並走しない過去 第5話:拒絶旅行
出張中の事件から2か月がたった。
怪我は無事に治ったし、幸いにして処分が下されることはなかった。
だけど上司との軋轢は決定的なものとなり、現在は部署が変わっている。
幸いにして誰かが責任を取る、みたいなことには成らなかった。
始末書や再発防止策なんかの書類はかなりの量を書くことになったけれど。
一ノ瀬は相変わらず、自宅に帰らずに俺の家にいることが多い。
一応、気を使って彼氏と話す時は家の外に出てくれる。
……どんな話をしているか、気にならないと言えば嘘になる。
けれど、聞かない方が良いということは良く分かっていた。
そんなことをしても傷つくだけだというのは理解している。
あれ以来、俺は寝室には入っていない。
あそこはもう、一ノ瀬の部屋だ。
リビングルームで寝ることにも慣れた。
元々、一人暮らしをするには十分すぎる広さだったから苦にはならない。
そんな日々の中、一ノ瀬から信じられない提案があった。
「ねえ、高木くん、明後日に休み取れる?」
唐突な休暇の話は少し困る。
休暇を取ることそのものは難しい事じゃない。
けど、そのために仕事の予定を調整する必要があるのだ。
「んー? 今からだと少し厳しいけど無理じゃないよ」
でも、一ノ瀬の無茶ぶりにはもう慣れている。
「じゃあさ、旅行しない? 2泊3日だよ」
本当に、この女は予想外なことばかり言う。
「それはむしろ行きたいけど……。なんで?」
下手に理由を聞かないでふたつ返事で受けてしまえば良かった。
「彼氏にドタキャンされた」
「はあ!?」
何でそんなヤツが良いんだよ。と思ってしまう。
俺なら絶対に一ノ瀬との予定をキャンセルなどしない。
「キャンセル料は全部出してくれるって言ってるんだけどね。
せっかくだから行きたいなー、って。
だから高木くんの負担はキャンセル料の差分と交通費だけでいいよ」
……医学部に通うような奴は平気でキャンセル料を払えるぐらいお金をもっているのか?
それはともかく、この提案はおかしい。
「いや、そういう問題じゃないだろ」
「えー、駄目……?」
上目遣いで聞いてくる、一ノ瀬。
この態度があまり好きじゃない。
色仕掛けなどせず、普通に頼んでも俺は応じるというのに。
「そもそも、俺とふたりでいいのかよ。女の友達とかでもいいだろ?」
わざわざ俺と行く理由が分からない。
「やだよ、だって気を使うじゃん」
「なんで俺ならいいんだよ」
女友達と行くよりも男の俺の方が気を使わなくて済むとはどういう理屈だ。
「いや、だからそんなのどうでもいいんだって。
高木くんが、私と行きたいかどうかだけ聞いているの!」
身も蓋もない返答だった。
「そりゃ、行きたいにきまっているじゃんか」
一ノ瀬とふたりきりで旅行なんて楽しいに決まっている。
だけど、簡単に頷いて良いものなのか。
「じゃあ、決定! 休みとってね!」
「まあ、いいけどさ。……それって彼氏に許可とってるの?」
普通なら絶対に嫌がると思うのだが……。
「そんなの言わなきゃわかんないじゃん。
友達と行くっていえば嘘じゃないし」
……駄目だろ、それ。
しかし、これ以上言ったら「じゃあいいよ!」と言われかねない。
……不倫する人の気持ちが少しわかってしまった。
まあ、そもそも俺の家に入り浸っている時点でおかしい話か。
それに一ノ瀬は結婚しているわけじゃないしな。
結局、俺は見事に誘惑に負けて旅行についていくことにした。
――2日後。
行先は完全に一ノ瀬の趣味だった。
まあ、俺は特に行きたい場所などないし、旅行の予定を立てるのは上手くない。
