第四十六話
第二部を開始します。
今までのように毎日更新は難しいですが、頑張りますのでよろしくお願いします!
「神隠し……事件ですか?」
大破邪魔法陣の拡大から3ヶ月と少し過ぎた、ある日のこと……パルナコルタ騎士団の団長であるフィリップが私の元を訪れました。
彼によると……最近、大陸全土で魔力を保持している女性が相次いで消えるという事件が発生しているみたいなのです。
「左様でございます。フィリア様はパルナコルタ……否、大陸全土で最も高い魔力を持っている女性。ライハルト、オスヴァルト、両殿下の命により、私を含めて騎士団員が数名……屋敷を警護させて頂きます」
フィリップは背筋をピンと伸ばして、私の警護を増やすと口にされます。
レオナルドやリーナ、それにヒマリもいますし、私もそれなりに自衛は出来ますので、他の方の警護をされた方が良いと思うのですが……。
「何を仰る。大聖女フィリア様は既にパルナコルタだけでなく、近隣諸国すべての命運を握っている御方なのですよ。我々が警護をしても少なすぎる程です」
大破邪魔法陣は私がこの場から消えると効果を失います。
フィリップはそのことを述べているのでしょう。
「わかりました。ご無理をなさらずにくれぐれもご自愛を……」
「残念ながらそれは承服できかねます。我々騎士団、いや……レオナルド殿たちも含めて命を賭してフィリア様をお守りする所存ですから」
「仕方ありませんね。では、私もフィリップさんたちを守ってご覧にいれます」
「むむっ……。オスヴァルト殿下の仰るとおり、フィリア様は時々頑固であらせられる……」
――魔力がある女性が姿を消す神隠し事件。
誰がどのような目的でことに及んでいるのか……私も調査する必要がありますね。
ミアやグレイスも狙われる可能性がありますから――。
◆ ◆ ◆
「パルナコルタでは、3名。ボルメルンでは5名、ジルトニアでは2名……。現在確認されてるだけで大陸全土で40人近い被害が出ている様です」
フィリップが警護を開始して一週間後……ヒマリは事件について調査して下さった内容を私に知らせてくれました。
「攫われた女性の年齢はおおよそ15歳から25歳くらいに収まってます。女性だけを狙うだけでなく、この年齢層にも何か意味があるのではと……国際調査チームは考えているみたいです」
「ふーむ。犯人のストライクゾーンですかな」
「やだー、レオナルドさん。発想がいやらしいです」
ヒマリの話を聞いて、リーナとレオナルドも腕を組んで考え込む仕草をしました。
ストライクゾーンはよく分かりませんが……魔力の波長は年齢や性別によって変化します。
私も魔力を感じるだけで大体の年齢と性別を当てることが出来ますから、犯人もその年齢層の女性の魔力を欲しているのは明確でしょう。
魔力を欲する理由……。それさえ解れば事件解決の糸口に繋がるのでしょうが……。
「あと、2点ほど気になることが……」
「気になる……ことですか?」
ヒマリはさらに気になることがあると私に伝えられました。
何でしょう……。神隠し事件と関係があることなのでしょうか……。
「大破邪魔法陣によって各国の聖女の活動時間が余っています。その時間を利用して、次にこのような危機が訪れた時のために、聖女たちの力の底上げや国際的な意見交換をする場を設けようという動きが出ております。聖女国際会議と呼ばれるものを開催したいみたいですね」
確かに、私の魔法陣によってミアやグレイスは暇になったと言っていました。修行が捗っているとも……。
聖女とは基本的に激務。休日は体を休めることだけで精一杯という方も多いと聞きます。
この長い休暇を利用して、国境を超えて自己を高めるのも良いかもしれません。
「へぇ、てことは……そのサミットととやらはパルナコルタで行われるってことですよね?」
リーナは当然、聖女国際会議はこの国で行われると決めてかかりました。
なぜ、この国で行われるのでしょう? ダルバート王国みたいな大国で行ったほうが有意義だと思うのですが……。
「フィリア様、それではフィリア様が参加出来ないではないですか」
「そうですよー。みんなフィリア様に会いたくて参加するんですから」
「そ、そうなのですか? 皆さんが私に……?」
「大陸を救った大聖女様ですからなぁ。同業者なら会いたいと思うでしょう」
リーナとレオナルドはパルナコルタの王都から出られない私に合わせて、この国でサミットは開かれると予測されました。
しかし、聖女が集まるということは――。
「魔力を持つ女性が多く結集する可能性があるのですね。このパルナコルタ王国の王都に……」
「左様です……」
ヒマリは私の言葉に頷きます。
聖女の年齢も様々ですが、20歳前後の方が最も多い――つまり、神隠し事件の被害者の年齢層と重なるということです。
これは、サミットの開催自体も考えたほうが良いでしょう――。被害が出る前に……。
「ヒマリさん。それで、もう1つの気になる点とは?」
私はヒマリに2つあると言っておりました、もう1つの点について尋ねました。
――恐らくそれも事件に関連した話なのでしょう。
「いえ、これは事件に関わりがあるのか分かりませんが……。ジルトニアの地下牢に投獄されている第二王子ユリウスが――消えました」
「き、消えた……? 処刑されたのではなく……」
「ええ。まるで煙のように……。今回の神隠し事件と酷似していますが、関連については何も分かっておりません……」
連続神隠し事件とユリウスの消失事件……。
これらが周辺諸国、すべてを巻き込んだ大事件に発展するとは……このときはまだ思いもしませんでした――。