並走する過去 第7話:憧れとの決別
新入生が入ってきて、生徒会執行部も賑やかになった……。
そう簡単にはいかない。
同時に3年生になった神木先輩達が出て行ってしまうのだ。
世代交代、これは避けられないことである。
中森が神木先輩から生徒会室の鍵を受け取って、会長席に座った。
これからは彼を中心として業務を継続していかなければならない。
当面の大きな行事としては体育祭だ。
まずは体育祭執行部を発足して、スローガンを決める。
……でも、これはもう僕の役目ではない。
生徒会役員選挙の時、僕は副会長になるのを断った。
だから僕はもう、神木先輩の後継者ではないのだ。
当時はその責任の重さに負けた自分の事が嫌で仕方なかった。
でも、今は少し違う。
仕方がない、と思うようになった。
あそこで逃げる程度の人間に、生徒会長など務まらない。
なるべくしてこうなったのだ。
ここから先は、テニス部員として生徒会執行部と関わることに決めた。
一ノ瀬さんと話す機会が減ってしまうのは寂しいけれど……。
僕はまず、自分の事を好きにならなければいけない。
そのために、今までよりも真剣に部活に取り組むことにしたんだ。
生徒会執行部と一ノ瀬さんから少し距離を取るのも悪くない。
僕は優しい環境に甘え過ぎている。
そこから離れることで自分を見つめ直したい。
……だけど、事態は思っていた方向には進まなかった。
しばらくして定例会の日に生徒会室に行くと、おかしな状況になっている。
中森と一ノ瀬さんが居ない。
「あ、高木君!」
「おはよう、奈津季さん、少し久しぶりだね」
珍しく挨拶する前に話しかけてくれた。
そのことは嬉しいけど、不安そうな表情をしている。
「高木君、私どうしたらいいのかな?」
奈津季さんからそんな言葉が出るとは思っていなかった。
「えっ、何かあった?」
「ううん、そうじゃなくて、何もないの……」
詳しく話を聞くと、中森が生徒会室に来なくなったらしい。
正確には来るのだけどすぐに帰ってしまうそうだ。
大場と奈津季さんは変わらずに毎日、生徒会室に来ている。
けど何をすればよいのかわからない、という事らしい。
1年生もちゃんと来ているが、奈津季さんと同じ状況だ。
生徒会執行部が、機能していない……?
「とりあえず、体育祭執行部の募集をかけないと!」
まずは生徒会広報誌を発行する必要がある。
「一ノ瀬さんは?」
「梨香ちゃんも拓斗と一緒に帰っちゃった」
どういうことだろう……。
一ノ瀬さんに後で電話して聞いてみるしかないか。
「定例会を始めます」
なし崩し的に僕が定例会の議事進行をすることになった。
これは本来、中森の役目だ。
だけど、そうも言っていられない。
大場、奈津季さん、そして1年生の意見も聞いて、広報誌の内容を決定する。
体育祭執行部の勧誘方針も決めた。
まずは去年、執行部に入ってくれた人から当たっていく。
その次は1年生を中心に総当たりする。
これは人見知りな奈津季さんと一ノ瀬さんにはやらせたくない。
僕と大場でやるのが妥当だろう。
この日は定例会後も練習には戻らず業務を続けることにした。
「大場、1年生に過去の資料を見せてあげて。
内容をざっと説明してくれるかな?」
「了解、任せて」
大場も奈津季さんも基本的に指示が無いと動けないタイプだ。
だから出来るだけ具体的にやってもらうことをお願いする。
「奈津季さん、広報誌の下書き途中だけど、ここまで清書してくれる?」
「うん、わかった」
僕の汚い字は消しゴムで消され、奈津季さんの美しい文字に置き換わっていく。
奈津季さんの字は習字のお手本のように綺麗だ。
岩倉先輩も字は相当上手かったが、奈津季さんはさらにその上を行く。