大学の頃は友人達が立てた旅行の計画にふたつ返事でついていったものだ。
一ノ瀬が楽しそうにしているのならば、それだけで俺も楽しかった。
移動時間も会話は尽きないし、観光地巡りも悪くない。
食べたいと言っていた甘味も美味しかった。
やはり、一ノ瀬と一緒に居ると時間が過ぎるのが早い。
来て良かったと思う。
問題は宿だった。
当然だけど同じ部屋で寝ることになる。
大丈夫かな、俺。
一ノ瀬はしょっちゅう俺の家に泊まりに来ている。
でも、部屋も別だし、当然のように同じ布団で寝ていない。
「おー、凄い、部屋広い! やっぱり旅行はこの瞬間が一番だね」
チェックインして部屋に入るなり、扉を開けて回る。
まあ、その気持ちはわかるけどな。
「温泉楽しみだねー!」
無邪気な表情で荷物を広げる。
コイツは本当に、何も考えていないんだろう。
着替えの浴衣とタオルを持って大浴場の前で立ち止まる。
「なんだか、恋人同士みたいだね」
嬉しそうな顔をしている。
お前がそれを言うなよ。俺は、ただ胸が痛いだけだった。
一ノ瀬のことを好きじゃなかったら……。
大学の友人と旅行した時と同じように、ただ楽しめたのかな。
「どうせ俺の方が先に上がるから、鍵開けて待っているよ」
鍵はフロントに預けても良かった。
だが、面倒なので大浴場の横に小さなコインロッカーに預けてある。
「うん、よろしくー」
そう言って手を振っている姿を見ると、やはり可愛いなと思ってしまう。
今はもう、そう思うだけで胸の奥が痛い。
素直な気持ちで彼女を見ていられた頃に戻りたかった。
「ゆっくりしてきなよ」
誤魔化すように、出来るだけ優しい声をかける。
「うん、また、あとでね!」
男湯と女湯に別れて入っていくのは確かに、恋人同士みたいだ。
……本当に、そうだったらどんなに良かっただろう。
夕飯はふたりで晩酌しながら頂いた。
一ノ瀬は結構飲めるから、普通に楽しい時間だ。
今だけはもう何も考えないようにしよう。
一ノ瀬が他の誰かのものである、そんなことは関係ない。
美味しいご飯を食べて美味しいお酒を飲みながら、楽しい話をする。
今はこうやってふたりで居られるのだからそれだけでいい。
夕飯を食べてほろ酔いで部屋に戻る。
一ノ瀬は自販機で梅酒を買っていた。
「じゃあ、俺も麦酒買おうかな」
「えー、まだ麦酒なの? お腹いっぱいにならない?」
良く言われるけれど、俺は麦酒が好きなのだ。
「麦酒は別腹だ」
「そんなの聞いたことないよ!」
そういって大笑いしていた。
夕飯から部屋に戻ると布団が敷いてあった。
……見事にくっついてんな。
まあ、普通、男女ふたりで来ればそうなるか。
「高木くん、こっち!」
そう言って広縁の椅子に腰かける。
一ノ瀬は温泉宿の椅子とテーブルがある、あのスペースが気に入っていた。
窓の外は見事な星空が広がっている。
天気が良かったのも幸いだった。
俺も一ノ瀬の対面に腰を掛けて一息つく。
「今日は楽しかったねー」
「そうだな。……まあ俺はお前と一緒に居れば何をしてても良いけど」
嬉しそうに笑う一ノ瀬を見ていると少し照れる。
「それはそれは。高木くんは私がいれば何でもいいんだね」
「そりゃそうだろ」
対して一ノ瀬は全く照れる様子もない。
「うーん、お手軽でいいけど、他にしたいこととかないの?」
麦酒を傾けて考える。
少し赤くなった一ノ瀬、肌が白いから目立つんだよな。
ニコニコしながらこっちを見ている。
……これ以上、欲しいものなんかあるわけ無い。
「俺は、お前が居ればそれだけで嬉しい」
