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エルザと招待状

本日(3/25)発売の4巻の特典SSを作りすぎちゃったので、余ったこちらのSSを投稿します!

4巻の前日譚的なエルザのお話です。

 退魔師は馴れ合わない。

 それがあたしの師匠の口癖だった。

 慣れ合えば情が湧く。そうなればいざというときに非情になりきれない。


 だから、必要以上に人とかかわらないでいることが大切なのだと言っていた。だけど――。


「……気がついたら随分と大聖女さんに肩入れしている気がするわ」


「今さら何言ってんだよ、エルザ姐さん」


 使い魔のマモンのやつはヘラヘラ笑いながらあたしを見る。

 そんなにおかしいことを言ったかしら。


「フィリアちゃんのこと、姐さんは気に入ってるんだろ? 人間ってそういう繋がりってやつを後生大事にするもんだって僕ァ思うけどねぇ」

「悪魔の癖に知ったようなことを言うわね」


 したり顔のマモンに若干イラッとしながら、あたしは大聖女さんから送られてきた結婚式の招待状に目を通した。


「最初に会ったとき、同類だと思ったのよ。大聖女さんもあたしと一緒で孤独を抱えて生きているように見えた。でも、そうじゃなかった……あの子には沢山の大切な人たちが側にいたし、きっとこれから幸せになるんでしょうね」


「いいことじゃんか。それにさぁ、フィリアちゃんにとっては姐さんも大切な人の一人だと僕ァ思うぜ」


「えっ? そうかしら?」


 だとしたら嬉しいかもしれない。

 大聖女さんとは妙に波長が合うというか、一緒にいて心地よかった。


 もしまた会える機会があるならその時はもっとゆっくり話でも――。


「へへ、エルザ姐さんも可愛い笑顔見せるじゃん」


「うるさいわね! 黙りなさい! 斬るわよ!」


「うおっと、ストップ! ストップだぜ、姐さん!」


 冷やかす馬鹿な悪魔にファルシオンの刃をちらつかせると、こいつは両手をぶんぶん振った。


 まったくこんな会話するんじゃなかったわ。


「で、フィリアちゃんにこれから手紙を書くんだろ? この招待状の返事とは別件で」


「ええ、新しい教皇が決まったら連絡するって約束したから」


「まさかオルストラのじーさんが教皇になるとはなぁ。ま、ヘンリーの青二才がやらかしたんじゃ仕方ねぇか」


 マモンのぼやいたとおり、教皇にはあたしたち退魔師を統率していたオルストラ大司教が投票により選ばれた。


 これからあたしたちの存在も徐々に明るみにするらしい。


 闇の中の存在だった退魔師にも光が当たる時代がくるみたいだ。


「なんだ、姐さん。それだけしか書かねぇのかよ。もっと自分のこととか書くべきだと思うけどなぁ。例えば……そうだな、好きな男のタイプとか書いてみたらいいんじゃないッスかねぇ」


「ふざけないでくれるかしら?」


「くく、それは冗談だとしても報告だけってのは寂しいだろ」


 あたしはマモンを睨むが、この悪魔は意に介さずニヤリと笑った。

 まったく本当に斬ろうかしら……。


「はぁ、わかったわよ。じゃあ、もうすぐ結婚式なんだから体には気をつけなさい――」


 あたしはため息をつきつつ、手紙を書き進めた。


 アリスと違って友人に手紙などは普段書かないから、こんなにも面倒とは思わなかったわ。


 ――でも、嫌じゃないかも。


「なんだ、姐さん。結局自分ことほとんど書いてねぇじゃん」


「それは直接会って話すことにするわ」


「んっ?」


 オルストラ新教皇は各国の聖女たちに挨拶状を出すらしい。

 それを手渡すって口実であたしはまた大聖女さんに会いに行く……。


 いきなり屋敷に入って驚かそう。そんな悪戯心を胸に秘めながらあたしは招待状を大切に机の引き出しにしまった。 

ということで、完璧聖女ノベルス3巻とコミックス3巻の同時発売です。

4巻は完全書き下ろしでして、結婚式をやりますので、是非ともよろしくお願いいたします!!

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