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たとえ人生をやり直せるとしても俺は同じ過ちを繰り返す  作者: 大神 新
第5章:仲違いと勘違い
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第60話:メッセージを送るのも一苦労だった

 8月中旬、夏休みも残りわずかとなった。


 ……といっても、俺は毎日のように学校に行っている。

 テニス部の練習は厳しかった。

 まともに休んだのはお盆の期間ぐらいだ。


 だが、今日からは一ノ瀬も学校に来る。

 文化祭執行部の仕事があることは聞いていた。


 練習が終わったら生徒会室へ向かう。

 久しぶりに会えると思うとニヤニヤしてしまうな。

 ……たった2週間しか経っていないけど。


 生徒会室の扉は開いていた。おそらく暑さ対策だろう。

 ドキドキしながら入口をくぐる。期待通り、中には一ノ瀬が居た。

 しかし、何故ひとりでいるんだろう? 他の皆も居ると思ったのに。


「一ノ瀬!」

「高木くん!」

 まるで久しぶりに再会した恋人のようにお互いの名前を呼び合う。


 ……これは何かおかしいぞ。特に一ノ瀬の反応が怪しい。

 アイツは別に俺に会いたいなどと思っていないはずだ。


「見てみて! いいでしょー!」

 そう言って鞄から携帯端末を取り出した。

 おお、ついに買ってもらったのか。


「おー、凄いな。PHSじゃないか!」

「違うよ、高木くん、これはピッチっていうんだよ!」

 いや、言い方変えただけだろ。

 しかし、今日はテンション高いなあ。


「良かったね、これでいつでも私に電話出来るよ?」

「それは……電話しろってこと?」

 見るからに使いたくてウズウズしている。

 まあ、その気持ちはわかるよ。


「そんなこと言って無い!」

「そうか、悪かった。とりあえず、番号教えてよ」

 まずはこれを聞かないと話が進まないな。


「えー、どうしようかなあ……?」

 何故そこで勿体ぶる。

「お願いします、教えて下さい」

 仕方ないので頭を下げた。


「しょうがないなあ、じゃあ教えてあげるよ」

「ありがとうございます!」

 番号を教えてもらうだけで、ここまで苦労するとは面倒臭いヤツだ。

 一ノ瀬の番号をメモして、それをポケットに忍ばせる。


「じゃあ、ちょっと待っててね」

「えっ!? 何で? どこ行くの?」

 困惑する一ノ瀬を残して、昇降口へ向かった。

 あそこには公衆電話があるのだ。


 俺はこの日のために、当時のポケベル打ちを再学習してある。

 公衆電話に20円を入れたら、一ノ瀬の番号をプッシュした。


 ――1112324493##。(アイシテル)


 神速のタイピングにより、通話が終了する。

 ……まあ、今回は打つ文字を決めてたからな。

 昔は好きなメッセージをその場で数字に変換できた。

 今や、全くと言っていいほど不要な技術だ。


 通話を終えたら生徒会室に戻った。


「ちゃんと届いたか?」

「……何このメッセージ。凄く気持ち悪いんだけど」

 くっ、なんて世知辛い。


「悪かったよ、もうメッセージは送らないよ」

 あまりに厳しい叱責に少し凹んでしまった。


「メッセージは送ってよ! 問題は内容なの!

 他の言葉、思いつかなかったの?」

 送ることはいいのか。口調の割に、機嫌は良さそうだ。


「最初のメッセージだし、こういうのがいいかなーと」

「いやあああ! 高木くんに私の初めてが汚された!」

 おい、待て、何だその危険な匂いのする発言は。

 美沙(みさ)ちゃんが聞いていたら何を言われるかわからないぞ!