あまり……こんなことは言わない方が良いのかもしれない。
でも、近い将来。
こうやって気持ちを言うことも出来なくなるんだろうな。
皮肉な話だ。
いつか居なくなるとなると解っているから。
今、目の前にいる一ノ瀬がたまらなく愛しく映る。
「つまんない人だねー。でも、高木くんらしいか」
「悪かったな、つまんなくて。で、明日はどうする予定なんだ?」
受け答えはそっけないが、一ノ瀬の表情はずっと柔らかかった。
「明日はね、ノープランなの」
「はあ?」
「せっかく良い温泉宿に泊ったんだから、1日のんびりするんだよ」
ようするに宿で1日過ごす、ということか。
まあ、それも悪くないだろうけど……。
この年の恋人同士がどんな過ごし方をするか考えると憂鬱だった。
コイツはもともと、彼氏とそれをするために来たかったんだろうな。
興がそがれた。
萎えた、という表現が適切かもしれない。
こんな気持ちになるのは嫌なのに、嫉妬心が胸の奥に広がっていく。
「どうしたの?」
心情が顔に出てしまったようだ。
でも、もうどうしようもない。
「悪い、なんでもない……」
それ以上、言えなくなってしまった。
「もう、寝よっか」
そう言って一ノ瀬は残った梅酒を飲み干した。
フラフラとした足取りで布団の方に向かう。
「大丈夫か?」
心配になったので後を追う。
「うん、大丈夫ー。歯を磨いてくるね」
酔っぱらった、というよりは少し眠そうな感じだ。
「ああ、わかった」
大丈夫そうなので広縁に戻って残った麦酒を飲み干した。
窓の外の星空をぼんやり眺める。
……学生の頃に戻りたいな。
あの頃だったら、下衆な想像をすることもなかった。
こんなにも嫌な気持ちになることは無かっただろう。
一ノ瀬が戻って床に着いたのを確認して、自分も歯を磨きに行くことにした。
ふと気がついて足を止める。
……布団、離した方が良いよな。
「いいよー、そのままで」
布団を掴むと一ノ瀬が静止した。
意味が解らない。
……きっと意味は無いんだろうな。
面倒なことはしなくても良い、そんなレベルの気遣いだったのだろう。
世に「女の敵」という言葉はあるが「男の敵」という存在があるとしたら。
まさにこの女だ。
無防備に誰彼も誘惑する癖に、全く責任を取らないのだから。
……冗談だ。
悪いのは彼女に惹かれてしまう俺。
そんなの、わかっている。
「戻る時に電気消してきてねー」
仕方なく布団をそのままにして歯を磨く。
戻り際に常夜灯――小さい電気を残して消灯した。
俺は全部消す方が好きだけど、一ノ瀬は真っ暗にすると怖がる。
一ノ瀬のすぐ隣の布団に入るのは抵抗があった。
けど、嬉しくないと言ったら嘘になる。
今でも彼女のことは好きなのだ。
近くに居られれば居られるほど嬉しいに決まっている。
一ノ瀬を方を見ないように布団に入った。
背中を向けて寝てしまえば、余計な感情が溢れることもないだろう。
「ねえ、手を繋いであげようか?」
何で平気でそんな事を言えるのかな。
「いいのか?」
思わず一ノ瀬の方を見た。
「ばーか、嘘でしたー」
そう言って、意地悪そうに笑う。
そうだよなあ……。
一ノ瀬は手を繋ぐのは好きじゃないと言っていた。
自由が妨げられる気がして嫌なのだと。
俺は手を繋ぐのが好きだった。
触れていれば近くに居る事を感じられるから。
多分、恋愛に対して求めているものが違う。
一ノ瀬にとって恋愛は娯楽のようなものだ。
人生の全てじゃない。
彼女には叶えたい夢があり、その道を進むことが全てだ。
だから、必要であれば恋愛も切り捨てるだろう。