広報誌の残りスペースの記事を考えながら、背中に冷たいものを感じた。
今のペースだと、色々な事が間に合わない。
先輩達が居なくなってから2週間ほどだ。
その間の業務が完全に止まっている。
「それ、持って帰るの?」
最終下校時刻が迫っていたので、生徒会室の資料をいくつか鞄に詰めた。
僕自身も仕事の手順で分からないところがある。
でも去年の資料を参考になんとかするしかない。
「うん、続きは家でやる」
「何か手伝えることある?」
奈津季さんはそう言ってくれたけど、これは少し難しい問題だ。
「大丈夫、何か思いついたらお願いするかも」
「うん、わかった……」
奈津季さんも何かしら不安のようなものを感じているようだった――。
「川場高校生徒会執行部の高木です。梨香さんをお願いしたいのですが……」
「あら、高木君。ちょっと待っててね」
その日の夜、一ノ瀬さんに電話をかけた。
最近は特に約束をしていなくても電話ができる。
……普段から用が無くても電話しているせいで母親には覚えられてしまった。
一時期は迷惑かもしれないと思っていた時もある。
でも、電話中の彼女はいつも楽しそうだったから考えるのをやめた。
「高木くん? どうしたの? また声が聴きたくなった、とか?」
「いや、それはそうなんだけど……、今日はちょっと用があって」
一ノ瀬さんの声が聴きたい、それは否定できない。
「中森、最近何かあったの?」
「あー、それね……。どうしよう、私から言っていいのかな」
どうやら、一ノ瀬さんとは何か話をしているようだ。
天真爛漫でいたずら好きな一ノ瀬さんだが、意外と口は堅い。
他の人には言わないで欲しいようなことはちゃんと黙っていてくれる。
今回の件は、中森がどう思っているか判断がつかない、ということだろう。
「最近、生徒会室に来ないことと関係ある?」
「うーん、ごめん、どこまで言っていいか、わからないから……」
それなりに難しい問題なのだろう。
安直に僕に言う事は出来ないということか。
ただ、何か理由があるということは解った。
「それって、しばらく続きそうなのかな?」
「うん……。 出来れば私が何とかしてあげたいと思っているんだけど……」
そうか、一ノ瀬さんが中森を説得してくれているという感じかな。
それなら大丈夫だと思う。
「じゃあ、中森のことは一ノ瀬さんに頼むよ」
「うーん、私にどうにか出来るかは分からないけど……」
少し自信がなさそうに話す一ノ瀬さん。
その気持ちは否定したかった。
「大丈夫だよ、一ノ瀬さんなら出来る」
「ええっ!? なんで?」
力を込めた言葉だけでは届かなかった。
「僕は一ノ瀬さんがとても優しいことを知っているから。
一ノ瀬さんと話すと気持ちが楽になるんだ。
だから、きっと中森の気持ちも変えられると思うよ」
「えー、それは高木くんだけじゃない?」
「絶対にそんなことはない」
ここは言い切っておかないと駄目だ。
「一ノ瀬さんは人の話を聞くのがとても上手いよ。
それに、大事なところで励ましてくれるから、元気になれる」
これは偽りのない、僕の本心だった。
だから心を込めて言葉を紡ぐ。
「それはちょっとほめ過ぎだよ」
「そんなことない! 一ノ瀬さんはもっと自信を持っていいと思うよ」
「……それ、高木くんに言われるとちょっと腹が立つかも」
「なんでだよ!」
でもわかるかもしれない。
僕は誰よりも自信が無かった男だ。
「あはは! 嘘だよ、怒らないで」
「怒ってないよ」
さっきは多少、言い方が強くなってしまった。
だから出来るだけ優しい声を出す。
「ありがと、高木くん。じゃあ、ちょっと頑張ってみるね」
「うん、お願いします」
僕にはこれ以外、打つ手がないと思う。
中森が僕に腹を割って話してくれるとはとても思えない。
