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たとえ人生をやり直せるとしても俺は同じ過ちを繰り返す  作者: 大神 新
第5章:仲違いと勘違い
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第61話:将来の夢はあってもなくても良い

 夏休みが終わり、新学期が始まった。2学期の前半はイベントが目白押しだ。

 まずは生徒会役員選挙である。すぐに選挙管理委員会が立ち上がった。

 その後は文化祭、修学旅行、生徒総会と続く。


 文化祭執行部の方は相当に忙しくなっていた。

 過去の世界で一ノ瀬の態度が急変したのはこの頃だ。

 注意深く様子を伺うが、今のところ何の変化も予兆もない。

 まあ、当時も前日までは普通に話していたからな。

 そう簡単にはいかないだろう。


 最大の問題は何が原因で一ノ瀬があんな風になったか分からないということだ。

 おそらく、何かきっかけがあって中森(なかもり)への恋心が芽生えたのだろう。

 しかし、俺はそれがどんなことだったのかを知らない。


 一ノ瀬にとっては黒歴史だったのか、俺には話したがらなかった。

 唯一聞くことが出来たのは「困っている時に助けてくれた」という言葉だ。

 これも酔っぱらっている時にぽろっと出た言葉なので信ぴょう性が低い。


 まず、俺からすると一ノ瀬が困っている、という状況が分からない。

 よほどのことが無い限り、一ノ瀬が困るなどということは無いのだ。

 根っからのプラス思考で後先を考えない性格である。

 これでは落ち込む方が難しい。


 そこで俺は、文化祭まで部活を休むことにした。

 そんなに練習を休んだら選手としてはかなり厳しいことになる。

 団体戦メンバーから外れることになるのは間違いないだろう。

 でも……俺は構わなかった。今更、公式戦の結果などに興味はない。

 一番大切なのは一ノ瀬だ。


 ただ、いきなり3週間休みます、というわけにはいかない。

 顧問の先生も納得しないだろう。

 それに今まであれだけ練習していた俺が、急に文化祭に傾倒するのもおかしい。

 生徒会執行部の皆からも変に思われてしまうだろう。

 そこで、手を打たせてもらった。


「高木くん、大丈夫?」

「ああ、そんなに痛みは無いから心配しなくていいよ」

 心配してくれる一ノ瀬にはとても悪いことをしている。


 左足を捻挫したことにした。全治3週間。

 これならば、何の問題もないだろう。


 仕事と違って、休むのに医者の診断書など不要である。

 これは生徒会執行部メンバーに対しても同様だ。

 脚はテーピングしておけばそれらしく見える。

 ……我ながら姑息な方法だが、俺はもうなんだってやると決めたのだ。


「でも、なんだか変な感じだね」

「何が?」

 ふたりで紙の飾りを作りながら話をしていると急に一ノ瀬が言った。


「高木くんが毎日、ずっと会議とか準備してるってなかったから」

「ああ、そういえばそうだな。定例会が無い日は部活がメインだったし」

 放課後にずっと生徒会室にいるのは雨の日ぐらいだったな。


「ここんとこ、ずっと一緒に居るような気がする」

 気がするのではなく、その通りなのだ。


「そう言えばそうだな……。いっそ部活を辞めるのも悪くないかも」

「えっ!? どういうこと?」

 驚いた表情をする一ノ瀬。

 

「辞めたらさ、一ノ瀬と毎日こうやって過ごせるだろ?」

 これは本心だ。このところ、ずっと日々が満たされている。

 もっと早く、そういう決断していれば良かったと思うぐらいだ。


「……それはちょっと嫌だなあ」

「酷いこというなよ」

 流石にちょっと傷ついたぞ。


「あー、違うよ、高木くんと一緒なのが嫌なんじゃなくて!」

 嫌じゃない、そう言ってくれるのは嬉しかった。


「それだと、私のせいで部活辞めちゃうみたいじゃん」

 そうか、何かの原因になりたくないんだな。

 一ノ瀬は自分の為に何かを犠牲にされることを嫌がった。

 