「もっと普通のを送って欲しかったなー」

 ふてくされる一ノ瀬も可愛い。

 でも、PHSに表示されるメッセージを見つめていた。

 うんうん、分かるよ。内容は不満かもしれないが嬉しいよな。


 当時のPHSや携帯は今ほど高機能じゃなかった。

 メッセージは短い上に、長時間の保存できない。

 電話帳も友達が多いと登録しきれないレベルだ。

 それでも、どこにいても通話が出来るというのは本当に画期的だった。


「どうかしたの?」

「んー、ちょっと考え事。俺もPHS欲しいなーって」

 俺の家はそれほど裕福ではなかった。

 親父が出世して生活にゆとりが出来るのはもう少し後の話だ。


「そしたら、普通にメッセージ送れるね!」

「一ノ瀬のメッセージか、……それは凄く欲しいな」

 スマホがあれば、そのメッセージもずっと残せただろう。


 大人になってから読み返していたかもしれない。

 思い出が形になって残るのは少し羨ましいと思う。

 ……けど、顔から火が出るようなしょうもない記録も残ってしまうだろうな。

 先ほどの俺のメッセージが良い例である。

 

「いや、私からは送らないよ?」

「なんでだよ!」

 本当に意地の悪いヤツだ。

 単に俺を困らせて遊んでいるだけなのだろうけど。


「あははは! 高木くんからいっぱい送ってねー」

「……買ってもらったらそうするよ」

 少なくとも、しばらくは公衆電話で送るしかない。


「ところで、なんでひとりだったんだ? 他の人は?」

「ああ、もう仕事終わったんだよ。今日は会議だけだから午前中で解散したの。

 今日はね、高木くんにこれを見せびらかせようと思って待ってたんだよ!」

 正直、少し予想外の答えだった。


「えっ、俺を待ってたのか?」

「うん、そーだよー。練習終わったら生徒会室来るって言ってたでしょ?」

 そうだったのか……。


「それは……嬉しいな」

「ふふふ、ピッチが無かったら帰ってたよ?」

 どうやら自慢したかっただけのようである。

 

「そういうことか、それでも会えてうれしいよ」

「学校始まったら毎日会えるじゃん」

 いつものことだけど、愛想が無い。


「まあ、そうなんだけどさ……。もう帰る?」

「うーん、どうしようかな? 折角だから少し話そっか?」

 そう言ってくれて良かったよ。

 久しぶりに会えたのだから、もう少し一緒に居たかった。


 ふたりきりの生徒会室。意外とこのシチュエーションは少ない。

 この部屋には大抵、誰かがいた。

 普段は狭苦しく感じるけど、ふたりだと少し広く感じる。

 エアコンはついていない。

 だけど、ドアと窓を全開にすればそれなりに涼しくなる。

 窓の外の太陽は容赦なく大地を照りつけていた。

 しかし、蝉の鳴き声が響く校舎には時々、風が吹き抜けていく。

 開けっ放しの扉に付けられた鈴が風鈴のように音を鳴らした。


「あははは! 高木くんってやっぱり馬鹿だねえ!」

 そんな世界に一ノ瀬の笑い声が高らかに響く。

 俺は、その声がたまらなく好きだった。


「お前といると本当に楽しい。出来ればずっとこうして居たいよ」

「でも、来年は受験勉強だよね……」

 珍しく嫌なことを言う。


「まあ、勉強はするとして。俺は卒業してからもお前には会いたいな」

「えー、高木くんって永遠の愛とか信じてる派?」

 ああ、この話になってしまうのか。

 そういえば昔、この話で大喧嘩したっけ。


「永遠かどうかは知らないけど、死ぬまでって意味なら信じてるよ」

「ふーん……、私は信じてないんだよね」

 俺と一ノ瀬は恋愛観が決定的に違う。


「だってさ、出来れば色んな人と付き合いたいじゃん!