「しばらくは一緒に帰れないけど、我慢してよ?」
「……それは、普通に寂しいな」
想像したくない未来だった。
「あはは! 相変わらず、高木くんは素直だねえ」
「しばらくは、電話の回数増やしても良い……?」
一緒に帰る時間が減るのなら、せめて電話ぐらいしたかった。
恋人同士でもないのに、こんなことを頼むのは悪いかなと思う。
「うん、いーよー。私、電話するの好きだし」
あっさりとオーケーを貰ってしまった。
流石だ、一ノ瀬さん。
……やっぱり好きだなあ。
結局、中森の件は一ノ瀬さんに任せるしかないようだ。
その間は今のメンバーで何とかするしかない。
――翌日。
放課後はまず生徒会室へ行った。
昨日の夜に作った広報誌の原稿を奈津季さんに渡して清書をお願いする。
「うん、わかった。出来たらチェックする?」
「ごめん、僕は部活に行かなきゃいけないから、大場に見てもらって」
昨日は1日、練習できなかった。
今日は部活にちゃんと出ないとマズイ。
「えっ、僕?」
「うん、基本的に変な文章じゃないか見てくれればいいから。
誤字があったら奈津季さんに直してもらってね」
本当は自分で確認したいけど、大場なら信用できる。
「終わったら先生にも確認してもらって。印刷までお願いしていい?」
「了解!」
指示は出来るだけ細かく出しておく必要がある。
「1年生は印刷機の使い方を大場に教えてもらうこと。
次からはお願いするから、ちゃんと覚えてね」
「わかりましたー!」
後輩にも仕事をあげないといけない。
せっかく生徒会室に来てくれているのに、仕事が無ければ帰ってしまう。
「印刷が終わったら、各クラスに配布出来るように皆で仕分けして。後は……」
思いつく限りの指示をしたら、テニスコートへ向かう。
自分でも出過ぎた真似をしていることは分かっている。
僕は次期生徒会長候補ではないのにな……。
せっかく出た練習にはあまり身が入らなかった。
いつまでに何をやらなければいけないのかを頭の中に思い浮かべる。
そして、それを次々と作業に落としていく。
駄目だ、分量が多すぎてまとまらない。
やらなければいけないことが山ほどある。
……やっぱり凄いなあ、神木先輩。
これをちゃんとまとめて、皆に分かりやすく指示を出していたっけ。
誰に何を任せれば効率的に進められるのか。
メンバーの得手不得手もしっかり把握してた。
本来、これは中森の役目……、そんな言葉に逃げちゃいけない。
しっかりしなきゃ、今は僕がやるしかないんだ。
部活が終わると部員に挨拶してすぐに生徒会室へ向かった。
1年生はもういないけど、大場と奈津季さんが残っている。
「ごめん、遅くなった!」
「部活なんだから、しょうがないよ」
奈津季さんは優しくそう言ってくれた。
生徒会室中央の机には刷り上がった生徒会広報誌が積まれている。
我が校は1学年9クラス。
配布しやすいように40枚毎、キッチリ27部に分けてあった。
「先生の許可取れた?」
「うん、明日の朝、職員室に持って行くよ」
大場もちゃんとやってくれたようでほっとする。
「次はどうすればいいのかな?」
そう、それなんだ。これを分かりやすくしないといけない。
「大場、奈津季さん、今日はギリギリまで時間とっていいかな?」
そして、3人で話し合った。
カレンダーを持ってきて、いつまでに何をするかを書き出していく。
僕には頭の中で全部を処理する能力が無い。
だから、思いついたことを紙に書きだしていく。
ふたりの意見もしっかりと聞いたつもりだ。
あとは一ノ瀬さんの意見の聞きたい。
昨日の今日で申し訳ないけど、仕方ない。
電話して明日は生徒会室に残ってもらうようにお願いしよう。
ひとりの帰り道は少し寂しかった。