「わかった、じゃあ辞めないよ」

「うん、そうして。私とはいつでも会えるでしょ?」

 それは……今だけかもしれない。

 一ノ瀬にはそんな不安、わからないだろうな。 

 だけど、それでいいんだ。

 いつでも会える、そう思っていて欲しい。


「まあ、一ノ瀬が会ってくれるなら何でもいいや」

「あはは、なんだか最近、凄く駄目になってない?」

 その笑顔を見ると安心してしまう。

 もう、昔みたいに未来を悲観して生きたくはない。

 お前のような恐れ知らずにはなれないだろうけどな。


「一緒に居ればいるほど、好きになるんだよ」

「じゃあ、ちょっと距離を取った方が良いね!」

 なんて悲しいことを言うんだ。


「お前なあ……」

「さ、仕事しよー!」

 もはや俺の対処はお手の物、といった感じだ。

 まあ、いいけれど。

 駄目になっているのは俺もそうだと思う――。



 生徒会役員選挙は滞りなく行われた。

 生徒会長は中森、正樹(まさき)君と一ノ瀬が副会長だ。

 一ノ瀬以外は過去の役職をそのまま続ける形となった。

 他の1年生は、久志(ひさし)君が会計、麻美(あさみ)ちゃんは書記、美沙(みさ)ちゃんが会計監査だ。

 今年も新しい人の立候補は無かったため、信任投票で決着した。

 もちろん、誰も落選はしていない。


「先輩、同じ役職ですねー!」

 何故か美沙ちゃんはとても嬉しそうだった。

 今日はツインテールなんだね、良く似合っているよ。


「よろしくお願いします」

「よろしくですー!」

 ものすごい笑顔でこっちを見ている。

 何だ、この可愛いだけの生物は……。

 頭をナデナデしたくなる。


「えいっ!」


 ――ドスン。

 ぐはあ!


