでかまわぬ。」
いや、無理です。心境的にもTPO的にも。
てか、この王子、こんなマナー知らずで大丈夫なのか?
一番身分の高いアベルたんに最初に話かけないといけないのに。
笑顔のアベルたんの頬に青筋が浮いている。
「リエト殿下、今日はお願いがあって参ったのです。」
「ああ、私がそなたに送ったものを国庫に返したいというものだな。
しかし、私としてはやはりそなたに持っていてほしいのだ。」
「私には身に余るものでございます。
私としましては卒業後は教会にてお世話になろうと考えています。
あのような華美な服は不要でございますので、国庫に返し、本当に支援が必要な方に当てて頂きたいと思ったのでございます。
私は平民ですので、あのドレス一つでどれだけの人々の糊口を凌げるかわかるのです。
その分私が持っていることが心苦しくて…。」
「ミモザ、そなたの心意気に感動した。
本当に優しいのだな。
私の心情としてはそなたにもっていて欲しいが、王家で払い下げてその金額を孤児院の支援金としよう。」
「ありがとうございます。」
やった、一晩考えた甲斐があった。
角を立てずに返却に応じてくれた!




