93 閑話~敗走した冒険者と乙女の危機~
今回の話、表現的に大丈夫だろうか…?
ガイアブルク領内の西部の町『エルオー』。
この町の宿屋には、ヘキサ公国から敗走した冒険者達が泊まっていた。
ゼイドラム国管轄の採掘場を爆発させ、不法に居座ろうとして指名手配された二人の脱走勇者によって敗北したからだ。
彼らもその二人が勇者の力だけでなく悪魔の力をも解放して、姿の一部が悪魔になっていた事も目撃していた。
果敢に立ち向かったものの、悪魔化した二人に歯が立たず、敗走する結果となった。
敗走する最中で、立ち寄ったのがこの『エルオー』の町である。
この町を収める町長から今回の事情をクリストフ国王に伝わったのである。
そして、その宿屋には大男が横たわり、そこに青年と少女が看病していた。
「リリア…カイゼルさんは…?」
「回復はしましたが…未だに意識が戻っていません。 毒の気配もないので呪いの類かと…」
「くそっ…! 呪いじゃ俺達には手も足も出ないのか…!」
「一応、解呪の札を購入しましたのでそれを貼り付けました。 ですが、呪いの種類を知らないので効果があるかは…」
「ヘキサ公国人はほとんど『呪術師』の素質を持たないからな…」
リリアという『回復術師』の少女は、横たわる大男…カイゼルの意識不明の原因が呪いの類ではないかと推測していた。
解呪の札を購入して貼ってはいるものの、呪いの種類をしらないため、効果があるかどうかは未知数。
ヘキサ公国の人間の大半が『呪術師』の素質を持たないことが、今回は仇となったようだ。
「カイゼルさんの事も気になるが…奴らに囚われたエミリーも心配だな」
「ええ…、私達の逃走タイミングを見計らってエミリーさんを囚われの身にしたのには驚いてしまって…」
「クレアもあれから塞ぎこんでいるしなぁ」
「ええ、何だかんだで仲がいい友達でしたから…」
「だな。 性格の違いこそあれど、かなり相性が良かったからな。 クレハ解放戦の時も派遣されたのはあの二人だし」
話題は、逃走のタイミングを狙われ、囚われの身となったエミリーに変わった。
二人は当然、彼女を心配しているが、クレアと言う少女はショックで塞ぎこんでいるらしい。
クレアとエミリーは仲が良く、親友ともいえる間柄だ。
かつて春日部 由奈を助ける際の追手第二陣やクレハ解放戦でもエミリーとクレアは一緒だった。
そのエミリーが脱走勇者の二人に囚われたのだから、ショックも大きいのだろう。
「私達じゃ誰かが彼女を助け出してくれるのを待つ以外、何もできませんしね…」
「全くだな…」
「ひとまずリックさんもお休みになられては?」
「そうはいかない…と言いたいところだけど…確かに今のザマでは休むしかないか」
リックと言われた青年は、カイゼルが横たわってる部屋から出ていき、自室で一休みすることにした。
否、今の自分達の力じゃそれ以外にできない。
(暁斗くんが今回の件を耳にしてくれればいいのだが…)
かつて盗賊集団『漆黒』との戦いで共に戦った少年・暁斗の事を考えながらベッドで横になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「へへっ、服を着たままでもいいスタイルなのが分かるな」
「な、なに見てんのよ!」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃなしに」
「くぅっ…!」
一方、ヘキサ公国首都の王城内。
一階のとある場所にて、エミリーは悪魔化した脱走勇者の二人…如月 光輝と来栖 貴之に囚われていた。
その場で彼女は二人に辱めを受けているところだった。
「貴之、しっかり羽交い絞めしておけよ」
「もちろんだ」
エミリーが抗おうにも、貴之に羽交い絞めにされているので魔術師の彼女ではどうしようもない。
「そらよっ!」
「ひゃあぁっ!?」
「ぐへへっ、素晴らしいなぁ」
「や、やめて…っ!!」
なすすべもなく、光輝に身体を触られている。
「う、うぅぅ…」
(ま、まずいよ…、こ、このままじゃ…)
エミリーは内心焦っていた。
今の彼女は乙女のピンチに陥ってたからだ。
それなのに今の状態ではどうすることもできず、身体を触られるがままなのだ。
二人もそれを察知したようで…。
「おい、貴之。 その女の片足を持ち上げろ」
「え…!?」
「よしきた。 そろそろ限界っぽそうだしな。 よっと」
「ああっ…、やめてぇ!!」
貴之がエミリーの片足を持ち上げ、さらにあられもない格好にされた。
そして…。
「い、いやあぁぁぁぁぁっ!!」
エミリーは、二人のせいで乙女の危機を脱することが出来なかった。
足元に広がる水たまりを見て、声を殺して泣きじゃくる。
だが、彼女がここから先の辱めを受けることはなかった。
「あわびゅっ!?」
「…え!?」
いつの間にか貴之が顔をめちゃくちゃにされた状態で吹き飛び、エミリーは別の少年に抱えられていた。
その抱えられている少年の温もりを感じて顔を上げると、その人物が誰かを理解した。
「暁斗…くん…」
かなりの殺気をまき散らしてはいたが、まったくの恐怖を感じなかった。
誰よりも強く、口下手で不器用ながら優しさも持っていた少年…佐々木 暁斗がエミリーを抱えていたのだ。
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追記:当作品ですが、腰痛で執筆する力が出ないので、当面【不定期更新】とさせていただきます。
お楽しみの所、誠に申し訳ないですが、ご理解願います。