でも、俺は違う。
たとえ他の全てが台無しになったとしても、一ノ瀬だけは失いたくない。
思わず、涙が出た。
手を繋げなかったからじゃない。
手を繋ぎたいと思ってしまったからだ。
そう出来たら、どんなに嬉しいだろうと考えてしまった。
一ノ瀬に悪気が無いことは分かっている。
こういう気持ちは無くさないといけない。
もしも、一ノ瀬のことを好きじゃなくなれば……。
もう少し一緒に居られるかもしれないからだ。
多分、この想いは力の限り矛盾している。
好きじゃなくなったら、一緒に居たいと思わなくなるだろう。
「ごめん、そんな顔、しないでよ……」
一ノ瀬の手が頬に触れた。
思わずその手を払ってしまう。
やめろ、半端な優しさは、お互いに傷つくだけだ。
寝返りを打って一ノ瀬に背中を向けた。
もういい、このまま寝てしまおう。
それぐらいしか、救われる道はない。
そんな俺を一ノ瀬は背中から抱きしめた。
暖かい温もりが背中いっぱいに広がる。
同時に、一ノ瀬の甘い匂いが溢れてきた。
嬉しくてたまらないのに、胸が痛い。
もう、素直に喜ぶ事すら出来ないのか……。
「いじけないでよ」
一ノ瀬にとっては優しさだったのかもしれない。
けれど、それは俺の気持ちを全く理解していない行為だった。
一ノ瀬の両手を取って組み敷く。
俺だって、男なんだ。
「高木くん……?」
「俺は、お前のことが好きだ」
浴衣がはだけて下着が見えた。
「やめて……」
片足の膝を一ノ瀬の両足の間に差し込む。
「……怒るよ!」
一ノ瀬は抵抗しようとするが簡単に抑え込めた。
学生の時よりも力の差がある。
「お願い、高木くん、やめて……」
俺はただ、わかって欲しかっただけだ。
俺がどんな気持ちでお前の傍にいるのかを。
でもそれは……、俺の勝手な想いだよな。
「ごめん、一ノ瀬……」
俺は掴んでいた手を離した。
一ノ瀬は俺を突き飛ばしたり、逃げ出したりしなかった。
はだけた浴衣を静かに直して、こういった。
「ごめんね、高木くん」
俺たちは、いつからお互いに謝るようになったのだろう。
俺はそのまま一ノ瀬に背を向けて泣いた。
もう一度、背中が暖かくなることはない。
果てるまで泣いて、そのまま眠りに落ちた。
――翌朝。
俺は平謝りした。
お酒が入っていたのもあるだろう、感情が昂ってしまったのだ。
でも、心から悪いとは思っていない。
「ばーか、死ね! 絶対許さない」
口ではそういっている一ノ瀬だが、本気で怒っているようには見えなかった。
その日はほとんど宿の中で過ごした。
朝ご飯を食べて、温泉に入った後、卓球をする。
「やっぱり温泉宿に泊まったらこれだよね!」
一ノ瀬はしきりに勝負をしたがったが、俺は普通に相手をしてやった。
出来るだけラリーが続くようにボールを返す。
隙あればスマッシュを打とうとするのはいつも一ノ瀬だ。
流石に一日中外に出ないのもつまらないので、少しだけ外にも出た。
浴衣姿で温泉街を散歩して、お土産屋さんを覗き込む。
季節限定、ご当地物に弱い一ノ瀬は見ているだけでも楽しそうだった。
近所のお店で少し遅めの昼ご飯を食べつつ、お酒を飲む。
「昼間から飲む酒ほど格別なものは無いよな」
「その感覚、おっさんそのものだよ」
今も働いているであろう同僚のことを考えると少し背徳感がある。
だからこそたまらない。
これは一ノ瀬には分からないだろう。
「これで今日は何も出来なくなった!」
「駄目人間だねえー」
そう言って、一ノ瀬は楽しそうに笑った。
ほろ酔いで宿に戻ったら、再び温泉に入って昼寝をする。
