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【WEB版】完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる【アニメ化!漫画7巻7/25発売!】  作者: 冬月光輝
第二部・序章

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第四十七話

「フィリア様~。何をされているのですか? あーっ、可愛いネックレスですね。どこで買われたのですか?」


 私がネックレスを触っていると、リーナが話しかけてきました。

 これは、私が買ったのではなく――。


「時間が空いたので、作ってみたのですよ。ブレスレットや指輪もあります」


 最近の私は装飾品を作ることで時間を潰したりしています。

 本を購入し……それを読みながら魔力を使って金属や魔石を加工して色々な装飾品を作りました。


「あのフィリア様がついにオシャレに目覚めてくれました~~。ぐすん……」


「リーナさん、今の話に泣くような要素が見当たらないのですが……」


「だってぇ、フィリア様ったら……服とかアクセサリーとか、お化粧にもまるで興味がなかったじゃないですか~~!」


 涙ながらに私がオシャレに無頓着だったことを語るリーナ。

 彼女の仰るとおり、私は身に着けるモノに特にこだわりがありません。

 仕事着のローブが数着と、動きやすい格好に寝間着……これらが揃っていれば後は特に何か買おうとか思わなかったのです。


 なので、先日……ミアやグレイスが来ていたとき、半ば強引に王都の衣服店で買い物をさせられて、そのあとに化粧品を買わされて……とにかく慣れないことを多くしました。


 ミアは今年流行っている色はこれだとか、こんな風に着るのがオシャレとか、丁寧に説明するのですが、ビックリするくらい理解出来ません。古代術式よりも遥かに難しいのですが……。


 リーナはそんな私を知っているから、このような反応ということでしょうか。それを踏まえても泣く理由が分からないです……。


「こちらのネックレスは自信作です。リーナさん、貰って頂けませんか?」


 私は紫色の魔石が光るネックレスをリーナに手渡しました。

 彼女はキョトンとした表情でソレを眺めます。


「えっ? えっ? い、良いんですかぁ? こんなに素敵なネックレスを頂いても!?」


「はい。このネックレスはリーナさんに相応しいと思って作りましたから」


「フィリア様~~!」


 リーナのためにネックレスを作ったと述べると、彼女は力強く私を抱きしめてこられました。

 ここまで喜ばれると逆に恐縮してしまうのですが……。


 リーナは上機嫌そうにネックレスを身に着けて、鏡の前でニコニコしながらそれを眺めていました。



 ◆ ◆ ◆



「よう! フィリア殿! うちの畑で採れた野菜だ。レオナルドの奴に渡しといてくれ!」


 リーナにネックレスを渡した日の夕方、オスヴァルト殿下が野菜をたっぷり持ってこられました。

 

 オスヴァルト殿下はあの日――私をジルトニア王国に強引に連れて行ったとして、ライハルト殿下とエーゲルシュタイン陛下に怒られてしまったらしく、その後しばらくの間……政治や軍事への発言を禁止させられてしまったとのことです。フィリップたちが私を護衛することに関しては、別みたいでしたが……。


 私が彼に謝ると、彼は『フィリア殿を泣かせたら一生後悔すると思っただけだ。後悔はしてない』とだけ答えて、それ以上は何も言われません。


 彼は趣味である農業に専念するようになり、私も良く彼を手伝うようになりました。


「フィリップたちとは上手くやってるか? あいつら、俺と同じでガサツだからさぁ。フィリア殿に迷惑かけてねぇか心配してんだよ」


「ふふっ、フィリップさんも騎士団の皆さんも紳士ですよ。この前はあの高い木から降りられなくなった子猫の救出作業を行っていまして……」


「なんだそりゃ。真面目に護衛してくれねぇと困るぜ」


「いえ、屋敷の者が総出で庭に出ておりましたから……安全でしたよ。国のどこよりも……」


「そっか。なら良かった」


 オスヴァルト殿下は野菜を届ける度に世間話をして行かれます。

 私は彼と話をする数十分が好きになっていました。

 殿下は謹慎に近い扱いを受けているにも関わらず、その状況を楽しみ……前を向いています。私もそのような精神を大切にしたいです……。



「そうだ。フィリア殿……兄貴から退魔師がダルバート王国から、こちらに来る話は聞いたかい?」


「ライハルト殿下から……ですか? いえ、存じ上げません。しかし、退魔師ですか……。ダルバート王国にはまだそういった生業の方がいらっしゃるのですね」


 退魔師――悪霊退治の専門家と呼ばれる職業だとは聞いたことがありますが、会ったことはありません。

 そもそも悪霊というもの自体の存在について、怪しいと思われていることが通説だからです。私もそれには懐疑的でした。


 しかし、このタイミングで私の元に来られるということは――。


「まさか、神隠し事件が悪霊の仕業とでも……」


 不可解な現象を悪霊のせいだと考えることは不自然ではありませんが、些か信憑性に欠けます。ですが、退魔師が来る理由は他には思いつきません。


「半分正解だ。こちらに来るという退魔師はクラムー教会の本部にある裏組織とやらに所属している連中の一人らしい。そいつの専門は悪霊じゃなくて、()()退治。悪魔ってのは魔界の住人なんだってよ。教皇様が直々に大聖女を守るように命令を下したんだとか」


 悪魔ですって……? 確かに古代の文献にも多く悪魔に関する記述はありましたが……まさか、地上にそんな存在が居るなんて……。


 でも、教皇がわざわざ命令を出すということは本当なのでしょう……。



 一人の退魔師との出会い。

 この出会いのおかげで、私たちは大陸全土で起こっている事件の真相に急速に近付きました――。

 魔界の接近の影響は魔物たちの増殖だけではなかったのです――。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私は彼と話す時間が・・・おや、これはオスヴァルト一歩リードでしょうか。 あと、予想は多少はしてましたけど、流行に疎いどころか呪文の類ときたか、フィリアww
[良い点] フィリアも仕事漬けでない、穏やかな余暇を楽しむことができるようになってきたようで良かったです。 聖女謹製の魔石を使ったネックレス、はたして普通のアクセサリーなのか、この先何か大きな力を発…
[一言] 退魔士登場ですか… 魔物だけの問題じゃ無くなって来ましたね(^_^;) しかし、オスヴァルト殿下はいきいきしてるなぁ(笑)
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