 ひとりの人としか付き合わないって、人生を損してると思わない?」

 これにはどう答えればよいだろうか。


 一ノ瀬は時々、熱く語ることがある。

 天然系箱入り娘に見えて、議論するのが好きなところがあった。

 こういう時は下手に濁してはいけない。

 それに俺も元々、こうやって話すのは好きだった。

 だからこそ、ふたりで話をすると長くなるのだ。


 一ノ瀬の問いかけに、当時の俺は真っ向から否定してたな。


 ――僕はひとりでも付き合えれば十分だと思う。


 モテる人、というのは単に容姿が良いだけじゃない。

 モテようと努力をするからモテるのだ。

 人から好かれる努力、自分を良く見せる努力……。

 それは決してずるい事じゃない。

 ありのままの自分を好きになって欲しいなんて、傲慢だ。


 だから「自分はモテない」そう言って終わってしまってはいけない。

 モテたいのに何もしないのはただの我儘だ。

 それは鍛錬もしないでマラソンが出来ないと言うのと同じ。


 ただ、俺は多くの人にモテたいとは思わない。

 ひとりだけ、一ノ瀬が居てくれればいい。

 彼女だけを見て、彼女を大切にしたいと願う。

 だから俺は一ノ瀬に好かれるために努力した。

 ……残念ながら、実らなかったけどな。


 恋愛観は人それぞれだ。

 誰にも否定されるようなことじゃない。

 だから、一ノ瀬は正しいし、俺の考えも間違っていない。


 でも、叶わぬ恋をいつまでも引きずる俺は間違っているのだろう。

 それは、解っているんだ。


「まあ、確かに」

 今は一ノ瀬の言っていることがわかる。


 一ノ瀬は飽きたら別の人を好きになる、と言っているわけではない。

 純粋に、色々な人と付き合いたいと思っているだけだ。

 確かに経験を積むことは大切なことだと思う。

 

「色んな人と付き合わないと、今の人が良いか悪いか、分からないでしょ」

 人と人を比べることは嫌いだ。でも、一ノ瀬の言う通りだと思う。

 例えば暴力をふるうような人。俺はその時点で駄目だと思う。

 でも、その人しか知らなければ、それが普通だと思ってしまうかもしれない。

 ひとりだけ、というのはそういうリスクをはらむ。


「でもさ、何人かと付き合って、最初の人が一番だったら後悔しないか?」

 俺はこの問いの返事も知っている。

「えー、別にしないよ。だって凄く良い人と付き合ってたって知れるわけでしょ?

 他の誰かと付き合わなかったら、それが分からないまま一緒に居るわけじゃん。

 そしたら、その方が後悔するかもよ?」

 実に一ノ瀬らしい答えだ。


 一ノ瀬がいつでも前向きでいられるのはこの思考回路だ。

 何もしないままでも後悔するかもしれない。

 なら、何かをした方が良い。

 そして、その結果が上手くいかなくても後悔はしない。

 この道が誤りだと気づけたことは成果なのだから。


 実に合理的だと思う。

 俺はこの考え方が好きだ。だから、今は彼女の言い分が理解できる。


 当時の俺は、最悪にもこう答えたのだ。


 ――一ノ瀬さんは、本気で人を好きになったことないだけでしょ。


 こうして大喧嘩になった。

 それは酷いものだ。

 しばらく口を聞いてくれなかった。

 最終的に平謝りしたのを思い出す。


 俺は喧嘩も大事だと思う。

 お互い、言いたいことを言い合える。

 それは素晴らしい関係だ。

 そして、その先に進むと前より深くお互いを知ることが出来る。

 喧嘩を繰り返して、少しずつ理解し合う、それが自然だ。

 中には喧嘩をしないで過ごすカップルもいるだろう。

 それはそれで良いことだ。

 波長が合うのならそもそも何もしないで自然でいられる。


 でも、どちらかが我慢し続けるのは歪だと思う。

 俺と一ノ瀬は価値観の相違が酷かった。

 そして俺は人一倍、子供だった。いつも一ノ瀬を不快にさせていたと思う。

 だからこそ、沢山喧嘩をした。大抵は、最後に俺が謝っていたっけ。

 だけど、一ノ瀬が譲ってくれることもあったのだ。


「一ノ瀬の言う通りだと思うよ。

 でも、俺は一ノ瀬に出会っちゃったからなあ」

「どういうこと?」

 真面目に話している一ノ瀬に対して、嘘はつけない。

 だから、俺は思ったことを言うしかないのだ。

 たとえ喧嘩になっても構わない。


「お前より魅力的な人はこの世界に存在しない」

「そんなのわかんないじゃん!」

 その通りだ。わからない、というよりは確実にいる、が正解だろう。

 例えば、奈津季(なつき)さんや彩音(あやね)先輩。

 比べるようなことはしたくない。

 けど、客観的に見れば一ノ瀬よりも魅力的だと思う。

 