「何故だ、一ノ瀬……?」

「高木くん、進路志望出した?」

 普通の話をするのなら、普通に話しかけて欲しいんだが……。


 なお、我が校は理系・文系へのクラス分けは3年生から行われる。

 進路に合わせて文理選択もしなければならない。


「出したよ、どうせ行くとこ決まっているし」

「そうなんだ、どこ行くの?」

 一ノ瀬が俺に興味を示すなんて、珍しいな。


「情報工学科」

「えっ? 文系じゃないの?」

 そういえば、前に夢の話をしたっけ。

 確かに俺のやりたいことは文系だ。


「あー、うん、まあね。でもこの先、パソコン関係の知識は重要でしょ」

「そうだけど……」

 やっぱり少し納得が行かない、という顔をしている。


「高木先輩って普通に理系向きだと思いますよー」

 美沙ちゃんは両手で頬杖を付きながら、俺たちの会話を聞いていた。

「だよねー」

 うーん、どうしてもこの子への対応は甘くなってしまう。


「俺は絵も文学も駄目だから、せめてプログラムぐらい出来ないとね」

「ふーん、そういうことか」

 一ノ瀬に向き直って真面目な顔で話した。

 当時の俺が考えていたことも同じだ。


「一ノ瀬も理系でしょ? 同じクラスになれるといいね」

「うーん、私は別のクラスが良いかなあ」

 ……何故だ。まあ、もう慣れたからいいけど。


「いいなー、先輩達って進路決まっているんですね」

 続いて会話に入ってきたのは久志君だ。


「まあ、俺のはザックリだけどね。

 普通に就職しやすい学科でもあるし、そこまで先を見込んでないよ」

 当時から俺はサラリーマンでも構わないと思っていた。


「そうなんですか。でも、僕は理系か文系かも決められてないです」

「そんなに考えなくてもいいんじゃない? まだ1年なんだし。

 途中で変える人も結構いるよ?」

 中森が言う事も一理ある。


 文系から理系へ変えるなんてのも良くある話だ。

 受験勉強となると学校で習うだけじゃまず足りない。

 結局のところ、予備校で何を習うかの方が重要だ。


「でも焦りますね……」

 久志君は真面目だからなあ。


「久志君は何かやりたい事はあるの?」

「それが無いんですよ」

 ふむ、それも良くあることだ。 


「じゃあ好きな事は?」

「これと言ってありません」

 ああ、なるほど、そういうことか。


「それで困ってるとか?」

「そう言う訳では無いんですけど、今のままは不安というか……」

 その気持ちは良くわかる。

 俺にもやりたい事が全く無い時期があるからだ。


 一ノ瀬が居なくなってからの俺は、ただ生きているだけだった。

 その間、不安や絶望を感じることは多かったよ。

 ひとり旅という趣味に出会えたのは本当に救いだった。


「それなら、色んな事をしてみるといいよ」

「色んな事、ですか……」

 ここは先輩らしく、それらしいことを助言してみよう。


「そう、今まで自分がやったことない事。

 例えばダーツとかビリヤード、スポーツでも良い。

 博物館や美術館、水族館に行ってみるのも手かも。

 他には本を読んでもいいし、ゲームでも良いよ」

「ビリヤードとかやってみたいです!」

 おお、いい反応だ。


「もちろん、やってみたい事を優先していいけど……。

 出来ればやりたいと思わない事もやってみて。

 歌とかダンスでも良いと思うよ」

「高木くん、苦手だもんね」

 そこ、茶化さない! まあ、一ノ瀬の言う通りだけど。


「なるほど、とにかく色々やって好きなものを探すんですね」

「そういうこと! でも嫌ならやらなくてもいいよ。

 今のままでいいと思うなら無理する必要はないと思うから」

 俺は、わざわざ辛いことをする必要はないと思っている。


「そうなんですか?」

「うん、だって、いつでもやりたいことは出来るはずだから。

 高校生の今、決めたことが将来までずっと続くとは限らないでしょ?