一ノ瀬さんの声が聴きたい。
今日の電話で話す内容を考えながら、仕事の事を思い出す。
そうだ、1年生の育成計画もちゃんと立てないと。
神木先輩はどうやって仕事を教えてくれたっけ。
僕達も最初から出来たわけじゃない。
先輩からたくさんのことを教えてもらった。
同じように、僕たちも後輩に教えてあげなきゃいけない。
まいったな……、本当にやることが山積みじゃないか。
――1週間後。
「では、定例会を始めます」
相変わらず、議事の進行役は僕だった。
一ノ瀬さんによる中森の説得は今も続いている。
仕事の方は軌道に乗ってきてはいるが、ひとつ、大きな問題があった。
体育祭執行部が集まらない。
広報誌で募集もかけたし、勧誘活動はずっと続けている。
それでもイマイチ集まりが悪かった。
「何でだろうね?」
大場が不思議そうに言った。
確かに去年はこれほど苦労していない。
「うーん、こうなったら昼休みに教室回ってみるか」
「そうだね、それぐらいしかないよね」
そんなわけで大場と僕で毎日、1年と2年の教室に行って勧誘活動をつづけた。
それでも、執行部は集まらない。
既定の人数まで生徒会執行部員全員を加えてもまだ7人足りなかった。
このままでは体育祭が中止になってしまう。
それだけは避けないといけない。
「いっそのこと、中止にしちゃえばいいんじゃないですかね?」
それを言ったのは1年の正樹君だ。
「いや……それは……」
いくら何でも、それは歴代の会長に申し訳が無い。
「私もそう思います。
だって、これだけやって集まらないってことはやりたくないってことでしょ?」
続くのは同じく1年の美沙ちゃん。
「体育祭が無い年がある、っていうのもいいんじゃないですか?
そういう前例をつくっちゃいましょうよ」
これも1年の久志君だ。
「えー、でも私の代だけやらないとか寂しい気がする」
唯一、1年生で中止に対して反対をしたのは麻美ちゃんだけだった。
僕と大場は顔を見合わせる。
中止にする、そんな選択肢があるのか……。
「奈津季さんは?」
「うーん、私はやりたいけど……これ以上集められないなら仕方ないと思う」
実情に沿っているのはそっちか。
前例を作る、というのはある意味で悪いことでは無いのかもしれない。
今後の代にとって礎になる可能性がある。
「わかった、じゃあ臨時でアンケートを発行しよう」
タイトルは「体育祭が中止になってもいいのか?」だ。
これで体育祭執行部が集まらなかったら、もう本当に開催の余地がない。
「ただ、アンケートの結果に関わらず、ギリギリまで勧誘活動はしよう」
そんなわけで、僕はしばらく部活を休んで放課後も勧誘活動に専念した。
狙うのは部活に所属していない帰宅部の連中だ。
体育祭執行部に入ると練習が出来なくなるから運動部の連中は嫌がるだろう。
でも結局、なしのつぶてだった。
大場とふたり、途方に暮れる。
体育祭が中止になる……神木先輩になんていえば良いんだ。
自分の力不足が情けなくなった――。
「これは、どういうことだ?」
アンケートの配布が行われた翌日。神木先輩が生徒会室に来ていた。
話している相手は中森だ。その隣には一ノ瀬さんもいる。
「知りません」
中森は毅然とした態度で答えていた。
神木先輩に逆らう姿を見て、素直に驚く。
「知りませんじゃないだろ、会長印が押してある。
これは間違いなく、生徒会執行部が出した正式な文書だ」
神木先輩は怒っていた。いつものような優しい声じゃない。
北上先輩と言い合っている時の声色だった。
「だから、俺じゃないんですよ」
「何だと? じゃあお前以外のヤツがコレを書いて勝手に発行したというのか?」
中森に詰め寄る神木先輩はいつもと違って怖かった。