 それでも俺は……、俺にとっては違う。

 傍に居てくれると嬉しい。声が聴けるだけで元気になる。

 その姿を思い浮かべるだけで、優しくなれる。

 こんな風に思えるのは一ノ瀬だけだ。


「俺はこれ以上は知らなくていい。だって今、凄く幸せだよ」

「……私たち、出会うのが早すぎたね」

 なぜか別れ話をしているみたいになった。

 嫌な感じだ。でも、ごまかしたくない。


「俺は早くに出会えて良かったと思うけどな」

「えー、どうして?」

 これは、嘘偽りのない本心だ。


「だって、その方が長くお前と一緒に居られるだろ?」

「もう、本当に馬鹿だねえ」

 呆れたように笑う一ノ瀬。でも、否定されなくて良かった。


 永遠なんて信じない。実を言うと、当時の俺もそうだった。

 高校を卒業して、大学生になれば。

 いつか、この恋心も無くなって違う誰かを好きになる。

 そう信じて疑っていなかった。


 だけど、事実には勝てない。本当に、信じられない話だ。

 少なくとも俺の想いは、20年経った今も色あせていない。


 いつか、お前が誰かを好きになって、居なくなってしまったとしても。

 俺はきっと、お前のことをずっと好きでいるよ。

 

 それは流石に、言葉に出来なかった。



 ――ぐうううう……。


 意外と大きい音がした。そして一ノ瀬は赤くなる。

 昔から、よくお腹が鳴るんだよな。

 気にしているのを知っている。

 だから、俺は気がつかないふりをしてこう言った。


「一ノ瀬、お腹空いた」

 真面目な会話の終わりは大抵、こんなものだ。

「そういえば、もうお昼過ぎて結構経ったね」

 どうやら、上手く無かったことに出来たようだ。


「良かったら、ご飯食べて帰らないか?」

「奢ってくれるの?」

 抜け目のないヤツ。でもこれは多分、冗談だろう。


「いや、そこは割り勘でお願いします」

「うーん、残念。でもいいよ!」

 良かった、これでもう少し一緒に居られる。


 生徒会室を出て、眩しい夏の空の下をふたりで歩く。

 やはり、一ノ瀬が隣にいるだけで何をしていても大切な時間に変わる。

 俺にとってはこれだけで、十分に幸せだった――。


「流石にお店の中は涼しいねー!」

 冷房が効いたファーストフード店は寒いぐらいだ。


 対面に座って、美味しそうにハンバーガー食べる一ノ瀬。

 食べるのが下手なのか、口の周りは汚すし、ポロポロ落とす。


「何見てるの……?」

 怪訝な顔でこっちを見ている。


「あー、いや、可愛いなあ、と」

「恥ずかしいからじっと見ないでよ」

 今回のは本当に嫌そうだ。これは申し訳ないことをした。


「ああ、悪かったよ」

 両手を上げて降参のポーズを取る。


「高木くんも食べてる時は見られたくないでしょ?」

「いや、一ノ瀬ならいいよ?」

 じーっと見てくれたらむしろ嬉しいかもしれない。


「……愛が重たいわ」

「そう言うなよ」

 俺も悪いとは思っているのだ。


「ねえ、この後どうする?」

 帰ろうと言われなくて良かった。


「うーん、カラオケでも行くか?」

「行く!」

 ……本当に好きだな、お前。

 意外なことに今日はフルコースのデートになってしまった。



「なんかふたりで来るのってちょっとドキドキしないか?」

 個室だし、音も外に漏れない。

 なんだかちょっと意識してしまう。


「えー、普通だよ。生徒会室と変わらなくない?」

 そうですか。

 元気な一ノ瀬は次々と曲を入れていく。


「早く入れないと、ずっと私の番だよー」

