1通目の手紙:嫌なこと
――1枚目
一ノ瀬 梨香さんへ
言葉では上手く伝えられないので、手紙を書くことにしました。
いつもと違う口調や、言葉尻は気にしないでください。
上手く書けていないかもしれないけど、心を込めて書きました。
俺には、この世界でどうしても嫌なことが3つあります。
最初のひとつは、君がこの世界から居なくなること。
君が俺の知らない場所に行って、二度と会えなくなってもいい。
それは十分に悲しいことだ。
けど君がこの世界から居なくなってしまうよりはよっぽどいい。
だから、何があっても、生きていて欲しいと思う。
どんなに辛いことがあったとしても。
どんなに悲しいことがあったとしても。
俺は君に、この世界に居て欲しい。
もしも、君がこの世界から居なくなってしまったとしたら。
もしかしたら、俺は生きていけないかもしれない。
それぐらい、君が居なくなってしまうことは悲しいことだ。
――2枚目
ふたつ目は君が不幸になること。君にはいつでも笑っていて欲しい。
君が笑うと俺も笑えるから。こんな事、君には関係ないだろうけど。
君には無条件で幸せで居て欲しいと思う。
だから、俺に出来ることがあるのなら何でも言って欲しい。
君が俺を頼ってくれるのは嬉しいことだ。
俺にも存在価値がある、そんな風に思えるから。
でも、もしも……俺が居ない方が幸せだと言うのなら。
その時はいつでも君の前から居なくなるよ。
それが俺に出来る唯一の事だというのなら仕方ない。
みっつ目は君と話せなくなることだ。自分の事で悪いとは思う。
本当はこんなこと、君に伝えない方がいいのかもしれない。
君が不幸にならないためなら、俺は話せなくても平気だよ。
そう言った方が良かったのかもしれない。
でも、ごめん。俺は、君の前ではありのままで自分で居たい。
だから、考えていることも思っていることも全部、君に伝えたい。
もしも、このことで君を苦しめてしまっているのだとしたら。
この先は読まないでください。
――3枚目
俺は、君の事が好きです。この想いが君を不幸にするのであれば。
俺はもう君と話せなくても構いません。
この気持ちが君を傷つけてしまうのだとしたら、何も望みません。
もう生徒会室には行きません。電話もしません。
君には今の場所で、いつものように笑っていて欲しい。
俺は、君の事が好きです。
この気持ちが君の重荷になっているのは分かっているつもりです。
だから、何度も何度も伝えることを躊躇しました。
それでも、君が好きです。
君といると嬉しい事ばかり起こる。目が合うと嬉しい。
手を振ってくれると嬉しい。笑ってくれるとすごく嬉しい。
近くにいてくれるだけで暖かい気持ちになれる。
遠くから見ているだけでも穏やかな気持ちになれる。
そのどれもが、泣きそうなぐらい嬉しくて。
いつも「ありがとう」って思っています。
どうか、この想いだけは知っていてください。
高木 貴文より




