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プロローグ

 ああ、これあかんやつや…



 急に入り込んできた記憶と共に目の前に広がる光景に絶望する。


 なぜこの瞬間に記憶が蘇ってきたんだろう?




 高い金の骨組みと青を基調とした美麗な絡み合う植物紋様の天井から下がる、キラキラと光を弾く無数のシャンデリア。

 広いフロアには深紅のカーペットと、それを彩るカラフルなドレスを着た少女たち。

 うっとりするような光景ではあるのだが、それは問題ではない。



 私の前には目を見張るような美女が1人、筆頭公爵家令嬢のローザス・アインベルト様である。

 光を弾くまっすぐな銀の髪に、ルビーの様な輝く赤い瞳。白く透き通った肌に、整った鼻梁。

 極め付けは豊満な胸に折れそうに細い腰をお持ちの文句のつけようのない美女である。



 そして私の隣にはこれまたイケメンが立っている。

 このイケメンはリエト・ユーグラシア、このユーグラシア王国の第一王子様である。

 サラサラの金髪に青く澄んだ瞳。鼻は高く薄めの形の良い唇は今は固く結ばれている。

 また、女も嫉妬するような整った肌理の持ち主でもある。

身長も高く細身であるのに、しっかりと鍛えられているのか姿勢良く頼りなさは感じられない。



 そう、ここはネット小説から人気を博し、書籍化、マンガ化、アニメ化までした大人気小説『悪女は最後に微笑む』のざまぁの場となる卒業パーティーの断罪の場面である。





 この小説のストーリーは現代日本のOLが転生した悪役令嬢は5歳で前世の記憶を思い出し、処刑エンド回避を目指して正当に画策するストーリー。


 貴族であれば大なり小なり魔法が使える世界が舞台。

 貴族が集う学園に平民ながら魔法が使えるということで特別に入学が許可されたミモザという少女がイケメンたちと愛を育む架空のゲームが元ネタとされ、断罪され処刑される悪役令嬢にゲームをプレイした記憶をもつ主人公が転生し、事故をきっかけに前世を思い出した幼少期からストーリーが始まる。


 もちろん主人公の性格は日本人らしく温厚で、悪虐だった悪役令嬢のイメージを変え、味方をふやしていく。

 学園入学後もヒロインにはいじめなんてしないが、意地悪をしない悪役令嬢にじれたヒロインと、勘違い第一王子からのからみがとにかくうざい。


 今後の展開としてはヒロインの捏造した証拠を元に婚約者の第一王子から断罪を受けるが、証拠は甘く全て論破され、第一王子は失脚し、その間にヒロインはあっさりと他の男に乗り換えるがそれを知った王子から刺され死亡。

 第一王子は精神を病み幽閉。



 対して悪役令嬢といえば、断罪イベント前に第一王子以外の攻略キャラを籠絡し、イケメン騎士のシュタイン様には忠誠を誓われ、1つ下の弟からはシスコンばりに溺愛され、宰相閣下のご子息からは友達認定され、妾腹の不遇な同い年の第二王子にも求婚されているはずである。


 断罪イベントからのざまぁ後に第一王子との婚約は解消されるが、失脚した第一王子の代わりに立太子した第二王子と婚約し、前世の知識を活かして王国を繁栄させていく王道悪役令嬢転生ものストーリー。


 その後沢山でてくる悪役令嬢転生ものの火付け役となった作品である。



 まさかの悪役令嬢転生もののヒロインに転生するなんて…

 しかも、まさにざまぁが始まろうとしているストーリー終盤に記憶が蘇るなんて…



 一気に血の気の引く私に気付かず、隣に立つイケメンが大きく声を張り上げる。


「私、リエト・ユーグラシアは公爵令嬢ローザス・アインベルトとの婚約を…




 ああ、人生詰んだ。


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