 まあ、俺はそれでもかまわないのだが……。

 流石に少し休ませてやらないと大変だ。


 それにしても、楽しそうに歌っている一ノ瀬を見るのはいいなあ。

 俺はこうしていられるだけで本当に幸せだよ。


 何曲か交互に歌った後、一ノ瀬が急にこっちを見て立ち上がった。


「あ、この曲!」

「ふっふっふー! 高木くん、舞台袖からしか見てなかったでしょ」

 新入生歓迎会の時の曲だ。


 ……すげえ、まだ歌詞も振り付け覚えているんだな。

 相当練習したってことか、よく頑張った。


 しかし……、これ対面でやられると凄いな、どこを見たらいいんだろう。

 目の前でアイドルが踊ってたらこんな感じになると思う。

 しかも夏の制服はそれなりに露出度が高い。

 なんだか顔が赤くなってきた。


「どうだった?」

「あー、いや、最高でした」

 照れてまともに顔が見れない。


「なんか、そんなに嬉しそうじゃないねえ?」

「流石にこの距離だとちょっと照れるんだよ」


「うわ、珍しい! 高木くんがそんなことを言うなんて」

 なんだか嬉しそうな顔をしている。何故だ?


「よいしょ」

 掛け声とともに肩がぶつかる距離に座る一ノ瀬。

 慌てて少し距離をあける。


「あれー? 何で逃げるの?」

 恐ろしく悪い顔をしている。

 この子は一体、何を考えているのだろう。


「いや、ちょっと意識しちゃって」

「あはは、エッチだねえ、高木くんは」


 ……まったく、この距離感、始末が負えない。

 分からないな、なんでコイツは俺のことを好きじゃないんだろう。

 まあいいか、考えるのも馬鹿らしい。

 一ノ瀬が居なかった日々が、頭を過る。

 何だっていい、今、傍に居てくれることがただ嬉しかった。



 ――14813372##。(オヤスミ)


 その日の夜、寝る前に一ノ瀬にメッセージを送った。

 すると即座に電話が鳴る。

 親が出る前に慌てて取った。


「はい、高木です」

「高木くん?」

 予想通り、一ノ瀬だ。


「ああ、そうだよ」

「かけ直して!」

 そして電話は切れた。

 ああ、なるほど、そういうことか。

 PHSだと通話料かかるもんな。

 俺はあらためて一ノ瀬の自宅へ電話をかける。


「はい、一ノ瀬です」

「あの、高木です」

 電話に出たのは珍しく一ノ瀬だ。


「高木くん、ちょっと待っててねー」

 そう言ってパタパタと歩く音が聞こえる。


「部屋着いたから、もういいよ、電話しよ」

「いや、俺は今から寝ようと……」


「高木くん、寝るの早すぎ! 私と話したくないの……?」

 何故そんな可愛い声を出す。

「話したいよ、そんなの決まっているじゃないか!」

 こんなもの、こう答える以外の選択肢がない。


「えへへー、そうだと思った」

 嬉しそうな声が聞こえる。

 一ノ瀬も、たまには俺と話したいって思うことがあるのかな?

 だとしたら、本当に嬉しい。


 この頃はメッセージを送るのも一苦労だった。

 だから、すぐに電話をして声を聴く。

 短い案件でも電話になるから、そのせいで会話が増えて仕方なかった。


 昔の方が良かったなどと、言うつもりはない。

 でも、俺は一ノ瀬とたくさん話せるこの日々が、ただ幸せだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまでひたすらに、一人の人を好きになれるというのは、もの凄く幸せで、同時に、呪いのように不幸でもありそう。
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