第十二話
皆様の応援のおかげで7/22、日間総合ランキング1位を獲得出来ました。
これからも皆様に楽しんで頂けるように頑張ります。
「フィリア様~~、言われてきた薬草を集めてきました~~」
メイドで、私の護衛でもあるリーナは頼んでおいた薬草を持ってきてくれました。
彼女を見ていると故郷に残した妹のミアを思い出します。ジルトニアの様子を、行商人の方に尋ねたりしましたが……彼女の活躍で今のところ治安はそれほど悪くなっていないようです。
「ありがとうございます。これで、新しい薬の開発が出来ます」
大破邪結界を発動させた私は魔物の駆除をパルナコルタ騎士団に任せっきりすることになったので、暇を持て余してしまいました。
なので、私は新しい薬のレシピを作っては改良に改良を重ねたりして過ごしております。
何もしない時間というのは、本当に気持ちが悪いというか……なんというか……、慣れないですね。
「あのお、これって何の薬なんですか?」
「これはですね。魚の目に効く薬です。ほら、足に出来る……あれですよ」
「へぇ~~、あれって薬で何とかなるんですねぇ。あっ、紅茶おかわりはいかがですか?」
「頂きます。――これを塗って、一晩眠ればきれいにポロッと取れますよ」
リーナはよく気が付く良い子です。紅茶の淹れ方も上手ですし……。
この薬も長く研究しているんで、ドンドン効き目が上がってます。
「前から思ってたんですけどぉ。フィリア様って、趣味とかあるんですかぁ?」
しゅ、趣味ですか……? 趣味って所謂そのう……、余暇に楽しむアレみたいな……。
どうでしたっけ……。ミアは演劇やオペラを観たり、音楽を鑑賞することが趣味だと言っていましたけど……私は彼女に誘われて二、三回一緒に行った程度ですし……。
そもそも、暇があったら何か出来る事を探してましたので、娯楽には物凄く疎いのです。
「特に無いですね。強いて言えば読書でしょうか? 古代文字の書物を読んだり、学術書を読み込んで、考察したり……」
「読書ですかぁ! 私も本を読むの好きですよ~~。特に恋愛小説とか、推理小説も結構読んだりしています」
しょ、小説……ですか。つまり、創作物って奴ですよね。もしくは娯楽文学というか……。
そういうのは、ミアが幼いときに……まだ一緒に暮らしていた頃……絵本を読み聞かせしたくらいですね。
もしかしたら、ユリウス殿下が「可愛げがない」と言ったのは私のこういう部分だったりするのでしょうか……。
「では、私のオススメの小説を何冊か貸して差し上げます。フィリア様はとても速く難しい本をお読みになられているので、すぐに読み終わってしまうかもしれませんが……」
リーナはとても可愛らしい笑顔を作って、私に小説を貸すと言ってくれました。
今まで物の貸し借りをしたことがなかったので、何だか胸の中が温かい気持ちになります。
「フィリア様、昼食の支度が整いました」
そんな話をしていると、執事兼護衛のレオナルドがドアの外から私に食事の準備が出来たことを伝えました。
こちらのお屋敷に来てからというもの、食事もとても美味しく頂いてます。
そもそも一週間くらい食べずとも平気なんですけど、ここのところ……三食欠かさずに食べてしまってました。最近、特に美味しいですし……。
「最近はレオナルドさんがお料理を作っているのですよ。彼の趣味は料理ですから」
「えっ――? そうなんですか? なんというか、その……」
意外でした。人は見た目に寄らないと言いますが、レオナルドがあんなに美味しい料理を作るなんて全然想像もつかなかったです。
趣味というのは自分が感動するだけでなく、人を感動させることもあるのですね……。
「こんなに華やかなお料理をレオナルドさんが作っていらしたとは、知りませんでした」
「いやー、お恥ずかしい。似合わないとよく言われるのですよ。しかし、厨房に立っているときが私は最も楽しい時間ですので。――お口に合ったみたいで光栄です」
「羨ましいです。私には楽しいと思えるようなことがありませんから――」
レオナルドのお手製料理を頂きながら、雑談をします。
よく考えると食事中に会話をするようになったのも、こちらに来てからです。
「フィリア様、ジルトニア王国からお手紙が届いておりました」
メイドのうちの一人が私宛の便箋を持ってきてくれました。ミアからですね……。
私からの手紙の返事を書いてくれたのでしょうか……。
しかし、彼女からの手紙は思いもよらぬ内容でした。
なぜ、両親は私からの手紙を握り潰すようなことまでするのですか……。とにかくミアに何とか危機を伝えなくては――。でも、どうやって……。
予想外の出来事に私は動揺を隠せないでいました――。