 俺はとりあえず大学に行って、そこでやりたいことを探すとかでも良いと思う」


 それに結局、やりたい事があってもそれを仕事にするのは難しい。

 それが出来るのは、ほんの一握りの人だと思う。


 たとえば俺のひとり旅。

 これを職業にするとなると、どうだろう。

 例えば旅行会社かなんかに就職して、レビューを書くみたいな業種かな。

 そんなのでお金を稼ぐには相当な努力が必要だろうし、旅が仕事になる。

 記事の為に必死でリサーチするような旅は、俺のやりたい旅じゃない。


 本質的に、好きなことは仕事にしない方が良い、と俺は思う。

 遊びや趣味に留めておいた方が、長く付き合えるし、好きでいられる。

 まあ、これを今ここにいる皆には言わない方が良いだろうから黙っているけど。


 やりたい事と進む職業が違う、それはおかしいことじゃない。

 でも、この頃はわからないよな。

 こんな夢の無い話は、もう少し大人になってからすればよい。


「それこそ、適当に就職して働きながら探したっていいと思うんだ。

 大人になってから、急にやりたい事が見つかる、なんてこともあると思うよ」

「そういうものですかね……」

 そういうものである。


「その時になってから考えても大丈夫だ。

 だから、あんまり焦らずにじっくり考えれば良いと思う」

「はい、ありがとうございます!」

 どうやら、何となく伝わったようだ。


 不安ならやりたい事を探せばよい。

 でも、それが辛いと感じたら休めばよい。

 そうやって積み重ねていけば、いつか必ず見つけられると思う。


「それ、結局、俺の言った事と変わらないじゃないか」

 中森から見事なツッコミが入る。ああ、バレてしまった。


「いえ、高木先輩の話、参考になりました! ありがとうございます!」

 うん、やっぱり久志君は良い子だ。


「あの、それで! 今度、ビリヤードを教えてもらっても良いですか?」

「それはもちろん、一緒に行こう」

 確かに、ひとりで行くのは勇気がいるもんな。


「じゃあ、私はダーツやってみたいです!」

 美沙ちゃんもか。

「もちろんいいよ、ただ俺はあんまり上手くないから期待はしないように」

 基本的にルールは知っている、レベルだ。


「じいー……」

 一ノ瀬、それ言葉に出していうヤツじゃないから。


「うん、今度、皆で行こうな」

「よろしくー!」

 そう言ってにっこりと笑う一ノ瀬。


 うん、生徒会室は今日も平和だ――。



「じゃあ、そろそろ帰るか」

 例のごとく、一ノ瀬とふたりで駅へ向かうことになった。


「ねえ、高木くん?」

「ん、どうした?」

 珍しく、真面目な顔をしている。


「高木くんって結構、考えてるんだね」

「いや、そりゃそうだろ」

 むしろ、考えすぎて失敗することが多い。


「私はあんまり考えてないなー。久志君の言う事、良くわからなかった。

 高木くんってなんだかすごいなって思ったよ」

 珍しく、褒められた。しかし釈然としない。


「何言ってるんだ、お前のがよっぽど凄いだろ」

「どこが?」

 とぼけた一ノ瀬も可愛い。だけど、ここはちゃんと言っておきたい。


「俺よりもよっぽどしっかりとした夢を持っている。

 それなのにお前はどんな事にも当たり前のように挑戦するじゃないか。

 この間のスキューバダイビングだって平気そうだったし」

 常に前向きで、どんなことも楽しんでやる。

 それは、はっきり言って才能だ。俺はコイツみたいな人になりたい。


「うーん、そうかなあ、普通だと思うんだけど」

「全然、普通じゃない。お前は自分ではわかってないけど凄いことしてるんだよ」

 自分では普通だと思っていることが人から見たら凄い事だった。

 そういうことは結構あることだと思う。


「高木くんはいつも、私のことほめ過ぎだよ……」

 俺はいつも本心で言っている。

 一ノ瀬はもっと、自分の魅力に目を向けて欲しい。


 ――ポツポツ、ザー!


「えええ!?」

 見事な夕立だった。

 雷のような予兆もなく、いきなりの土砂降りに見舞われる。

 俺と一ノ瀬は慌てて高速道路の高架下に滑り込んだ。


「あーもう、最悪!」

「まいったな、急に降り出すもんだから、びしょびしょだよ」

 ふと、一ノ瀬の方を見て絶句した。

 そして光の速さで目を反らす。……首が痛かった。


「どうしたの?」

「あー、いや、何でもない」

 雨でブラウスが透けて下着が丸見えになっていた。


「あああ!」

 そう言ってしゃがみ込む一ノ瀬。

 どうやら、俺の反応で気がついたようだ。


「見た……?」

「見てない!」

 嘘です、見てます。だけど一瞬なので許して欲しい。


「いや、完全に見たよね? 最悪だー!」

「これは不可抗力だから!」

 さて、どうするか……。

 俺も今日は学ランを着ていないし……。


「あ、そうだ、学校に戻ればジャージがある! 今から取りに行くよ!」

「ええっ!? 待ってよ!」

 少し距離があるけど、止むを得ない。


「本気で走れば往復15分ぐらいだから……」

「駄目っ!」

 珍しく大きな声で俺を制止する一ノ瀬だった。

 どうした?


「足、怪我してるんでしょ? 私の為に無理しないで」

 ああ、そういうことか。

 どうしよう、これは嘘だと言ってしまうか?


「それに、こんな時にひとりにしないでよ……」

 それもそうだ、確かに駄目な判断だった。


「とりあえず、鞄で前隠して。寒くない?」

「うん、大丈夫……」

 ここから駅まではそこまで遠くない。

 しかし、相変わらずの土砂降りである。

 天気はどうなるだろうか?

