96 悪魔退治その3
クロウ中佐の号令によって俺達は一斉にサタンゴーレムに攻撃を仕掛ける。
「【インフェルノバースト】!!」
アイリスが後方から超級の火属性魔法を放った。
ダメージはかなり与えることは出来ている。
「おりゃあぁぁっ!! 骸割り!!」
ザックが跳躍したまま、回転しそのまま奴の左腕…俺達の視点からは右側にあたる腕を斬り落とす。
「ウオォォォォっ!!」
直後、片手でサタンゴーレムが反撃に出る。
剛腕がザックを襲うが、上手く回避できたようだ。
しかし…
「な…!?」
ザックによって斬り落とされた腕は、瞬く間に再生されて元に戻った。
「なんという再生力…!」
「アイリスちゃんに焼かれた部分もいつの間にか回復している…!」
「ひるむな! 何度でも仕掛けるんだ!!」
「は、はいっ…!!」
とてつもなき再生力に畏怖するが、クロウ中佐の再度の号令でもう一度攻撃を仕掛ける。
俺達の攻撃は通用する。
しかし、それを上回る再生力が少しずつ、俺達の体力と精神を削っていく。
「くそっ、このままじゃジリ貧だ…!!」
「ああ、みんな疲れ始めている…! なのに奴さんは無尽蔵な体力持ちだからな」
「でも、諦めちゃいけないよ! 何か打開策はあるはずだから」
「ええ、それまでは何度でも一斉に仕掛けましょう!」
ひなたやシンシアさんが気丈に俺達を励ましてくる。
それによって持ち直した俺達は、再度奴に攻撃を仕掛けた。
「【エレクトリッガー】!!」
「【ルミナスバースト】!!」
「アクセルザッパー!!」
「流星剣!!」
「連撃【光刃】!!」
「こちらもバズーカで仕掛けるぞ!」
「バハさん…!!」
疲弊してるにも関わらず、俺達は大技を一斉に繰り出す。
普通なら致命傷のダメージを与えられてるはずが、やはり奴の再生力に負けてしまう。
その時だった…。
「グアアァァァァっ!?」
何かの攻撃が、奴の右の玉…俺達の視点からは左側にある一番端の玉に当たった瞬間苦しみだす。
玉は傷がつかなかったものの、当たっただけで苦しむとは…。
「由奈お姉ちゃん…!?」
「え?」
アイリスが先ほどの攻撃を行った位置を見てみたら後方寄りに由奈が魔法の弓矢を引いていたころが分かった。
ひなたも俺達もつられて由奈の方を向く。
「さっきの攻撃は由奈がやったのか?」
「うん、最近分かった事なんだけど、『シーフ』の素質でしか習得できないはずの【鷹の目】が私にも使えたみたいで…」
「え、ホントに!?」
ひなたが驚く。
由奈が『シーフ』のスキル【鷹の目】を使えるという事実に俺も驚いてはいる。
だが、今は戦闘中だ。
「理由は後で説明してもらうとして…、由奈があそこを狙ったのもそれを併用してか?」
「うん。 【鷹の目】でよく見てたら5つの玉に文字がうっすらと見えててね。 もしかしたらと思って攻撃したら思った以上に苦しんだみたい」
文字がうっすらと…。
確かにそれは【鷹の目】を使わないと分からないな。
「どんなのが書かれていた?」
「えっとね…私が仕掛けた場所から順に『E』、『M』、『E』、『T』、『H』って書かれてたみたい」
「え? それで攻略できるの?」
「そうか、そういうことか!」
アイリスが疑問を呈するが、俺はすぐに理解できた。
今は由奈の【鷹の目】に感謝するしかない。
「え、お兄ちゃん、どういう事!? あの文字って意味があったの!?」
俺が理解したことにアイリスが驚いて聞いてきた。
戦闘中だが、ひとまず説明する事に。
「俺達の世界での言語の一つなんだ。 『E』、『M』、『E』、『T』、『H』と書いてエメトと呼んでいて、意味は『真理』だ。 そして奴がゴーレムの類なら…」
俺がアイリスに説明したところで、ひなたも理解したようで…。
「そうか! つまり最初の『E』の書かれた玉を壊すことで『M』、『E』、『T』、『H』…つまり『死』を意味する言葉にする事で奴は崩壊するんだね!」
「そういう事だ! みんな、俺達から見て左側の一番端の玉を狙うんだ!」
「つまり、それを破壊すれば奴に勝てるんだな!?」
「なら、やりようはあります! 由奈さんが作った手立てを…無駄にさせないためにも、全力でいきましょう!!」
由奈によって攻略の手立てが見えた事でザックもシンシアさんも気力を取り戻す。
「胡桃もアルト達もやれるな?」
「ん、由奈ねぇのおかげでがんばれる」
『ああ、からくりが分かったのだ。 奴の攻撃を凌ぎながら仕掛けよう』
『ええ、ここが踏ん張りどころですわ』
「なら、我々から見て左側の一番端の玉を集中して仕掛けるんだ! 疲弊をしている以上、速攻でやるのだ!」
「「「了解!!」」」
こうして、俺達の反撃が今始まった。
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