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第三十四話(ミア視点)

予定変更して今日まで2話更新を続けます。

お昼にも投稿しますので、よろしくお願いします。


「……ふぅ。やーっと、終わったわ。魔物の数もちょっと面倒ってレベルを完全に超えて来たわね」


 今日も結界が完全に壊れてしまって危ない場所を回った。そろそろフィリア姉さんの結界まで破られるようになってきて、国家の治安が崩壊寸前なんだと改めて自覚した。


 ヒルダ伯母様が復帰してくれて良かった。彼女の結界をこの前見てきたけど、フィリア姉さんと遜色ないくらい堅固だった。

 フィリア姉さんもそれを知っていたから彼女の復帰を頼むように手紙に書いていたのね……。


 それでも魔物たちを抑えられるのが数日伸びる程度だけど……。でも、この時間は大切にしなきゃ……。


「ミア様、ユリウス殿下が動き出しました。フェルナンド殿下が焚き付けてくれた成果がこんなに早く出るとは思いませんでしたな」


 ピエールは私が結界を張っている間に魔物を何十体と屠っていた。

 正直に言ってこの前までは私が護衛の人たちを何故か守ったりしていたので、時間が取られてウンザリしていたけど、彼が来てからそういう手間が省けてかなり助かっている。


 ユリウス殿下がもう動き出したか。何か私の両親にさせようとしていたけど、それと何か関係があるのだろうか……。


「アデナウアー侯爵夫妻に大規模なパーティーを企画させたそうです。こんな時だからこそ、貴族は結束すべきだと多くの参加者を募っています」


「ぱ、パーティーですって?」


 どういう発想なのか全然わからない。こんな時にお気楽にパーティー開いて何をしようっていうのよ。

 しかもウチの両親を脅してまで開催させるなんて……。


 いや、このタイミングで動き出したということはきっと意味がある。ユリウス殿下のことだから、何かとんでもないことをしでかそうとしているに決まってるわ。


「ミア様はご存知でしたか? アデナウアー侯爵が第二王子派の筆頭だということを」


 そんなことを考えているとピエールから父が第二王子派の中心であることを聞かされた。

 大体の貴族はユリウス殿下についてると思うけど、中立のような立場も多いからちょっと前まで下流貴族だった父がそんな立場だなんて知らなかったわ。


「フィリア様の件やミア様との婚約が大きかったと思われますが、そんな経緯もありアデナウアー家は侯爵という立場を手に入れることが出来たのです」


 ピエールが何故にこんな話をしているのか私は容易に想像がついた。

 父が第二王子ユリウスの犬をずっとしていたのなら、今回のパーティーの目的はもしかして……。


「ピエールさん、もしかしてパーティーの招待客の中にはフェルナンド殿下も?」


「さすがに察しが鋭いですな。恐らく想像通りです。ユリウス殿下とアデナウアー侯爵夫妻の狙いは暗殺です。フェルナンド殿下の」


 ――やっぱり。


 やはりそうだったか。フェルナンド殿下の復活を見てユリウス殿下はよほど慌てたのね。

 まさか、こんなに直ぐに暗殺計画を立てるとは……。


 しかし、ショックだ。両親がこんな時にこんなに卑劣な計略に力を貸すなんて……。


「ショックですか? ミア様……」


「ええ、まぁ……。親ですからね。ピエールさんはどうして私にそれを? 娘の私から何かが漏れるとは考えなかったのですか?」


 第一王子派のリーダー格であるピエールはユリウス殿下の元にもスパイを送っている。

 だから、こんなに耳が早いのだが……それをそのまま私に伝えるのは若干軽率なのではと思わずにはいられない。


「フェルナンド殿下を立ち上がらせたあなただ。暗殺計画に手を貸すなんてあり得ない。我々を裏切るなんてとても思えません」


「信頼して……下さってるのですね?」


「もちろんです。頼りにもしています」


 爽やかな笑顔を向けながら、ピエールははっきりと私を信じると言い切った。

 そりゃ、フェルナンド殿下をみすみす暗殺させようと思わないけどさ。


「さらに、パーティーの開催を目くらましにして……同時に国王陛下の暗殺も目論んでいるみたいです」


 あの男、こんな状況の時期に自分の地位のためだけに大きく動き出すなんて……。

 本当に分からない。魔物だらけになった国で王様になって何をするつもりなのかしら。


「すでに人が住めなくなった町や村が出始めて、避難している方々もいますからな。それでも全ての権力を手に入れるのはユリウス殿下の悲願。この混乱を逆に好機と捉えて興奮してるのでしょう」


 そういうことか。ずっとこだわってたから、今さら修正は出来ないのね。生き方の……。


 フェルナンド殿下も復活早々厄介なことになったわ……。いや、待って……。出られないならいっそのこと――。


「パーティーの欠席をすれば、少なくとも命は助かるのではないですか? そこまで分かっててノコノコ出ていかなくても……」


 そう。罠と見え透いているなら、欠席するのは有効な手だ。

 ユリウス殿下の思惑に乗る必要はない。


「その進言をした者もおりました。しかし、フェルナンド殿下は人間として死にたいと呟き……立ち上がったのです。“せっかく弟が自分を暗殺しようとしてくれているんだから、彼を突き落とすチャンスだ”、と」


 覚悟を決めているのね……。フェルナンド殿下は自分の身を囮に使って、暗殺計画を明るみに出して……ユリウス殿下を失脚させるという。


 だから、あんなにも彼を挑発した。ユリウス殿下が彼を殺したくなるように……。


「陛下にも暗殺計画を伝えたのですが……。陛下はまだユリウス殿下を信じたい気持ちがあるようでして……。用心はすると仰ってましたが……」


 ふむ……。親だから信じてあげたいという気持ちは分かるけど……。

 ちょっぴり甘い気がするわ。フィリア姉さんの薬を飲んで回復しているとは聞いてるけど。


 とにかく、タイムリミットまであと僅か……。

 ユリウス殿下はもちろん、父と母も投獄するくらいの覚悟で戦わなきゃ。

 パーティー会場が最後のチャンスになりそうね――。


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