 スマホがあれば雨雲レーダーで予想が着くのに……!


「止むかもしれないから、少しだけ待ってみよう」

「分かった」

 経験上、このレベルの夕立は長く続かないはずだ。

 雷の音も聞こえてこない。


 後はとにかく、人目にさらされないようにしないと。

 一ノ瀬は両手で鞄を抱えている。

 丸見えではないが、やはりこの姿は見せたくない。

 結構な人が雨宿り目的で高架下に集まって来た。


「ごめん、一ノ瀬」

 そう言って、前に彩音(あやね)先輩にしたように抱き寄せた。

 この体勢はそれほど不自然じゃないはずだ。

 そのまま壁際に移動する。


「高木くん……?」

「これなら他の人に見られなくて済むだろ」

 声が近い、一ノ瀬のいい匂いがする。

 しかし、今はそれを考えちゃ駄目だ。


「あ、ありがと……」

 珍しく、目を合わせずに俯く一ノ瀬。

 まいったな、この仕草も可愛い。


 しばらくすると、雨脚は弱まって来た。

 まだ止んでいないが、これぐらいなら強行突破できる。


「よし、駅まで行こう。鞄はそのままだぞ」

「分かった」

 前を隠したままの一ノ瀬を誘導して駅へ向かう。

 改札口は駅員に定期を見せて通り抜ける。

 一ノ瀬の定期は俺が代わりに見せた。


 売店でタオルを買って一ノ瀬の髪を拭く。

 彼女の両手は塞がっているから、俺がやるしかない。

 出来るだけ優しくしたつもりだ。


「高木くんは?」

「俺はいいの!」

 ……一ノ瀬を拭いたタオルで自分を拭くのは背徳感が強すぎる。

 タオルはそのまま一ノ瀬の首にかけてやった。

 

「家の近くまでは送るよ」

「えっ!? 悪いからいいよ!」

 当然のように拒否する一ノ瀬。


「ごめん、どうしても送りたい……駄目か?」

「……もう、しょうがないなあ」

 電車の中でも高架下と同じようにして周囲の目から一ノ瀬を守る。


「……これ、逆に目立たない?」

「そうか? どう見ても普通の高校生カップルだろ」

 逆に言うと、恋人同士にしか見えないわけだが。

 今は非常時だ、仕方ない。


 改札口を抜けて、道を歩く。

 一ノ瀬の家は知っているけど、それは過去の世界の話だ。

 前を歩くわけにはいかない。


「ありがとね、高木くん」

 結局、一ノ瀬は家の前まで送り届けた。

「今日はいろいろ、悪かったな」

 いくら両手が塞がっているとはいえ、家の前まではおせっかいだっただろう。


「なんで高木くんが謝るの?」

「……すまん、全部、雨のせいってことにしてくれ」

 どうやら、嫌がっていたわけではなさそうでほっとした。


「ふふ、馬鹿だなあ。ねえ、上がっていかない? タオルぐらい貸すよ?」

 なんだ、その恐ろしい提案は。

 そう言えば一ノ瀬の両親には会ったことが無かったな。

 電話で声を聴いたことがあるだけだった。


「いや、悪いからいいよ、俺は頑丈だから気にするな」

 流石にこの状況で挨拶するのは気まずい。

 一ノ瀬に背を向けて、駅へ向かうことにした。

 雨はもうすっかり上がっている。

 こうなると、立ち昇ってくるアスファルトの匂いが心地よい。


「高木くん! 今日はありがとうね!」

 そう言って手を振る一ノ瀬。

 良かった、笑っている。

 手を振り返して歩きだす。


 些細な事でも構わない。

 少しでも彼女の為になったのなら、それはとても嬉しいことだ。


 未来を変える選択肢は1つじゃない。

 いくつもの可能性の中から、様々な選択をする必要がある。

 俺に出来るのは、その1つ1つを大切にすることだけだ。

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