「すいません、神木先輩!」
この状況で割って入らないわけにはいかない。
「高木、お前は黙っていろ!」
「いや、僕なんです、それを書いたのは!」
中森には非が無い、ここは意地でも庇わせてもらう。
悪いのは僕なんだ。
「黙っていろって言っただろ!」
神木先輩がここまで怒っているのは初めて見た。
「私は拓斗に聞いているんだ。お前が高木にやらせたのか?」
そうか……、僕は後継者じゃないから話も聞いてもらえないのか。
「いえ、俺は……」
「それ以上、拓斗を責めないであげて下さい」
そう言ったのは一ノ瀬さんだ。
「梨香、それじゃ駄目なんだ」
「拓斗は彩音先輩とは違うんです」
あくまでも中森を庇う一ノ瀬さん。
君も大概に、勇敢だな。
「神木先輩、僕が勝手にやったんです、悪いのは僕です」
とにかくこっちを見て欲しい。
それで話をすれば……。
「はあ……」
大きなため息をついて、神木先輩はやっとこっちを見てくれた。
でも、その表情は期待していたものとはまるで違った。
「なあ、高木。本当にお前が勝手に、こんなアンケート出したのか?
お前は体育祭が中止になっても良かったのか!?」
呆れ、失意、絶望、神木先輩の心の中にある感情が分かる。
「それは……」
違う。僕は体育祭が中止になっていい、そんな風には思っていない。
けれど、これは今の生徒会執行部で決めたことだ。
僕がみんなの意見を聞いて、この結論を出した。
だから、責任を取らなきゃいけない。
「そういう前例を作っても良いかと、思いました」
そんな気持ちがあったのも事実だ。
だから、こう答えなきゃいけない。
「そうか……。せめてそこだけは、否定して欲しかったな」
神木先輩は、もう怒っていなかった。
ただ、凄く悲しそうな顔をしている。
「なあ、中森、高木。……お前たちは、何をやっているんだ?」
その問いに、僕はなんて答えて良いか分からない。
「……そうか。わかったよ、悪かった。
勝手にしろ、もう私が口をだすことではない」
そう言って神木先輩は生徒会室を出て行った。
すれ違い様に、先輩が泣いていることに気がつく。
一体、僕は何をやっているんだ。
なんて声をかければ良いか思いつかなかった。
追いかけることも出来ない、そのまま、立ち尽くす。
「俺は悪くない」
しばらくして、中森がつぶやく。
そして、生徒会室から出て行った。
一ノ瀬さんがその後を追っていく。
どうしようもない喪失感だけが残った。
生徒会執行部のために一生懸命頑張ったつもりだったのに。
僕がしたのは余計なことだったのかな。
無性に寂しくなった。
こんな時は、一ノ瀬さんに隣に居て欲しい。
ああ、でも彼女は今、中森の傍にいるのか。
「おはようございます!」
久志君が生徒会室へ入ってきた。
彼は何も知らないし、何も知る必要はない。
「おはよう、久志君」
僕は感情を押し殺して出来る限りの笑顔で答えた。
中森は大丈夫かな……。
理不尽な事は今までもいっぱいあった。
これが、現実なんだ。
諦めるしかない。
僕がテニス部を辞めなかった時点で、こうなると決まっていた。
……後悔しかない。
何故、僕はあの時、神木先輩の手を取らなかったのだろう――。
こんなことがあったのに、この年の体育祭は中止にはならなかった。
神木先輩が3年生の元応援団、チア部に協力を頼んでくれたからだ。
上級生からの号令で、体育祭執行部はあっという間に集まった。
先輩はこのカードを持った上で、僕たちの事を信じてくれていたのだ。
僕は、あんなに優しくしてくれた神木先輩に対して。
恩に報いるどころか、仇で返してしまった。
このことは、多分一生、忘れられないだろう。
この手からすり抜けてしまったものは、もう戻ってこないのだと思い知った。