一ノ瀬は昼寝が好きだった。
寝つくまでは隣で話をする。
俺の声を聴くと眠くなるから丁度良いと言っていた。
一ノ瀬は会話中でも普通に寝る。
俺は彼女ほど寝るタイプではなかったので、悪趣味にも寝顔を眺めていた。
別にいたずらなどしない。
俺がアイツの彼氏だったら、頭を撫でるぐらいはしたかもしれないな。
寝息を立てているの見て、広縁に移動した。
布団で寝ている一ノ瀬を遠くから見ながらぼーっとする。
俺も、うたた寝ぐらいはしていたかもしれない。
こういう時間も嫌いじゃない、やっぱり一ノ瀬と一緒に居れて良かった。
夕飯前に宿の設備にあったカラオケで楽しむ。
「やっぱり高木くん、音痴だよね……」
「うるさいな、前よりマシだろ?」
ふたりで過ごせるぐらい歌えるようになったのは評価して欲しいところだ。
「高校生の頃は酷かったもんねー。マイク持つ手が震えてたし」
「いつまでもそれを言うなよ」
昔話に花を咲かせるのも楽しかった。
俺と一ノ瀬だから出来る。
そういえば、当時の生徒会執行部の話もしたな。
今頃、他の皆は何をしているのだろうか。
夕飯はまたしても晩酌だった。
ふたりで過ごす時間はただ楽しい。
その夜の布団は離して敷いた。
朝までお話しよう、という一ノ瀬の提案は却下し、電気を消す。
お互い、手が届かない距離まで離した布団に潜り込んで話をした。
「私ね、本当は彼氏と来たかったんだ」
「何をいまさら、そりゃそうだろう」
一ノ瀬は急にしんみりとした話を始めた。
「でもね、高木くんと一緒なのも楽しかったよ」
「そっか、それならよかった」
友達と出かける旅行としては問題なかったとは思う。
「昨日のことは許さないけど」
「……それは済まなかった」
言葉は厳しいけど、やはり怒っているようには感じなかった。
「ねえ、高木くん。私のこと、好き?」
一ノ瀬は、頻繁にこう聞いてくる。
答えなんて、わかっているくせに。
「好きだよ」
だから、俺はいつも間髪を入れずに心から優しさを込めて答えていた。
「あははは、やっぱり即答だ」
そうすると、いつも一ノ瀬は嬉しそうにする。
この言葉で笑ってくれなくなったら、それが最後なのだろう。
「私が高木くんのことを好きだったら、幸せだったのにね」
もしも、そうだったら。
幸せなのは俺だけじゃない、きっと一ノ瀬もそうだと思う。
「一ノ瀬は悪くない」
俺が言えるのは、それだけだ。
「高木くんはずっと私の傍に居てくれる?」
「俺は今までも、これからも、ずっとお前の傍に居たいと思っているよ」
明日は帰らなきゃいけない。
彼氏と来れなかった――。
きっとそのことを今さらながら寂しく感じたのだろうな。
でも……俺にはその隙間を埋めることが出来ない。
やっぱり、俺じゃ駄目なんだな……。
「ありがとう、高木くん」
お礼を言ってくれるのはいつでも嬉しかった。
一ノ瀬のために出来ることがあるのなら、何だってしたかった。
「でも……もう旅行には誘わないね。
私、高木くんをこれ以上傷つけたくない」
ああ、そうだな。
俺たちはきっと、こうやって離れていくんだ。
もう、何をしても距離を縮めることが出来ないと分かった。
俺は一ノ瀬にどんなに傷つけられても構わない。
でも、そのせいで、一ノ瀬が傷つくというのなら。
俺は何も望まない。
傍に居てはいけないと言うならそれも受け入れる。
ただ、せめてその時までは。
お願いだから君を好きでいさせて欲しい。
ごめんな、一ノ瀬。
俺がお前のことを好きじゃなければ、お前が傷つくことも無かったのに。




