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第五十二話(ミア視点)

聖女国際会議(セイント・サミット)……ですか?」


「ああ、そうだ。ボルメルン王国の聖女エミリー・マーティラスが提案した国際会議でな。この機会に各国の聖女たちの意見交換をする場を設けたいと言っておってな」


 大破邪魔法陣によって各国の聖女の活動時間が余っている。

 その時間を利用して、次にこのような危機が訪れた時のために私たちの力の底上げをしようという発想らしい。


 確かに、フィリア姉さんの魔法陣によって私たちの自由な時間は格段に増えた。修行に修行を重ねても余裕があるくらいに。


 だけど、エミリーって……あの生意気なグレイスの姉なんでしょ? フィリア姉さんに凄い対抗心を燃やしてるって聞いたけど、そんな人が中心となって大丈夫なのかしら。


「聖女エミリーの名前は存じています。名門であるマーティラス家の歴史の中で最も優秀で才能も豊かな努力家だと。現役の聖女では1番フィリアに近い能力の持ち主でしょうね。そんな方が呼びかけているのです。参加することに意義はあるのかもしれません」


 ヒルダお義母様……エミリーのこと知っているんだ。

 さすがに現役を退いた期間があるとはいえ、長く聖女をやってただけあって、他国のことも詳しいのね。

 それにしても、エミリーの評価がそんなにも高いとは……。フィリア姉さんの次ってことは、少なくとも私よりは上ってことか。

 確かにグレイスもあの年齢で古代語の知識もあるのだもの。その姉ってなると力もさらにもの凄いってなるわよね。


 でも、よく考えたら聖女が集まるってまずいんじゃない? だって今は――。


「神隠し事件であろう? ミア、君は顔に不安などがすぐに出るな」


「も、申し訳ありません。フェルナンド殿下。しかし、恐らく開催はパルナコルタ王国になりますでしょうし。そうなると――」


「フィリアに何か起こるかもしれないと、そう懸念しているのですね?」


 私の心配事をヒルダお義母様とフェルナンド殿下は即座に見破る。

 平和ボケしてポーカーフェイスも出来ないなんて……ユリウスと婚約していたときは多少は感情を隠せていたのに情けない。


「その懸念は尤もだ。パルナコルタ側も大聖女であるフィリア殿の護衛に騎士団が加わっているらしい。開催地がパルナコルタとなることも既定路線となっており、エーゲルシュタイン国王は特例として各国の聖女の護衛隊を受け入れることを認める方向で動いている」


 良かった。フィリア姉さんにはヒマリたちが付いてるから大丈夫だと思っていたけど、あのパルナコルタ騎士団も守ってくれてるなら安心出来る。

 まぁ、姉さん自体が完璧すぎるくらいに強いから本当は護衛とか要らないかもしれないけど……。


「それでは、その聖女国際会議(セイント・サミット)――最初の議題は神隠し事件の解決方法になりそうですね」


「神隠し事件の解決方法ですか? お義母様」


「魔力を持つ若い女性が次々と狙われているこの事件。私は年齢的にターゲット層から外れていそうですが、聖女の多くは当てはまるはず。とすると、自衛するにも情報交換はしておこうと誰もが思うはずです」


 なるほど。確かに私もフィリア姉さんもグレイスも神隠し事件で消えた女性たちと年齢層は被ってる。

 確かに身を守ることを含めて情報交換することは解決への糸口を手繰り寄せることになるか……。

 でも、情報交換は良いけど、この国を数日間も空けて大丈夫なの? 私たちが居なくて何かあったら……。


「当然、ミアとヒルデガルトには聖女国際会議(セイント・サミット)に出席してもらうぞ。有益な情報を手に入れられるかもしれんからな」


「承知しました」

「しかし、殿下……」


「口惜しいが……ジルトニアは聖女に頼りきっておる。ミア……君の成長がそのままこの国の成長となるのだ。国のために各国の聖女から学んで来てくれ。――とはいえ、数日くらい我らだけでも国は守ってみせる」


 フェルナンド殿下は国のために出席せよと命じました。


 ――私の成長がそのまま国を成長させる。


 そうね。どこまでも国の発展のために尽くす事こそ、フィリア姉さんの背中を追うことだもの。

 

 それに、パルナコルタに行ったらまた姉さんに会えるし。それは、それで楽しみかも。


「先に言っておきますが、遊びに行くのではありませんよ」


「嫌ですわ。お義母様……私はそんな浮ついた考えをしているように見えますか?」


「魔力の揺らぎを見れば、分かります」


「えっ? そ、そんなことまで分かるのですか?」


「――嘘に決まってます。まったく、こんなブラフにも引っかかる様では技術面が伸びてもまだまだですね」


 うわぁ……。一本取られたというか、なんというか……。

 お義母様が真顔でそんなこと言ったら誰でも引っかかると思うけど。

 多分、フィリア姉さんも……。


 いや、姉さんなら真顔でそんなことは出来ないって言うかな? ううん、姉さんなら本当に出来そうで怖い……。


「浮ついていたのは認めますが、お義母様もフィリア姉さんには会いたいのではありませんか?」


「否定はしません。あの子も成長しているでしょうから」


 それから、間もなくして……聖女国際会議(セイント・サミット)はパルナコルタで開催が決定して、私たちはフィリア姉さんのいるパルナコルタ王国へと向かった――。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすくサクサク読める 内容も個人的に好き キャラがたっている しっかり構成して書いてるためか今後の展開にも期待できる [気になる点] 個人的にはもう少しガッツリ掘り下げてもいいかなと言…
[一言] 急に秋も深まりましたね(笑) 野外の夜勤生活者には堪える季節ですww どうぞご自愛下さいねー。
[一言] 更新お疲れ様です。 フェルナンドさんの精神面の成長が一時的なものでなくて、なにより…。あとエミリーも本格的参戦ですか。 これはこれで嬉しいし、ちょっとどきどきしますね。
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